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俺は、ショタコンじゃねぇっ!!!!!!  作者: 陽日
1章-2節:ブリア王国編-平穏な町ツヴァイ
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33話:狂想曲

自然光が全く入らず、ゴツゴツとして足元の悪い洞窟をゆっくり奥へと進んでいく。暗闇というのは、それだけで人の精神を追い詰め、軽々とパニック状態へと追い込むものだ。いつもより早くなる呼吸を、意識してゆっくりと抑えこむ。


前方には、先頭を進むことを自ら買って出てくれたウカの姿がある。もともと真っ黒黒な彼の装束は、洞窟の中では周囲に溶けこむようだった。彼は足音すら立たず、進んでいく。時折ひらめく白刃のみが、少年の存在を浮き立たせた。


その少し後を、慎重な足取りで進むのはヨーリアだ。カンテラを両の手で精いっぱい持ち上げ、少しでも周りが明るくなるようにと揺らしている。


うーん……やっぱあのアーサーのように光球を出せたほうが、色々と安全だよな。恐らく、この子も喜ぶだろうし。ちらっと隣の様子を窺うと、大きな本を抱えてぺたぺた駆ける子供と目が合ってにへりと笑われた。

それに、だよなと勝手に頷く。


あの光球は、たぶん【光式】で覚えられるなんかだろう。ステータスオープン、スキル一覧を開く。スクロールを行えば、目的のものはすぐ見つけられた。

しかし、なんということだろう。【光式】は灰色の文字となっており、選択することができない。なんか、信仰心のステータスが足りないんだと。


ええ……たしかゲーム開始直後では選べていたはずなのに。【炎式】や【水式】も選べない。いつの間にか、俺の信仰心は0となっていた。

おい、なんだこれ。毎日、しっかり神殿で祈る作業は欠かさない俺が、信心深くないってのか!?作業とか考えてる時点で……ないかも。


「……あ、ま〜た何かスキル取ろうとしてるでしょ?ダメだよ〜。レベル低いうちは伸びる能力も影響強く受けるんだから、慎重に選ばないとっ!」

ちょいちょい、と杖で背を小突かれる。振り向かなくても分かる。ソーリャの仕業だろう。追いついてきた彼は、レメとは反対側からひょこりと顔を覗かせ、俺の腹をつんと押す。


「そういうとこが、お人好しって言うんだよ!」

「便利だろうから取ろうとしているだけだ。……誰かのため、とかではない」

「ハイハイ……そういうことにしてあげるけどっ、どっちにしてもスキル取得は慎重にだよ!」


いや、違うし!後味の悪いのは、クール男子としても、趣味じゃないだけだからな!!

訴えても、大仰にくるくるりとケープをふわりと翻して回ってみせるだけ。あ、いつの間にか乾いてる。

──とにかく時間をかけるだけ、無駄そうだった。




【脱出】スキルなんて持ってるなら話は違うと。

あの後二人は意見を翻し、洞窟の奥へもう少しだけ探索を進めようという話になった。

話ぶりを聞くに、やっぱりNPCは獲得できないんだそう。異世界人は習得できるらしいという噂は本当だったんだ、と関心された。


なんでもかんでもプレイヤーだからって、持ち上げられるのは少し気持ち悪いな。とはいえそんなメリットもないと、わざわざ異分子(プレイヤー)を積極的に国やギルドに呼び込む理由なんてないだろうけどさ。ソーリャが始めの頃に語ってくれたことを思い出す。

設定がそうというなら仕方ない。極力気にしないように、肩をすくめる。


なお。俺の挙動が不審だったせいで、予めスキルを持っていたのでなく、あの場で獲得したことはバレた。なんで俺を見るんだ、やめろ!というのは、先ほどの局面では流石に無理があるか。


無理に獲得させてしまったのでは、と顔を青くする幼子たちには、もともと獲るつもりはあったものだからと弁明する。実際、事実だ。

ソロで冒険者やるのに、獲得しないなんてことまず考えていなかった。


だから予定調和なのだと、手を握りさすって……こういうところがお人好し判定されるのかと気付き。だが自分のRPのために、無駄に子供に不安感を持たせたくもないのでここは諦めた。カッケェ男は、子供を大切にできる。

クール男子は、また別の場所で演じよう。



さて、閑話休題。

そんな経緯があり、今俺たちはさらに奥へ奥へと洞窟を進んでいる。実際にありそうな地形を再現しているとはいえ、ここはさすがにゲーム。進めそうな道は、殆どまっすぐの一本だけだ。他は幼子等でも通るのに苦労しそうな横穴が、それっぽく垣間見えるだけ。

そこから吹き出す湿気を含んだ生温い風が、俺たちの頬を打つばかり。


だから道を間違える、なんてこともなく。

辿り着いた行き止まり。開けたこの場所はちょっとした洞室になってるようで、子供たちが自由に駆け回ることもできそうだ。流石に危ないのでさせないけど。


ただ、ここは魔物の溜まり場にもなっていたよう。蝙蝠やウサギ、小さな蛇に蜘蛛──まぁ、色んな魔物がいる。一匹一匹は決して強くないが、数が多い。そしてなんとは無しに気が立っている様子。だが道中の彼らとは違い、こちらへすぐに襲ってはこなかった。互いに一定の距離を取りながら、見つめ合う。


なぜ……と、ソーリャに視線を送るが、顔を振られた。むしろ、これくらい襲ってこないのが自然なんだそうな。こっそり図鑑を広げた子供に、横からそうアドバイスをしている。


数的有利は圧倒的に取られている以上、必要以上に彼らを刺激する必要はないだろう。画面の前で遊ぶゲームならともかく、リアル体験をするゲームにおいては数というのは想像以上に驚異だ。楽園の蛇戦で、しっかり経験したもの。


だから、こっそりと距離を取りながら奥へと向かう。

そうして何故か最奥に設置されていた宝箱を、幼子の二人に開けてもらったのだ(フィールドにある宝箱は、八神からの贈り物なんだと。だから八神を呪う魔物は、開けられないんだとか。そんな理由付けだったんだと関心)。


だが開いた中身は赤水晶がポツンと一つだけ……え、俺たちが欲しいものが見事に入っている!?残念ながら道中で出現したジュエルスパイダーは、青水晶だったので諦めていたというのになんて幸運。


呆然と目を見開くヨーリアに、小さく良かったなと声をかける。レメも「よかったね!」と子供の小さな手を握って、喜色満面の笑みだ。

普通に遺跡ならポンポン落ちるものが入っていた、というのはハズレ枠と言えるのかもしれない。だが今回ばかりは、本当にありがたかった。


八神からの贈り物ってのも、あながち間違いじゃないのかも。今欲しいものが手に入りやすくなってる、とかあるのかな。




互いに喜びを分かち合い、さぁ帰ろう。大切に子供が懐へ水晶を仕舞うのを見届けて、俺はスキルを発動させようとする。


なのにふと、ウカと俺は固まった。


全くの同時。俺たちは息を詰める。

振り返る先も同じ、洞窟の最奥。そこにあるなんてことない岩壁だ。

他の三人の様子を伺うが、何事か分からない顔でキョトンとしている。ソーリャの長杖を握る手に、力が入ってるのが見えた。


「……どうしたの?二人でいきなり」


やはり、気付いていない。

ウカの真っ暗な瞳と目を合わせる。彼は小さくツバを飲み込んでいた。喉仏が上下する。


「……カルさんも聞こえているのかい?」

「ああ、聞こえている」


二人で壁へ、その奥へと視線を投げる。

そこから聞こえてくる音楽は、ひどく聞き覚えがあるものだった。



らん……らんらら、………ん……



調子はずれな不協和音まじりの、幼い子どもの歌声。ここ数日、すっかり耳に馴染んでしまったものだ。聞いているだけでも、不安が掻き立てられるどこか音が抜けたような和音。

このBGMを背負った子どもなんて、一人しか思い浮かばない。


壁にぺたりと手を当てる。あの日のように、すり抜けてしまうことはなかったけれど。


「……この先に、何かがおるのか?」


近付いてきた子どもが問いかけてくる。可能性は高いだろうから、「おそらくな」と返した。

しかし岩壁がこうして現実の立ち塞がっている以上、やりようはないだろう。脇道がどこかに隠されていたとして、何の当たりもなく見つけるのも困難だ。


「それならば……」


俺の回答を受け考え込んでいた幼子が、再び口を開く。しかしその時、俺たちの耳に飛び込んできたのはカタンという軽い音。今度は二人だけでなくソーリャも、何もない奥の壁へ弾かれたように首を向ける。


カチッ


と音がした。さっきの何かが落ちたような音より、さらに小さな。合わせて、ぶわりと何か衝撃のようなものが駆け抜けた気がした。HPは何も減っていない。しかし猛烈に嫌な予感。果たしてそれは、一瞬後に的中することになる。


互いに息を詰め距離を置きあっていた、この小さな空間内の魔物たち。じっと見つめあっていただけの彼らは衝撃派のようなものが発された直後、金切り声を上げ始めたのだ。突如として不協和音を掻き消すほどの、さらに不快な大絶叫。


ギィギィと耳を軋ませる音は収まることなく、咄嗟に耳を塞いでも手のひらを貫通して脳へと響く。おい、これ脳への直接攻撃として、何かの法律で取り締まれるだろ。現実逃避。だが非常にももちろん、時間は待ってくれない。


音に釣られてか、人が通れない程小さな横穴から魔物たちがどんどんと顔を現す。その目は血走り、理性のかけらもない。道中で無差別に襲いかかってきた、あの魔物たちのように。数だけはもっと多くなって。


つまり、そういうことだ。

逃げ場は一箇所しかないこの空間。だがその前には、何匹も何匹もと地を隠すように、視界を遮るようにひしめく魔物たちの姿がある。

思わず足が一歩、後ろへと下がる。踵はカツ──と、背壁に当たった。


直後。

ソレらはそのまま、俺たちに向かって襲いかかってきたのだった。







ゲーム内掲示板より抜粋

【速報】ツヴァイで魔物襲撃イベント(Eクラス)が発生しました


328.名無しさん

やけにランカーが多いなって思ってたんだよな(一敗)


329.名無しさん

ザコでも群れるとやばい。これ常識


330.名無しさん

俺らみたいなザコは後方でチマチマおこぼれに預かりながらアイテム探しするんだよ


331.名無しさん

バカはいつでも前線に突っ込んでいく

もうスイッチ1個見つかったってのによ


332.名無しさん

>>331

そマ??

あと9個しかないとか、見つけるの無理ゲー


333.名無しさん

>>332

なお、9個見つかるとは言っていない(他鯖を見つつ)


334.名無しさん

普段より効率よく経験値がもらえるだけでありがたがらないからそうなる


335.名無しさん

ふふ、いっぱい神殿に戻ってきてる


336.名無しさん

>>332

5鯖とか、まだ8つしか見つかってないんだってな

どっかで伏線みたいに回収すんのかね


337.名無しさん

>>336

時間進めば進むほど、村人無駄に守らされるだけのゴミイベになるからなあ

今回で全部終わればいいんだけど


338.名無しさん

あのアイテムのスイッチと言えば名前の■■■■■って、まだ1鯖でも開示されてないんだよな

考察勢の動画とか見てても、まだわかんねー


339.名無しさん

>>338

とか言ってたら数年越しに回収してくるのが運営

震えて眠れ


340.名無しさん

とりあえずアイテムさっさと回収して、魔物が落ち着くようになればいいな

少しでも町への被害が少なけりゃいいんだけども

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