4、消し去りたい記憶
さっそくブックマークしてくださった方、ありがとうございます。
※今回、ユウマの今後を左右する出来事あり。
6/25 誤字修正、微調整を行いました。
「なんだよ!なんだよ!!なんなんだよっ!!」
暗闇の中から現れた理不尽な存在に対して、思わず愚痴ってしまう。
パニックになるのを抑え、看破と念じてみる。
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名前/ウルフ・イーター
ランク/モンスターランクC⁺
HP 310/310
MP 20/20
腕力 190
体力 130
敏捷度 40
器用度 40
知力 15
精神力 20
解説1:アイアン・スパイダーの変異体。ガラハド大森林帯外輪部の主の1体。グレイウルフを主食とする獰猛な個体。
称号:ガラハドの主
-スキル【鋼糸/B】、【毒牙/C】、【金剛体】
――――――――――――――
なんだよ。これ……こんな化け物ファンタジーすぎるだろ!!腕力だけならガンファ8人分以上だ。僕だと19人分……比較すると虚しくなってくる。
「ユウマ!森の主じゃ!!二手に分かれて逃げるぞ!!」
あぁ、見捨てられるのか……いや、確率は五分五分。しかも、僕にはスキル【極運】がある。ガンファ……君の犠牲は無駄にしないよ。
ガンファと目を合わし、頷き合うと別々の方向へ走り出した。もちろん、ウルフ・イーターはガンファのほうに……
行かなかった。
うぇ!?こっちに向かってるような気が……なんでだよっ!!
【極運】さーん!!機能してませんよー!!わっわっわっわ!来た来た来たーー!!
両手に棒切れと松明を持ちながらの全力疾走。後ろからは木々をなぎ倒しながら、ウルフ・イーターが追いかけてくる。太めの木が密集しているルートを選び、逃げていくが、あまり時間稼ぎになっていない。
うわっ!!
急に右足が何かに引っかかり盛大に転倒する。思わず何に躓いたのかを確認するが、そこには何もない。
再び立ち上がろうとすると、右太ももに強烈な痛みが襲った。見ると、指ほどの太さの白い紐のようなものが太ももを貫いている。スキルにあった鋼糸ってやつか。って冷静に分析してる場合じゃない!来る!来る!来るー!!
ウルフ・イーターの醜悪なフォルムが、手放した松明に照らされる。凶悪な牙はてらてらと毒液を垂らしている。落ちた毒液はしゅうしゅうと地面を溶かしている。いやいやいや!毒というか強酸みたくなってるしっ!!
一気に距離を詰めてきたヤツは、僕の首にめがけて毒牙を埋め込もうとしてきた。
咄嗟に、身を躱すが右足が思うように動かず、毒牙が左肩を抉る。
「ぐあぁぁぁぁぁ!!!!」
今まで経験したことのない痛みが肩を襲う。喉が焼けるほどに叫び声をあげるが、それもしだいにできなくなってくる。全身が硬直しは じ め 。 思考 が で き な 。
――ピロリン♪【超健康体】が発動しました――
急に、頭の中がすっきりしていく。でも、それは痛みが再び襲ってくるということで……
「あ゛あ゛ぁぁぁあああああ!!!」
叫び声に構わず、ウルフ・イーターは再度、毒牙を首に打ち込もうと迫る。
ブラシのような剛毛に覆われた頭胸部、カチカチと鳴らされる牙、何の感情もない赤い目。
ウルフ・イーターにとってはただの食事だ。当然のことかもしれない。いや、違う。ヤツはゆっくりと弄ぶように僕を喰う気だ。厭らしいヤツだ。殺すなら早くし……
Von!!
爆発音。
僕の顔が熱風に煽られ、思わず目を閉じる。ゆっくり目を開けると、ウルフ・イーターの目が2つ吹き飛んでいた。身に纏っていた剛毛も目の付近は焼け爛れている。一体何が……
「ユウマっ!!」
ガンファだった。片膝立ちでボウガンを構えたガンファが見えた。うわっ、あんたが可愛い女の子だったら惚れてたかも……ん?可愛い女の子だったら、助けられなくても惚れてるのか?
ただ、ウルフ・イーターに致命傷を与えたわけではないようだ。頭胸部の外骨格には軽い傷が入っているだけに見える。【金剛体】ってやつか。ヤツは僕のことは後でどうにでもなると思ったのか、新たな獲物であるガンファへターゲットを移した。
「だ、ダメだ!!逃げろっ!」
ガンファもその場から走り出す。
そうだ。もうボウガンの矢は残っていないはずだ。クソっ!ダメだ!もっと早く!……追いつかれる。
あぁ……鋼糸を吐かれた。よし!躱した!いいぞ!逃げてくれ!!
あああぁぁ!!追いつかれた……糸で貫かれた……両足だ……腹にも……あぁぁ……
ガンファが倒れる……ヤツが覆いかぶさるように迫る。 あああぁ!!
「あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
――ピロリン♪ピロリン♪ピロリン♪ピロリン♪・・・――
「ピロピロうるせぇーーー!!邪魔をするんじゃねぇぇぇぇーーー!!」
俺はブチブチと太ももに突き刺さった鋼糸を引きちぎり、ウルフ・イーターの背中を追う。
すぐに追いついた。
ヤツの腹部を思いっきり殴りつける。
ズボッ
腕が肘の辺りまでめり込む。さらに左拳も叩き付ける。
ズボッ
右腕を引き抜き、再び殴る。左腕を引き抜き、殴る。殴る。殴る。
ズボッ
ズボッ
ズボッ
・
・
・
気付くと、ウルフ・イーターはガルファを下敷きにするように崩れ落ちていた。
俺は、ガンファを貫いた鋼糸を引きちぎり、ヤツの下から引き摺り出した。
薬草だ。俺は、リュックから掴めるだけのラファール草を取り出し、口に詰め込んだ。
噛む。 噛む。 苦い。 そんなことはどうでもいい。
ペースト状になるまで噛む。
吐き出す。
それをガンファの腹の患部に塗り込む。塗り込む。
――ピロリン♪スキル【薬草術/Eランク】を取得しました――
さらに、ラファール草を取り出す。
口に詰める。
噛む。
・
・
・
吐き出す。
塗る。
擦り込む。
口に残った薬草を口移しでガンファに飲みこませる。
――ピロリン♪スキル【薬草術/Dランク】を取得しました――
ガンファのリュックからもラファール草を取り出す。
口に詰める。
噛む。
・
・
・
口移しで飲ませる。
「う、ううっ……」
ガンファが呻き声をあげる。意識が戻ったようだ。
「ガンファ!!ガンファ!!大丈夫かっ!!俺が解るか?」
軽く揺すりながら、俺が呼びかけると、ゆっくりと目を開けた。
「ぉ、おぉ……ユウマ。」
何とか間に合ったようだ。念のために看破と念じる。
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■ステータス
名前/ガンファ・ドスティアームズ
Lv.3
種族/ドワーフ 年齢/52歳 職業/ハンター
HP 5/43
MP 13/23
腕力 23
体力 20
敏捷度 12(-6)
器用度 19
知力 11
精神力 23
称号:ガート村一の狩人
装備:ボウガン、黒熊の毛皮
スキル
‐【弩術/Cランク】、【薬草術/Cランク】、【絡繰り術/Dランク】
負傷ペナルティ:敏捷度50%ダウン
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HP5ってことは、もう大丈夫なのか?
さっきは、どう見ても土気色の顔をしてたけど……看破!
【HP】:ヒットポイント。生命力の量を表す。怪我や病気によって減少し、0になると瀕死の状態となり適切な処置を施さないと死亡する。安静にし、療養すると1日で5%ずつ自然回復していく。また、HPはマイナスになることもあり、HPがマイナス(最大HPの半分の値)になると即死する。
つまり、さっきのガンファは瀕死の状態だったってことか。いや、よく解らんがHP0じゃないから大丈夫だろう。
じゃあ、今の俺の状態は…
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■ステータス
名前/有村 悠真
Lv.1
種族/人間 年齢/18歳 職業/無職
HP 0/10
MP 11/20
腕力 10
体力 10
敏捷度 10
器用度 10
知力 20
精神力 30
加護:神祖の大いなる加護
称号:転生者 異世界の初キスがオッサン(爆笑) セカンドキスもオッサン(笑死)
装備:ハイキングルック
スキル
-EXスキル【教育者】【学習者】【超健康体】【ステータス倍化/Lv.UP】【限界突破】
-ユニークスキル【極運】【ファミリア】【看破】
-スキル【薬草術/Dランク】
-魔物スキル【鋼糸/Dランク】【毒牙/Dランク】
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・・・・。
・・・・・・・。
おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーいっ!!!
ぬぁんじゃこりゃぁぁぁぁぁああああーーーーーーーーーーーーー!!!!!!
おい、称号!!喧嘩売ってるのか!!血涙流すぞコンチクショーっ!!!
あれはキスじゃねぇぇぇぇえ!!医療行為だっ!適切な処置だっ!断じて認めないっ!!
って、は?今、HP0なんですけど……瀕死なんですけど!?
あぁ……いかん。ツッコミどころが多すぎる!!
さっきのピロピロなってたのは、おそらく【鋼糸】【毒牙】を学習したんだろうけど……
どうなってんだこれ。とりあえず、記憶よ消えろ…記憶よ消えろ…記憶よ消え去れ…
「ユ、ユウマ?大丈夫か?どこかやられたのか?世界の終わりのような顔しておるぞ。」
ガンファは上体を起こして、心配そうに俺を覗き込んでいる。
「ぶわっ!!く、来るなーっ!!近づくなっ!俺は大丈夫だっ!!HP0で大丈夫じゃないが、大丈夫だからっ!!」
思わず後ずさる。このままそっちの世界に行くわけがないだろーがっ!!俺はノーマルだっ!!
「ひどく混乱しておるようじゃな。にしても、ワシよりボロボロじゃないか。すぐに治療する必要が……」
「いらんっ!断るっ!も、もし、ラファール草口移しで飲ますなんてしてみろっ!!舌を噛んで死んでやるからなっ!あぁーー!!俺は何てことをしたんだーーー!!無理だっ!もう無理っ!殺せっ!殺してくれぇーー!!」
「……バカは放っておくとして、ワシを治療してくれたのはユウマのようじゃの。
ワシのラファール草も使ったようじゃし。瀕死じゃったのか……ワシは。
よし。ちょっと待ってるんじゃ。」
ガンファはラファール草を1束取り出すと、両手の掌の上で、何やら力を込めている。
「大地の理 満ち満ちたる慈愛の雫 収縮 精製 『ポーション作成』」
淡い光を放ち、ラファール草が徐々に液体となり、緑色の水溶液がガンファの掌に作り出される。
そして
ビシャ!
その液体を俺の左肩に乱暴にふりかけられる。残った液体も左肩に擦り付けられる。処置雑すぎるだろっ!!
でも、今のは魔法か?ポーション作ったのか?とにかく、すげー……光ってたぞ。でもって、傷口がもうふさがり始めてる。ファンタジーだ……
残った最後のラファール草で、同様にポーションを作り、俺の右太ももにぶっかけられる。いや、だから処置雑だって!!
これで俺のHPは・・・
ユウマ
HP 9/10
よしっ!大分回復したぞ。っていうかほぼ全快だよ!!どれだけ優秀なんだよポーション!!
「あ、ありがとう。助かった。ガンファ……さん。」
「ふんっ!今更、さん付けなんかせんでもいいわい。」
デレてなんかないんだからねっ。勘違いしないでよねっ!!
「にしても、ユウマも薬草術が使えるとはの。礼を言うのはワシの方じゃ。
薬草があったとはいえ、普通は瀕死の状態を素人がどうこうできるようなもんじゃない。」
「あぁ……たまたま上手くいったって感じか。運が良いんだよ。俺は。
でも、薬草、全部無くなってしまったな。売れば結構な金になったんだろ?」
「そうじゃな。二人持ってた分を合わせたら1月は遊んで暮らせるくらいは……の。
じゃが、命あっての物種じゃ。しばらく歩いたら村じゃ。もうひと頑張りだな。」
ガンファは近くにあったボウガンを拾い、徐にこちらに向かって構える。
「おいおい。ガンファ。なんの冗談だよ……それ、下ろせよ。」
でも、ガンファの目には殺気が籠っている。照準を合わせている。
トリガーにはしっかりと指がかかっている。
「おい!なんでだよっ!!ちゃんと説明し……」
背中から爆風が襲い、思わずつんのめる。
振り返ると、頭を吹き飛ばされたウルフ・イーターが崩れ落ちていた。
擬死……クモやカニなどに見られる習性で、命の危機などに直面すると体を硬直させる。所謂、死んだフリである。
そんな、知識が思い浮かぶ。アイツ生きてやがったのか……こちらが油断する隙を狙ってたってことか。ヤツに看破を念じてみる。
――――――――――
ウルフ・イーターの遺骸
討伐者:ガンファ・ドスティアームズ
鋼鉄蜘蛛の爪、鋼鉄蜘蛛の毒袋 魔核石 の剥ぎ取りが可能
――――――――――
これ……死んだんだよな?遺骸ってなってるし。
にしても、魔物の死骸には、剥ぎ取れるものも、解るらしい。便利機能だな。
――ピロリン♪ピロリン♪――
ん?なんだ?ドヤ顔でこっちを見てくるガンファは気になるが、とりあえずステータス……
――――――――――――
■ステータス
名前/有村 悠真
Lv.3
種族/人間 年齢/18歳 職業/無職
HP 9/40
MP 10/80
腕力 40
体力 40
敏捷度 40
器用度 40
知力 80
精神力 120
加護:神祖の大いなる加護
称号:転生者 異世界の初キスがオッサン(爆笑) セカンドキスもオッサン(笑死)
装備:ハイキングルック
スキル
-EXスキル【教育者】【学習者】【超健康体】【ステータス倍化/Lv.UP】【限界突破】
-ユニークスキル【極運】【ファミリア】【看破】
-スキル【薬草術/Dランク】
-魔物スキル【鋼糸/Dランク】【毒牙/Dランク】
――――――――――――
………。
称号消えろ。称号封印。称号表示/OFF。称号隠ぺい
必死の思いが通じたのか、称号の表示が消える。ふぅ……これで生きていける。
おっ、レベルが上がってるぞ♪これで勝つるっ!!生き残りやすくなったのは確かだ。今なら、グレイウルフもどうにかできるだろう。
指先を意識して、【鋼糸】と念じてみると…
プシャーッ
なんか出た。
ウルフ・イーターに比べるとやや細いが、木の幹に鋼糸が突き刺さる。
おぉ!!スゲー!!
ま、使いこなせる気はしないが、ちょっとは強くなった気がする。
ガンファは目を見開いてこちらを見ている。
ヤバ……見られた。
「あ、えーと……そうだ!剥ぎ取らないと!!えーと爪と毒袋と魔核石だっけか?」
「お、おう。」
まだ変な目で見てくる。やめてよねっ!そんな目でこっち見ないでっ!!
やっぱり魔物のスキルを使うのは不味いよな。さすがに……。気をつけよう。
ガンファはナイフを取り出して、爪や毒袋を取り出していく。それを興味深そうに、見ていると……
「ユウマ、こいつはお前がやったのか?」
そう言って、ウルフ・イーターの腹部に開いた無数の穴を指す。
「あ、あぁ……えーと、むしゃくしゃしてやった。誰でもよかった。」
また変な目でこちらを見てくる。
「いや、違う……そうじゃなくて、無我夢中だったんでよく覚えてないんだ。
気付いたら殴りつけてたから……」
「殴った!?素手でかっ!!………そうか。ま、まぁ、いいか。いや、よくはないが、今はいい。」
ガンファは顎が外れそうなほど、ポカンとなったあと深く考えるのをやめたようだ。
「そ、そうだ!それはそうと、ボウガンの矢、あれはなんだよっ!残り1本しかないとか言ってなかったか?もう1本隠し持ってたのかよっ!!しかも爆発するようなとっておき隠しやがって!!」
「何を言ってるんじゃ?確かに起爆矢は黙っていたが、野宿してた時、ちゃんと残り2本だと伝えたはずだが……」
「いーや、1本って言ったはずだ!……上手く聞き取れなかったけど、ちゃんと人差し指1本立ててたじゃないかよ!」
「は?2本ならこれであってるじゃろうに……」
ガンファは不思議そうな顔をして、人差し指1本を立てる。
「いやいやいや、どんな目してんだよ。2本なら普通こうだろう!」
俺は人差し指、中指を立てる。
「それが2?いやいやいや、お前の目こそ、どうなっておる。それでは6になってしまう。」
「はぁーー!?6?いいか、よく見とけよ!1、2。ほら、2本じゃないかっ!」
俺は順番に、人差し指、中指を立てて数えて見せる。
それを見たガンファは急に俺を憐れんだ目で見てくる。
「そうか……ユウマ。そうだな。悪かった。数え方は人それぞれじゃからな。」
「な、なんだよ急に。普通、数えるっていったらコレだろうが…」
「ユウマ。普通はこうするんじゃよ。よく見ておくんじゃよ。」
うわっ、なんかすごいバカな子を見る目でこっち見られてるよ。
ガンファは指を折り、数え始める。
1 親指を立てる。
2 人差し指を立て、親指を戻す。
3 人差し指、親指を立てる。
4 中指を立て、他の指は戻す。
5 中指、親指を立てる。
6 中指、人差し指を立てる。
7 中指、人差し指、親指を立てる。
8 薬指を立て、他の指を戻す。
9 薬指、親指を立てる。
10 薬指、人差し指を立て、親指を戻す。
「どうじゃ?わかったか?」
ガンファが優しい目でこちらを見てくる。そんな目で見るなーっ!!なんだこの変則した数え方はっ!
ん?これは……つまり2進法か?親指が1 人差し指が2 中指が4 薬指が8を表している。つまり、小指は16を表すはずだ。立てた指に相当する数を足すとその数になる……20なら16+4、つまり小指と中指を立てればいいことになる。片手で31まで数えることが出来るってことか……
「えと……じゃあ、これで1023になるってことか?」
俺はそう言って両手を広げてガンファに見せる。
この2進法でいくと、左手をあわせると1023まで数えることが出来るはずだ。ん?何でこんなに計算早いんだ?ステータス知力120の恩恵か?まぁ、いいか。
確かにこの数え方は、便利っちゃ便利だろうが、分かりにくい。
「ほう!なんじゃ、数え方知っとったのか。バカじゃなかったのか。」
「はぁ?今知ったよそんな個性的な数え方!!」
「気にするな。ど忘れは誰にでもあるからな。でも、その若さで物忘れは、ちとヤバいかもしれんがな。はっはっはっは!!」
このオッサン……覚えとけよ……
なんとか荒ぶる気持ちを抑え、剥ぎ取りを手伝う。
どうやら、魔核石はウルフ・イーターの心臓の中にあるようだ。ガンファは体液に塗れた心臓を取り出し、ナイフで裂くと中から、赤く輝く宝石のような石が現れた。どうやらあれが魔核石のようだ。ガンファはそれを俺に差し出してくる。
「ほれ、それはお前にやる。後の爪は4本ずつ分ける。毒袋は俺が貰う。薬の原料になるからな。それで文句はないか?」
「お、おう…。それで構わない。」
俺は魔核石を受け取ると、インベントリと念じてみる。ふっと手から消えた。メニューから確認してみるとちゃんと収納できたようだ。いかにも大事アイテムそうだからな。リュックに入れておくよりは安心だろう。
リュックに戦利品を詰め込み、俺たちはガンファの村を目指し、出発した。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
この事件をきっかけに、ユウマの一人称が僕から俺になります。