6.屋上
皆さんのおかげで週間ランキングにも乗るようにもなりました。
ありがとうございます!!
「あ・・・、ありがとうございます」
道子は左腕で舞を抱きかかえている。
二人とも体が後ろに倒れそうになっているがそれを手すりを掴んだ右腕で支えている。
その状態のままゆっくり腕を引き寄せ体勢を戻す。
(手のひら固いな・・・、でもあったかい・・・)
舞は肩と手を持たれてその場に座らせられた。
「風間!大丈夫か?!」
改めて礼を言うとするが教師が下から駆け上がりさえぎられる。
「あ・・・、あり・・・」
「怪我はないか?すまんかったなあ、先生本当に反省している」
道子は、教師が壁になって見えなくなっていた。
(良かった、あの様子なら怪我は無さそうね)
小さく息をつき、胸をなでおろした。
ホっとしたのもつかの間、声を掛けられる。
「弥生!すごいじゃん!あんな力あったの?!」
「なんか『ガシッ!』てすごかった!」
「え・・・、あ・・・、何とか力ってやつー?」
道子はカバンを取りに階段踊り場に行くと弥生の知人に囲まれて矢継ぎ早に声を掛けられた。
上手く返答できずしどろもどろになりながらも無難にこの場を切り抜けようと考えてると。
「念のため風間を保健室に連れて行くから皆教室に入ってくれ」
と教師から助け舟が入りその場にいた生徒はぞろぞろと移動した。
「風間は怪我は無いけど頭が揺らされてるかもしれないからもう少し様子を見て何事も無ければ戻ってきます。あと、みんな気付いていると思うけど平野さんが今日から復学です、病気の関係で体育は見学だったりしますが皆さん理解してください」
始業のベルが鳴り授業が開始される前に教師の説明が入る。
2時間目からは舞は舞が戻ってきた。
道子は気にしてなかったが向こうは話をしたそうにチラチラとこちらを見ている。
しっかりと礼を言えなかった舞は何とか話しかけようとしていたが気軽に話す中ではなかったので二の足を踏んでいた。
昼休み道子は校舎の屋上に来ていた。
この学校では安全のためフェンスに囲まれているが休み時間等に利用できるよう解放されており、日よけやベンチ等もあり生徒の憩いの場となっている。
そのベンチの一つに腰を下ろす道子。
その膝の上には弁当だった残骸が乗っている。
「カバンを投げ捨てたのは失敗だったな」
誰にも聞こえないよう小さくつぶやいた。
舞を助けるために投げたカバンの中にはお弁当が入っていた、学食で済まそうとするとイレギュラーな人との交流が予想できるので一人になれるような対応が裏目に出た。
学校までの送り迎えは車で送迎され、途中で買い物する事も無い為、財布も忘れてしまい購買にも行けない。
無事だった小さな水筒のお茶を飲みつつ今日はこれでしのぐしかないかなとボンヤリ空を見ていた。
「あ・・・、あの・・・、すみません!隣いいですか?!」
背後から突然声を掛けられた。
振り向くと覚悟を決めた顔で話しかける舞が立っていた。
「は・・・、いいよー」
素が出そうになったが慌てて言い直す道子。
言質を取ったとばかりに慌てるように舞が隣に座り自分のお弁当を広げ食べ始める。
(思い切って来たけど、どうやって喋りかけよう・・・)
「ン!」
焦って慌てて食べているせいか、よく噛まずに飲み込み喉につかえてしまい急いで胸をたたき始める。
「・・・お茶」
道子が水筒を渡すと急いで飲み干す。
「死ぬかと思いました~」
一人バタバタとしている舞を見て道子はクスクス笑う。
「ひどいです笑うなんて」
「ごめんねー」
「ともかく朝はありがとうございます、あの時はもうダメかと思いました・・・」
下を向き恥ずかしそうにもじもじとしながら喋りだす。
「いいよー、気にしないでー」
「あの、ところで平野さんはよくここでお昼を過ごされるのですか?」
「そうだけど」
「じゃあ!明日も来ていいですか?!」
「・・・昼休みは一人でいたいんだけどー」
先ほどまでの笑いが止まり真顔になる。
道子は今までのやり取りでいっぱいいっぱいになっていた。
これが明日からも続くかと思うと偽物だということがばれてしまうと思い、突き放したことを言うが言われた舞はシュンとしてしまい小柄な体をいっそう縮こませてしまう。
「隣が空いていたら勝手に座る分には構わないわ」
そんなつもりは無かったが罪悪感からつい言ってしまった。
「わかりました!明日もよろしくお願いします!」
舞はそう言うと満面の笑みで答え、お弁当をかたすとパタパタと走り去っていった。
ちょっと早計だったかな、と思いつつ
「それにしてもお腹減ったなぁ…」
授業が終わり校門を出ると路肩に駐車されたセダンから伊集院が下りてきた。
無言で後部座席をのドアを開けると道子はそこから乗り込み、伊集院はドアを閉じると運転席に回り車を発進させる。
「あつかれさん、どうだった一日目は」
バックミラー越しに道子を見ながら語り掛ける。
「はい、大変でしたが何とかこなせたと思います」
道子は答えながらメイクを落とそうとする。
「あっ、悪いな、約束だと車に乗った時点で仕事は終了なんだけど、ちょっとそのまま本社に来てくれって由里が言ってたから付き合ってくれないか?必要なものが有るからとか言ってたけどサービス残業にはしないから安心してくれ」
ビルにつくと二人は正面玄関から入り秘書室に向かう。
途中、社長の娘ということで社員は頭を下げる。
道子は居心地の悪さに早足になるが伊集院の
「元気に社会復帰したことをアピールして、弥生がいることを知らしめないといけないから我慢してくれ」
という言葉が有ったので耐えている。
秘書に入ると香田と由里が机を前にして仕事をしていたが道子を見るとパソコンを閉じた。
「おかえりなさい、今日はこれから道子ちゃんを連れていきたいところが有るの」
「こういうことはあまりやって欲しくないんだがな」
「いいじゃない香田、それでね道子ちゃん、これから買い・・・」
「香田!三浦!どういうことだ!!」
突然、勢いよく扉が開き怒声を飛ばしながら男が部屋に入ってくる。
扉には伊集院らと同じ年ぐらいだが、背は低く眼鏡をかけた小太りの男が立っていた。
その男はじろりと道子を見ると。
「君は誰だ、娘にそっくりだが本人じゃないな」
と、しゃべり始めた。




