表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盤上のイレギュラー~獲得SP2倍の冒険者は、世界の計算を狂わせる~  作者: 上山マヤ
第5章 王都編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/101

第96話 ラクンのプランター

 ジャック・ブルトンの屋敷。


 無限ダンジョンから無事に帰還できた俺は、ジャックの屋敷へと帰ってきた。


「ただいま、でいいのかな?」

「あ、タケル、おかえり!」


 玄関を開けると、ユラが弾んだ声で出迎えてくれた。

 彼女のこういう明るい声はちょっと珍しい。

 尻尾が機嫌よく揺れている。


「なんかご機嫌だな?」

「こっちきて! ラクンが凄いのよ!」


(なんだ? キャンドル作りの才能が開花したとか?)


 ユラが俺の手を引いて応接室へと誘導する。


「おお、戻ったかタケル。これを見たまえ!」


 ジャックが興奮した様子で身を乗り出してきた。


 テーブルの上には、ラクンの骨のプランターが置かれていた。

 よく見ると、プランターの土の中央で何かが淡く光っている。


「水晶花が芽吹いたのだ!」

「へえ」


(ゴブリンの村の、クリスタル洞窟に昔咲いてたってやつだよな)


「どれだけ凄いのか分かってないようだな」


 ジャックは、やれやれといった風に大げさに肩をすくめる。


「何となく、凄そうな雰囲気は伝わっていますけど」

「研究していた者は多い。しかし、誰一人として水晶花を種から育てることはできなかったのだ!」

「王都で研究されてたんですか?」

「王都だけじゃないぞ。色んな研究者が興味を持っていた。たしか、マナを吸って成長する……とか言われていたな」

「あ、そういえば、水晶の実は高く売れたと聞いたことがあります」

「その通り! 水晶の実が流通していたのは、10年前とか……もっと昔だ」

「当時は、小さな実でも金貨1枚はしたんだって!」


 ユラが目を輝かせて補足する。


「そんなに!?」


(金貨1枚。つまり銀貨100枚分だ)


 あ、今日、俺ダンジョンで銀貨30枚くらい稼いできたんだけど……。

 自分でも驚くくらい稼げたのに……。

 スケールの違いに、少しだけ肩が落ちる。


「ケル、元気、ないのか?」


 ラクンが小首を傾げて、俺の顔を覗き込む。


「いや、ラクンの凄さに驚いてるんだよ……」

「そうか」


 ラクンは少し得意げに鼻を鳴らした。


「まあ、まだ喜ぶには早い。芽吹いただけだ。花が咲いたわけでも、実ったわけでもないからな」


 ジャックが咳払いをして自分を落ち着かせる。


(さっきまで十分喜んでたじゃん)


「今は余計な手出しはしないことに決めた。ここはラクンに任せよう」

「意外に慎重なんですね」

「水晶花の種は、もうこれ一つしかないらしいからな」

「そうなの?」


 俺が尋ねると、ユラが静かに頷いた。


「偶然、拾った。ずっと、隠してた」


 ラクンがぽつりと言う。


(あの洞窟で、1人で歌の練習をしてたって言ってたな)


 ラクンにとって、自分だけの宝物だったのかもしれない。


「俺も研究者の端くれだ。事の重要さは理解しているつもりだ。陰ながら応援しているぞ」


 ジャックは上機嫌でキャンドル工房へと向かっていった。

 彼が部屋を出てから、俺はラクンに聞いてみることにした。


「でもいいのか? 実が生ったら、あのおっさん売る気満々だぞ?」

「いい」


 ラクンが俺を真っ直ぐに見上げる。


「ケルは、金が、ないのだろう?」


(俺のため!?)


「我も、ユラのように、役に立ちたい」

「……もう、ラクン」


 ユラが涙声になって、ラクンをぎゅっと抱きしめる。

 ラクンはされるがままになって、ユラの腕の中で目を瞬かせた。


(そんなことを思っていたのか)


 いつかのユラみたいだ。

 そうだよな。

 誰かの役に立てたら嬉しいよな。

 その気持ちは、動けなかった俺にも痛いほど凄く分かる。


「ありがとうな、ラクン。……よし! 何か美味しいもの食べに行こう」

「タケル知らないの? 王都のご飯ってすごく高いのよ?」


 ユラが涙を拭いながら、からかうように言う。


「実は今日、ちょっとだけ稼いできたんだ」


 俺は銀貨の詰まった重い財布を揺らして見せる。


「ジャックさんに、俺たちでも入れそうな美味い店を聞いてみよう」


 ◇ ◇ ◇


 数日後。


 俺は野良パーティに参加しながら、無限ダンジョンのクエストを進めていた。

 ギルドでは、カーティスたちと顔を合わせることもある。


『おうタケル! 無理してねえか?』


 カーティスたちは、なんだかんだで世話を焼いてくれる、いい兄貴分みたいな人たちだ。


 結局、初日のカーティスたちとの戦闘が一番儲かったな。

 その分、命の危険もあったけど。

 あれからスノウファントムのような、階層に合わない危険なモンスターには出会っていない。


(ネームレスが言っていたマナの乱れ……少しは落ち着いたのかな?)


 俺は杖を握り直し、今日もまた光の柱へと歩みを進めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ