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狼竜物語  作者: レオ
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閑話・戦い終えて

「劇的な逆転劇でルフツネイル見事三連覇を達成致しました!」


 対抗戦終了の鐘に観客席から大歓声があがり、興奮の坩堝と化した会場でカイルはゆっくりと腰を下ろした。


「ギリギリでも勝ちは勝ち、どうやら路頭に迷わなくても済んだな」


 握られた大量の賭け札にはくっきりと汗が手の形に残っている。


「しかしルークの奴もしかして、もう俺より強くなってんじゃないのか?」


「親父が父親の威厳つーのを守りたいならサシでやりあうのは止めたほうがいーな」


 フェンリルの肯定に「そうか」とだけ短く返す。


 親として子供の成長は嬉しくもあるが、こんなに早く追い越されてしまうと少し複雑なものが胸に去来する。


「ここ半年で全ての能力が大きく伸びている。特に魔力の伸びは顕著だ。剣に関してはまだまだだが、それも身体の成長と共に伸びていくだろう」


 魔法に関しては本人の素質もあるだろうが、神とも呼ばれる二人が付きっ切りで指導しているのだ。伸びない訳がない。


 確かな成長を見せたルークだが、それでもこれから先の相手には力不足だとフェンリルとナーガの評価は厳しい。


「しかしあの譲ちゃんもうちに来た時は華奢で、あんな怪力の持ち主には見えなかったが見た目じゃ人ってのはわかんねえもんだな」


「おっぱいねーちゃんか?ありゃ加護持ちって奴さ。マスターの先生である禿と一緒の奴の仕業だな」


「人間の能力を引き上げるってあれか。フェンリルやナーガ以外にもこっちに来てる神ってのもいるんだな」


 フェンリルの告白にナーガがジロリと睨む。


「バルガスも加護持ちだと?そんな話は初耳だが」


「初耳も糞も初めて言ったんだからな。聞かれてねーんだから言う必要もねーだろ」


 バチバチと火花を散らす二頭に「ここでやりあうなよ」とカイルが宥め立ち上がる。


「俺は先に帰るからフェンリルはボディーガードとして着いて来てくれ。ルークが帰って来る前に稼いだ金を山分けして元に戻しておかなきゃいけないからな」


「父上は表彰式は見てはいかないのか?」


「ああ、ナーガは残ってルークの仲間達に店を借り切って祝勝会を開いてやると伝えておいてくれ」


 そう言い残しカイルはフェンリルと雑踏の中に消えていった。



ファンリ学校対抗戦結果


優勝

ルフツネイル

19ポイント


準優勝

バルドゥール

16ポイント


金の剣賞(最多撃破)

ニーナ・アーデルハイド(ルフツネイル)






 祭りの後は寂しい空気が流れるとは言うけど、ここは今正に祭りの真っ最中ってより延長戦と言った方がいいかな。

 

 表彰式が終わった後、ナーガが父さんが祝勝会を開いてくれると伝えてくれた。


 皆疲れていたし流石に当日の夜は無理でしょと思っていたら、暫くしてフェンリルが来て店の名前を言ったら空気が一変した。


 何でもファンリでも超がつくぐらいの一流店で、富豪の御用達とでも言っていいほど敷居の高い店らしい。


 そんな店を貸切るなんてとんでもなく高いはずで、まさかと思い家に帰って隠していた紅玉を確かめたけど、数は一つも減っていなくて危惧した事態にはなっていなかった。


 疑ってごめんね父さん。


 きっと毎月のお小遣いをコツコツ貯めて・・・そんな訳無いと思うんだけど、貢ぎ続けている貴族の誰かから借りたりしてないよね?


 新たな疑惑が湧き上がりつつも大きな部屋の中央に所狭しと並べられている料理に舌鼓をうっている。


 痛めていた腕も治癒をかけてもらって完全回復。


 他人に治癒をかける事はあっても、自分がかけてもらう事なんてなかったので中々貴重な体験だった。


 身体が温かくなって痛みが一気にひいていく不思議な感覚。


 僕に治癒をかけている仮面を被っている人は「特別手当をもらわないと割りに合わない」なんてずっと愚痴ってたけど、ローン返済の為に頑張って下さい。


「神聖な対抗戦の最中に女の膝枕とはけしからん!俺なんて手を握った事もないのに」


 完全に出来上がってるベアヒェンさんが、むやみやたらに絡んで来て非常に面倒くさい


 ニーナさんに膝枕されてたなんて全く記憶にないのに、目撃者証言者が星の数程いるらしいので言い訳は通用しなくてずっと絡まれている。


 そこに助け舟を出してくれたのがファリスさん。


「ノルベルトは学校を辞めるらしい。なんでもこれ以上彼女を待たせられない。故郷に帰って結婚すると言っていたよ」


 ベアヒェンさんはそれを聞くなりバルコニーに飛び出し空に向かって叫んだ。


「もてる奴は皆死ね。ハーレムつくりてぇ!」


 ニーナさんがとても冷たい目をして、バルコニーの鍵を炎の魔法で溶接したので少しだけ静かになった。


 僕以外はお酒が入っていてもう滅茶苦茶。


 お酒を嗜む事が出来る年齢は国毎に様々でここファンリでは自己責任と明確な決まりはないらしく、それなら僕もと手を伸ばしたけど「マスターは酒癖が悪いから止した方がいい」とナーガに止められてしまった。


 ルーカスさんは父さんと差し向かいで頷きを繰り返している。


 父さんが一方的に喋ってるだけだけど、時折ルーカスさんからグーと鼾が聞こえる。


 目を開けたまま寝るなんて器用なもんだ。


 比較的まともなのはカイトさんで、弟や妹に持って帰る為にせっせと料理を花瓶に詰め込んでいる。


 ・・・後で余った料理は別の入れ物に入れて帰ってもらおう。


 グライフさんはカーテンに包まって自分の世界に入っているので、静かで人畜無害の存在となっている。


 殆ど顔色も変わらず静かに杯を傾けるのはファリスさん。大人として御酒を嗜むならこうなりたいよね。


「結局ノルベルトさんと決着はつかなかったんですね」


 僕は最後まで見る事は出来なかったけど、二人は凄まじい攻防を時間一杯繰り出して対抗戦の終了の鐘を聞いたらしい。


「自信満々だったくせになっさけねえ」


 花瓶を抱えながらカイトさんが茶々を入れる。


「自信はあったんだけど実力がついてきてなかったよ。恥ずかしい限りさ」


 そう言ってファリスさんはテーブルに頭突きした。


 頭から血を流しながらにこやかに「これで許して欲しい」


 顔色が変わらないだけでファリスさんもしっかり酔っ払っていた。


 対抗戦は終わったのに何故か治癒を頻繁にかけながら夜は更けていった。


 僕らがそんな勝利の余韻に浸っている頃、離れた場所では大きな事件が起こっていた。

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