(4)
地面に本に書かれている召喚陣を真似て書いていく。
臭いを追跡出来る魔獣や、空から探索する魔獣を召喚出来るかも知れない。
祈りを込めた召喚陣が書きあがると、指先をナイフで傷付け血を一滴中心に落とす。
本には血には魂の力が含まれており、呼び出す魔獣を決めるのだと書かれていた。
召喚の呪文を唱え始め、サイ先生は万が一の為に薪を混棒かわりに構えるが、召喚陣は何の反応も示さなかった。
「駄目だったみたいだね」
サイ先生が慰めるように呟く。
「もう一度、召喚陣の書き方が悪かったのかも知れない」
脇目も振らず作業を続ける僕を後ろから抱きしめ「もういい、もういいんだ」とサイ先生が止める。
「お願いですからやらせてください。このまま父さんがいなくなるなんて・・・何もしないまま終わるなんて僕は嫌だ!」
サイ先生は諦めた様に腰を降ろし、二度目の召喚陣が完成して再度指を傷付け血を中心に落とし、召喚の呪文が辺りに響き渡りそして唱え終わる。
一度目と同じく召喚陣は何の反応も示さない。
「さあ指の傷の手当てをしよう」
手当てをしようとする先生を制する。
「来た」
さっきまで何の反応も示していなかった陣の中央から青い光が漏れている。
陣は徐々に光る範囲を広げ、今や中央だけでなく陣全体が光っている。
光は中央に集まり、特大の犬のようなシルエットを形作っていく。
先生が僕の持っていた召喚術の本をパラパラとめくり興奮して叫ぶ。
「凄いぞルーク。これはヘルハウンドじゃないか?」
「あぁ?誰がヘルハウンドだこの野郎。この俺様を犬呼ばわりなんぞいい度胸してやがるな」
誰の声?それは僕でも先生でもなく、召喚陣にいる特大の犬のシルエットから聞こえた様だった。
光は収束し代わりに炎を映したような赤い紅玉の瞳。闇をそのまま身に纏った様な漆黒の狼が立っていた。
「い、犬が喋った・・・」
持っていたはずの混棒がわりの薪は地面に転がり、腰を抜かした先生が恐怖混じりの震える声で呟く。
「てめぇ!消し炭になりてえか」
狼が怒気を強める。
「負け犬が相変わらず偉そうだな」
誰もいなかった筈の背後から声が聞こえ、先生が後ろを振り返りひいっぃいと情けない悲鳴を上げる。
最初に描かれた召喚陣の真上にそれはいた。
金色の瞳に白く美しい鱗。
翼は羽毛に包まれ一目でただ者ではないとわかる竜。
「なまっちろいとかげが俺様とやろうってか?もうとっくに忘れ去られて消えたもんだと思ってたぜ」
狼が竜を挑発する。
「恥を振り撒きながらしぶとく生きてる馬鹿犬程じゃないが生憎と私もしぶとくてな」
今度は竜が狼を挑発仕返し、ヒリヒリとした緊張感がその場を支配し、先生は二頭が睨みあっている隙に脱兎のごとく逃げ出し今はその姿は見えない。
「決着つけてやるぜ」
狼は四肢に力を込め戦闘体勢に入った。




