54、トラブルメーカー
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「おいっ!こっちに人をもっと寄越せっ!!」
「まて、一回下ろすぞっ!」
「いちにさん で持ち上げるぞっ! 一 二 三っ!!」
目の前では忙しそうに働くエルフ、ドワーフ、獣人たち。彼らは石材を運び、防壁の改修作業に勤しんでいる。タイタスの『絡繰り術』はあれから順調に他の種族間でも学ばれ始めている。というか、俺が希望者を集めて『絡繰り術講座』を開いたのだが……。うん、俺、頑張ったよ。
皆、エルドランの防壁を実際に見て、改修を手伝うことで『絡繰り術』を実践してもらい、その効果を理解してもらおうとタイタス族長ラガイオの提案だった。【教育者】のおかげで技術者を大量に促成育成でき、防壁改修は捗っている。来週にもエルドランの防壁は完成するだろう。この調子で技術者を増やしながら他の集落も改修していけば、もっと早く防壁もできあがるだろう。
エルドランに戻って1か月が過ぎた。ガラハド大森林帯の有力集落のうち約半数が氏族連合への賛同を示してくれた。『エルドラン』『タイタス』『ニルバーナ』『ハヌマン』そして『ヴァース』の呼びかけに、多くの集落の者がエルドランへ訪れるようになった。また、集落としてまだ賛同を示していなくても個人的にエルドランを訪れる者も多いようだ。
で、俺は何をしているかと言うと……。
「はい、そこっ!寝ないっ!」
俺は寝ているダイチにチョークを投げる。
「痛っ!!」
チョークは見事にダイチの眉間にヒットする。
「バーカ、寝てるからそうなるのよっ!」
アヤノがダイチを冷たい視線を送る。
「師匠っ!あ、ちがう、先生っ!!これがよく解りません。」
「あ、ちょっと待って。ダイチ、廊下で立ってろ。それか俺が頭を凍らせてスッキリさせてやろうか?」
「あ、えっと…廊下行ってきますっ!!」
バタバタとダイチが廊下へ行く。周りからギャハハと笑いが起こる。
そうなのだ。今、俺はエルドランで教師をやっているのだ。前世の塾講師をしていた事もあり、教える事は得意だ。この世界でもいつかは……と考えていたのだが、こうも早く実現するとはな。
概ね安定した集落間交流の後、『絡繰り術講座』を開いたのが切っ掛けで俺は希望者に色々とスキルを教えることにしたのだ。手初めに、転移者たちのミコト、ダイチ、アヤノ、ノアたちとサフィーナ、クロ子、テト、ラスタバンたちを含めた7人が最初の生徒だった。それが、今では30人まで増えている。そこにはタイタスの『絡繰り術』の一族だったウェルなどの懐かしい顔ぶれもあった。最初は魔術を中心に教えていたのだが、今では剣術や弓術などの実技も教えるようになっている。
アイリとマールには給食と称して、食事も用意してもらっている。それもあり、少しずつ生徒が増えていったのだ。
俺も教えるばかりではなく、エルドラン、タイタス、ハヌマン、ニルバーナ、ヴァースで変わったスキルを手あたり次第師事したのだ。俺は一部ではかなりの有名人となっていたようで、俺の頼みは断られることなくすんなりと聞き入れられた。
ということで、俺のスキルはとんでもないことになっていた。
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■ステータス
名前/有村 悠真
Lv.11
種族/人間? 年齢/18歳 職業/冒険者(C)
HP 10240/10240(+5120)
MP 40960/40960(+20480)
腕力 10240
体力 10240
敏捷度 10240
器用度 10240
知力 20480
精神力 30720
加護:神祖の大いなる加護 封仙の加護
称号:転生者 封印されし称号その1~5 器用貧乏 タイタスの英雄 人を超えた者
装備:黒牛鳥のマント アダマンタイトの部分鎧 マチェットナイフ
スキル
-EXスキル
【教育者】【学習者】【超健康体】【ステータス倍化/Lv.UP】【真・限界突破】【聖領域】
-ユニークスキル
【極運】【ファミリア】【看破】【隠形】【人たらし】【糸使い】【金剛不壊】【読心法】
戦闘スキル
【剣術/Bランク】【体術/Bランク】【弓術/Bランク】【投擲術/Bランク】【槍術/Bランク】
【盾術/Bランク】【棍棒術/Bランク】【斧術/Bランク】【捕縛術/Bランク】
-一般スキル
【薬草術/Aランク】【調理/Bランク】【裁縫/Bランク】【交渉術/Bランク】【詐術/Bランク】【罠術/Bランク】
【騎乗術/Bランク】【舞踏術/Bランク】【演奏術/Bランク】【鍛冶術/Bランク】【礼儀作法】
【学習術/Bランク】【細工術/Bランク】【絵画術/Bランク】【商い術/Bランク】【歌唱術/Bランク】
【建築術/Bランク】【木工術/Bランク】【石工術/Bランク】【革加工術/Bランク】【錬金術/Bランク】
【文章術/Bランク】【作詞術/Bランク】【歌唱術/Bランク】
―魔法スキル
【火魔法/Bランク】【水魔法/Bランク】【光魔法/Bランク】【土魔法/Cランク】【風魔法/Cランク】【闇魔法/Cランク】【樹木魔法/Cランク】【雷光魔法/Cランク】
-魔物スキル
【毒牙/Bランク】【高速化】
眷属契約【精霊魔法/Eランク】(サフィーナより)
【時間跳躍】(クロウより)
【竜魔法】(シラユキより)
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色々とツッコミどころは多いだろう。
特に、戦闘スキルはハヌマン出身者から、魔術スキルはニルバーナとエルドラン、変わった所では、【雷光魔法】というのをヴァースから来たという竜人から学んだのだ。ちなみに各属性魔術を学ぶとなぜか魔法まで使えるようになったのは魔力量の為か……。あとは、シラユキを眷属化したことで【竜魔法】というカッコイイスキルもゲットした。まぁ、まだ検証中だが……。ちなみに、シラユキは俺の足元で丸くなり眠っているのがほとんどだ。
一般スキルではモノづくり系はタイタスのドワーフたちが様々な作成スキルを得ることが出来た。芸術関係はエルドラン出身のエルフたちが秀でていたように思う。
ということで、現在、【商い術】の講習を行っている。ぶっちゃけると計算や接客、クレーム処理、ビジネスマナーなどだ。一応、社会人経験があるので、当たり前のことだが、転移者のミコトたちは四苦八苦している。まぁ、小中学生でここに飛ばされたんだから仕方ないか。
教室はエルドランの大樹邸宅の根本に、木造の長屋のような物を建ててもらった。その時に、建築関係のスキルをゲットしたのだ。ちなみに、基礎工事は土魔法でしっかりと固めておいた。鉄筋の代わりに極太の魔鋼糸を使うという大盤振る舞い。一見大した事なさそうだが、使っている材木も樹木魔法により強化されており、耐震だけでなく耐火性もばっちりだろう。内装は木のフローリング敷き。落ち着いた雰囲気となっている。まぁ、教室は1つだけ。30人も入ればギュウギュウ詰めだ。長屋の横は長い廊下が一本あり、教室の隣は職員室、さらにその横には大き目の食堂へと続いている。
よし、このままここをこれからできる国の最高学府に……ってダメだ。俺、政治学とか外交とか高度な駆け引きなんてできる気がしない。ん?なら、先生をスカウトしてくればいいのか……。それなら問題ないよな。
「ユウマ先生、そろそろ給食の時間だよー。お腹減ったーー。」
机に突っ伏していたサフィーナがむくっと顔を上げる。
ここでは、チャイムがないので1時間の砂時計で授業時間を計っている。残りわずかになると、皆、授業そっちのけで砂時計を凝視して早く落ちるように念を送っているのは恒例行事と化している。
「「「落ちたーーっ!!」」」
「はぁ……今日の授業はここまでな。次は昼寝の後に、剣術の授業な。始める時は空に合図の花火上げるからな。」
『起立っ! 礼っ! ありがとうございました。』
ふぅ……この前世の学校制度をそのまま流用したようなシステムだが、何とか機能しているようだ。他にもアイリやマールが先生となって薬草術や調理などを教えてもらっている。何にしても教師が足りないよな。それに、この世界に合ったシステムに変更していかないと……。
「ユウマさん。お疲れ様。生徒の皆と一緒に給食食べるでしょ?今日はサンドイッチと野菜スープよ。あ、ちゃんとシラユキちゃんの分もあるからね。」
俺が考え込んでいるとアイリが声をかけてくれる。30人分のサンドイッチは大変だったろうに……。ちなみにシラユキは特別に骨付き肉が出されている。
「アイリ。いつも悪いな。皆、給食の為にここに来てるようなもんだ。俺も今から食堂に行くよ。アイリのサンドイッチ旨いからな。」
<<アイリ殿、いつもすまないな。>>
シラユキの口調もほんの少し、硬さが取れたか……本当に少しだが……
「えへへ♪ありがとう。でも、皆もユウマの授業、楽しいって言ってるよ?それにすぐ上達するってビックリしてたし。」
「まぁ、俺のスキルだからな。それより、アイリにも色々と無理させてないか?魔法を教えてくれって言って、今では俺とほぼ同じくらい色んな魔法を使えるようになってるし……」
「ううん。私は平気よ。私も生徒の皆に教えれるようになりたかったし、アイリ先生って言われるのもくすぐったいけど楽しいし。」
「なら、良かった。まぁ、今教えてる連中で出来のいい奴に教師になってもらえば、もっと楽になるんだろうけどな。」
「そうだね。でも、今はそれなりに楽しいからいいんだけどね。」
そんな他愛もない会話をしながら俺たちは食堂へ入っていく。
「あ、ユウマ様っ!やっと来たな。席、とって置いたぞ!」
テトが自分の横の席をポンポンと叩く。どうやら横に座れということらしい。
「ユ、ユウマはこっちに座るのじゃっ!!わらわが直々に良い席を見繕っておいたぞ!」
ラスタバンも同様に、席をポンポンと叩く。良い席って皆同じ椅子だろうに……
「あら、ユウマさん。女生徒にモテモテなのね?いいわよ。私は1人寂しく食べるから。」
アイリの目が怖い。天使のような笑顔で目が悪鬼羅刹のようだ。
「わ、悪いな。俺はアイリと食べるから。」
「「えぇぇーーーーっ!!」」
テトとラスタバンが抗議の声を上げる。
「えー、別に生徒さんと一緒に食べてくればいいのに。」
アイリさん。すっごい嬉しそうに耳がピクピクしてるんですが……ま、カワイイからいいんだけどね。
「ま、まぁ。また今度、一緒に食べような。」
「「ぶぅ~ぶぅ~」」
ここまでの流れを見た男どもの殺気を一身に受けるが、俺は気にしない。気にしたら負けだ。俺は大人しく、アイリと空いている席に腰かけた。
「はーい。皆、お待ちかねのデザートはマール特性プリンよー♪カワイイ子にはサービスしちゃうからねーん♪」
マールが完全に趣味と実益を兼ねて、プリンを差し入れしてくる。完全に幼女狙いもろバレじゃねぇかっ!!その目にはサフィーナとノアがロックオンされている。
「マールも、わざわざ悪いな。お菓子作ってもらって、それに先生もやってもらって。」
「あら、いいのよー。そんな小さい事。皆の為に私ができる事をやってるだけよ。」
「そうか。で、本音は?」
「サフィーナちゃんだけじゃなくってノアちゃんが最近はお気に入りかな♪他にもより取り見取り♪お菓子で餌付けして、油断したところを……あべしゃばっ!!」
やっぱりか……ここは教育的指導を入れておこうか。うん、ちょっとめり込んだだけだから大丈夫だろう。
向こうでは転移組とクロ子が何やら盛り上がっている。クロ子も最近、ようやくあいつらに慣れてきたようだ。まぁ、喧嘩は毎日の如くやってるけどな。
「プリンはひっくり返してカラメルが上にして食べるのが正統な食べ方だろっ!!」
「何言ってやがるっ!まずはプリンその物の味を楽しめるひっくり返さない食べ方こと通なんだよっ!」
「えー、私はどっちの食べ方もいいかなー。じゃ、2つ食べたらいいじゃん。」
上からクロ子、ダイチ、アヤノの声だ。あいつら、今度はプリンの食べ方で盛り上がってるのか……どっちでもいいだろ……そんなの。
「サフィーナちゃん。私、もうおなか一杯だからプリンあげるよ?」
「えぇっ!?いいの!?ありがとーー!ぱくっ!おいしーー♪ノアのプリン、他のプリンよりおしいーよ♪」
「えっ、えっ?本当?じゃ一口……ちょうだい?」
「いいよー。はい、あーーん♪」
「ぱくっ!うんっ!!おいしーよ!サフィーナちゃん。」
いやいや、それ元々ノアのプリンだしな。ってマールっ!!何復活してあの2人に飛び込んでいきそうになってんだよっ!お前はここで正座でもしてろっ!!
他にも獣人やエルフ、ドワーフ、竜人と様々な種族がこの食堂で楽しそうにランチを食べている。なんか不思議な光景だけど、こういうのがガラハド大森林帯の色んな所で見れるようになればいいんだけどな。
エイラムでも多種族が入り混じっていたが、それはごく少数に過ぎなかった。逆にここは人間の姿が少ない。居るのは行商に来ている人くらいだ。ガラハド大森林帯にも人間の集落があるはずなので、そこにも声をかけないといけないかな……。
「おぉ、ユウマ殿。活気があって学校というものはいいですね。」
俺とアイリがランチをしていると、そこにハウザーさんがやって来た。この人は、エルドランの族長だけあって、日々、エルドラン中を駆けずり回っている。他集落との折衝やこの集落でのマナーの徹底。治安維持から交易についてなど多岐にわたる。
「好き勝手やらせてもらって申し訳ない。もう少しカリキュラムを徹底したいんだけど、どうしても教えれる教科に偏りが出てしまうからな。」
「そうですね。そこで相談なのですが、お願いを聞いてくれませんか?うまくいけば、教員の増員と予算を出させてもらいます。」
柔和そうに見えて、ハウザーさんって抜け目ないからな。
「お願い……か。内容によりますけど、教員の増員はうれしいですね。話を聞かせてください。」
何より、予算が付くというのはデカイ。今の学校はほとんど俺の持ち出しで作り上げたといっていい。まぁ、ほぼ自前で作ったが、手伝ってくれた人たちへの手間賃や材料費もそれなりにかかっていたからだ。魔鋼糸を売り払うことで何とかやり繰りしているが……
「実は、ガラハド大森林帯の外輪部の最南端にある人間の集落なんですが、どうしても氏族連合に賛同してくれないどころではなく、喧嘩腰でして……。使者を向かわせたのですが、未だ戻らず、心配なのです。」
南?ということは、ビザント帝国がある方角だよな。南にある周辺国へと勢力拡大を図り、しばしば国境付近では戦争も起きているという。このエンヴィー大陸の大国の1つだ。
「その集落ってのはビザント帝国からの難民集落ってところか?」
「はい……ビザントでの政争に敗れたとかでガラハド大森林帯に逃げ込んだようなのです。どうも、人間至上主義のようで、交流も難航していたようです。」
はぁ……そんなところに使者を出したのか。でも、放っておいて無茶されるより関係を持っていたほうがいいってことか。
「ややこしいそうな連中だな。友好的な交流ってのは難しいだろうな。ハウザーさんはどの辺で落としどころを考えてる?」
「ええ……最悪、集落に向かった使者の保護だけでも仕方ないかと。ただ、こちらを蔑ろにするようであれば、それなりに対応しようと思います。誠意には誠意を返せるのが一番だと思うのですが……。」
「ならまずは人間であるユウマさんが行くのが一番いいかもしれませんね。ただ、政争で敗れたということは貴族なんですよね……。エルフの人の中でもエルフ至上主義の人もいるので、なかなか古いエルドランの人だと相性が悪そうですよね。」
俺たちの会話に、アイリが心配そうな顔をしている。
「ところで、その人間の集落に向かった使者というのはどういう奴なんだ?」
「はぁ……それが、使者の従者としてザハルが混じっていたという事なのです。」
「マジか……。」
ザハル・クリーク。こいつの一族には色々と苦い思い出がある。ま、ザハルは高慢なだけのダメエルフなだけだが、こいつの祖母のカノンにはエイラムの冒険者ギルドで拘束されたし、父親のミハエルは前族長ファルスの片腕で、暗殺者を仕向けられた事もあった。
「はぁー……あの人……ですか……。いきなりこちらの意欲を奪われるって、ある意味すごい人ですよね。」
アイリが深いため息をつく。うん、俺も激しく同意します。
「そう言わずに……。使者に行った者は私の旧友の娘さんなのです。もちろんハイエルフ派の人ですよ。」
以前のエルドランにはハイエルフ派、中立派、そして前族長ファルスを中心とする族長派という3つの派閥に分かれていたのだが、今となっては完全に族長派は消滅している。ザハルも気持ちを入れ替えたんだとか……ま、信用はしてないけどな。
「解りました。なら、向こうの集落の情報を教えてください。それで行くメンバーを考えてみます。」
俺は、ハウザーさんの願いを聞くことにした。放っておくわけにもいかないからな。
「そうですか。それはありがたい。では、まず、集落の名前ですが、『新ビザント王国』というらしいんです。」
……はっ!?
最後まで読んでくださってありがとうございます。




