(8)
「何だよ、あれッ⁉」
昼休み、土屋に体育の授業で起きた事を訊いた。
「ああ、あれ……杏の能力」
「魔法なの?」
「魔法とは別口。魔法の訓練を始めてから発覚したの。魔法なんて無しで、あれだけの身体能力が出せる。いつもは押さえてるけど、今日の体育の授業だけは……全力の3分の2ぐらいは出していいって、杏に言ったら……ああなった」
「はあ?」
「このままだと数年以内に、ほぼ全身体能力が、訓練無しでスポーツ選手並になるみたい。それも……えっと、そうだね、短距離走と長距離走の両方でアマチュア全国大会に出れるレベルの……。多分、今でも腕相撲でクラスの男子の8割以上に勝てると思うよ」
「待ってよ、無茶苦茶だよ……」
「だから、あたしは言わば、杏の御目付け役。うっかり魔法以外の特異能力を出さないように……」
「どんな能力だよ、それ……」
「遺伝子レベルで調べてみたら……」
「はあ?」
「いや、調べるでしょ、普通。あんな馬鹿馬鹿しい身体能力が有るんだから……。で、ウチのマネージャーさんと『似てるけど、ちょっと違う』遺伝子パターンが検出されたって」
「何だよ、それ?」
「ウチのマネージャーさんの正体、知ってるでしょ?」
え……あ……たしか……獣化能力者……。
「獣化能力者……それも、その中で、何て言うのかな……『上位種』ってヤツに近い『何か』みたいなんだよ、杏は……。姿を変えられないけど、人間の姿のままで獣化状態に近いスペックを出せる獣化能力者の近縁種みたいなんだよね」
「ふざけんな、そんな設定盛り盛りの……」
「遺伝的に設定盛り盛りだから問題なんだよ。訓練無しでもスポーツ選手並……それも瞬発力と持久力の両方で凄いレベルの……それを魔法も使わずに出せる……つまり、杏の、もう1つの能力を使っても、残留魔力は残らない。だって、そもそも『魔法』じゃないんだし。で、身体能力だけで、大の男を叩きのめせる」
「ちょ……ちょっと、犯人は府川さんだって言うの?」
「そんな事はないよ。事件が起きた時、杏は、あたしと一緒に居た」
「じゃあ、誰が……?」
「だから、杏のDNAを調べたら、変な遺伝的パターンが検出された……そして、それが、杏の『魔法』じゃない方の能力の源らしいとしたら?」
「待てよ、回りくどい言い方はやめて、結論だけ……」
「この前現われた杏の従兄弟が、本当に従兄弟……少なくとも血縁者だったら?」
で……でも……それなら……。
「いや、容疑者は、もう1人居る。そいつが、府川さんの従兄弟と同一人物かも知れないけど」
「へっ?」
「少し前に現われた……姿が見えない程のスピードを出した奴、あいつから何か魔力を感じた? あの超スピードは……魔法なの? それとも異常に高い身体能力のどっちなの?」




