(6)
「どうなってんだよ、あれ?」
「今の所、警察も、ウチの運営さんも何も手掛かりをつかんでない」
翌日の朝、屋上で土屋から事情を訊くが、返ってきた答は……。
「どうして?」
「残留魔力0。少なくとも犯人は『魔法』を使ってない。あと、銃器や刃物も使ってない。基本的には素手か、たまたま、その辺りに有ったモノを武器にしただけ。少なくとも、自分で用意した武器は使ってない。あと、指紋も髪の毛も見付かってないみたい」
「え……えっと、つまりその……」
「魔法的な方法じゃ犯人を見付けられない。科学捜査でも同様」
「監視カメラは、やっぱり……」
「バックアップのハードディスクだけじゃなくてSDカードも抜かれてた」
え……えっと、待てよ、他に何か手掛かりが有る筈だ……。
「あ、そうだ、アパートの前の防犯カメラ以外に……」
「あのさ、あたし達の運営ってヤクザのフロントだって知ってるよね?」
「……そ……それが……?」
「一番近い幹線道路から、あのアパートまで、防犯カメラに写らずに行ける経路が複数有るの……」
マジかよ。
普段なら「用心深い」事が、異常事態では裏目に出てる……。
「あのさ、そもそも、お前や府川さんと同じアパートに住んでた人達って……その……」
「元々はヤクザの鉄砲玉。けど、怪我とかPTSDで、そっちの仕事が出来なくなった人達の再就職先。『魔法少女』もののイベントのスタッフ 兼 あたし達の護衛」
「護衛って、役に立ってないだろッ‼」
「普通の人が相手なら……普通に敵わないけど……」
「えっと、普通じゃない人に狙われてるって事? なら……やっぱ、その府川さんの従兄弟の所に一時的に逃げてさ……」
「そこが問題なの……」
「何でだよ?」
「杏の従兄弟が居る久留米は、『九州三大暴力団』の内、去年の12月に潰れた安徳ホールディングスの御膝下なの。残る2つ……熊本の龍虎興業と、北九州の青龍敬神会の間で『中立地帯』扱いするって『条約』が結ばれてるらしいの。でも、あたし達の運営は青龍敬神会の系列。だから、下手に久留米には行けない。少なくとも、運営のスタッフが久留米に行った事がバレたら大問題になる」
「何で、そ〜なるんだよッ⁉」
「あとさ……更に問題が有って……」
「何?」
「気付いてなかったの」
「何を?」
「今日の体育の授業の時に、こっそり女子の方を見てみれば判ると思うけど……」
はぁ? どういう事?




