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63 依頼達成

暫く投稿が不定期になります。その分文章量を増やそうと思っているので、これからも読んでいただけると嬉しいです。

 温泉に入った数日後、グロウ達は風の里の出口である空間の裂け目の前に集まっていた。周囲には見送りに来たストムベールの他にも、各種族の族長が来ている。


 この数日、グロウ達はストムベールの厚意で里にいる龍種達と一緒に鍛錬をしたり、ナケア達に魔法を教えたりしていた。お陰でこの里の龍種達とは、随分と仲が良くなっている。特に人見知りしないナケアは、この里でもかなり可愛がられていた。


「もう行くのか? グロウ達は私の命の恩人。もう少しゆっくりして行っても良いんだぞ?」


「いや、そろそろ行かないと、鍛錬の時間が減ってしまうからな。それに、一応俺たちは今依頼を受けているんだ。面倒事は先に片付けた方が良いだろう?」


「Bランクの昇級試験を面倒事って……それに、あの依頼内容なら今から帰っても十分早すぎるわよ」


 グロウの言葉に、ソフィアが呆れた様に肩を落としながら答える。嘗ての都市一つ分の浄化、それが今回グロウ達の受けた依頼内容だ。本来で有れば、浄化魔法の使える聖術師が何人か集まって、数週間浄化魔法を掛け続けて漸く達成できる様な依頼内容だった。


 それを一日で終えてしまったのだから、ソフィアが呆れるのも無理はない。しかし、ソフィアは気付いていなかった。その広大な都市の浄化には、ソフィア自身も多大な貢献をしており、全体の四分の一近くの範囲はソフィアが浄化していた事に。


 残りを全てナケアが浄化してしまったので自覚は無いが、ソフィアも十分この時代の魔法の域を脱していた。


「それに、俺たちが拠点にしてる街から此処は近いからな。また来させてもらう。エリカの特訓にもこの場所は良さそうだ」


「ああ、その時は歓迎しよう。またいつでも来てくれ。いや、折角グロウに【龍人化(トランスフォーム)】の魔法を教わったのだから、私から出向くとしよう」


 この数日間で、グロウはストムベール達に【龍人化(トランスフォーム)】の魔法を教えていた。少々複雑な魔法だった為、習得できたのはストムベールと各族長など、実力のある龍種だけだったが、里の龍種の活動範囲が広がったとストムベール達は喜んでいた。


「ボクもまた来るよ! 次はここを探検するの!」


「ルピナみょ、探検したい」


「グロウさん、一体この場所で何をする気なんですか……?」


「妾はもう絶対来んからな!」


 ストムベールを始め、各種族長に見送られながら、グロウは開かれた裂け目の中に入っていく。たった数日過ごしただけだが、里の中の龍種達は全員グロウ達を仲間として認識してくれている。全員優しい心を持った気の良いドラゴン達だった。


 エリカとの特訓にも、強力なドラゴンの住むこの里は都合が良い。また必ず来ると約束してから、グロウ達は風の里を後にした。




「やっぱり、あんな広大な里が、この裂け目の奥に広がっているなんて、不思議な感覚ですね」


 裂け目を通ってきたエリカは、後ろで徐々に閉じていく空間の裂け目を見つめている。開け方はグロウがストムベールから教わった。これでいつでも、グロウは風の里に行けるようになったので、これからも暇があれば風の里に寄ろうと考えている。


 何よりも、温泉は気持ちよかった。あの温泉には、里にいる龍種の魔力が溶け込んでいる為、魔力の回復量が早くなるらしい。何かと便利なので、これからも頻繁に使わせてもらう予定だ。


 今回、風の里では随分とお世話になった。各地の上位のドラゴン、龍神器の情報に、グロウ達にとって厄介な屠龍の情報。特訓相手にナケア達の遊び相手など、至れり尽くせりだった。今度来る時は手土産でも持っていく事にする。


「それじゃあ、王都に向かうか。セルゲンレイクが近いのに王都に行くのは二度手間だが」


「しょうがないですよ。そもそも、ここから王都までかなりの距離があるのに、二度手間でも気軽に移動しちゃう方がおかしいんです」


「そうよ! ここから王都まで何キロあると思ってるの⁉︎ 二度手間で済む時点でおかしいのよ!」


 この数日で、エリカとソフィアも随分仲が良くなった気がする。ナケアとも仲が良いが、普通の人間同士で通じ合うものでもあったのか、最近グロウは二人に小言を言われる事が多い。


「お兄ちゃん、早く帰って遊ぼ〜!」


 ナケアは朝から元気にその場で飛び跳ねている。ルピナは朝が早いこともあり、今はエリカの背中で船を漕いでいた。


「それなら、妾はこれで帰るぞ? 流石に、ここから王都まで行く必要はあるまい?」


「またルピナが起きれば呼ぶと思うが、今は束の間の休息を楽しんでいると良い」


「なんじゃその不穏な言葉は⁉︎」


 ブツブツと文句を言いながら、タマモは住処となっている洞窟のある方向へ飛んでいく。これからもタマモはルピナに振り回されそうだ。


 タマモを見送ったグロウ達は、王都に向けて走り出したーー



 ◇



 里の入り口から走り出して数時間後、グロウ達はフェルゴ王国の王都に到着していた。王都は相変わらず人が多く、活気に満ちている。朝方に風の里を出発したのだが、現在は既に日は高く上り食堂が混み合う時間になっていた。


「依頼の報告をした後は、昼飯を食いに行くか」


「ご飯! 早くぎるど行こう!」


「お姉ちゃん、おなかしゅいた」


 ナケアとルピナがお腹を押さえてグロウとエリカを見つめてくる。朝ご飯は食べたが、もう昼ご飯を食べるのに良い時間だ。何も言わないが、ソフィアもエリカも当然グロウもお腹は空いている。その為、全員は早足で

 ギルドに続く道を歩いて行った。


 ギルドに到着すると、グロウ達は依頼達成の報告のために受付に向かう。時間が時間なので、中に他の冒険者は少ない。受付では、前にグロウ達がお世話になったギルド職員のマルティナが座っていた。


「依頼を達成してきた」


「ああ、はい……って、皆さんもう帰ってきたんですか⁉︎ 皆さんの受けた依頼、確か期限が何ヶ月もありましたよね?」


 やはりと言うべきか、グロウ達の受けた依頼を知っているマルティナは、依頼を達成したと言って数日で帰ってきたグロウ達を見て驚いている。


「あの、一応確認ですが、冒険者証と依頼書を提示して下さい」


 マルティナに言われた通り、グロウ達は依頼書を取り出してマルティナに渡す。依頼書には特別な魔法陣が施されているため、依頼が達成できているのかギルドでは直ぐにわかるらしい。その為、依頼では虚偽の報告は不可能だ。


 半信半疑と言った表情で依頼書を受け取ったマルティナは、受付にある水晶のような魔道具に依頼書をかざす。すると、依頼書から何かの文字が浮き出した。


「ほ、本当に達成してる……」


 依頼書から出てきた文字を読んだマルティナは、目を大きく見開いてその文字を凝視している。ナケアとルピナのお腹がさっきから鳴り続けているので、早く終わらせて欲しい。


「Bランクの依頼を達成しましたので、これで最終試験は終了となります。よって、グロウさん達はこれでBランクとなりました。おめでとうございます」


 マルティナが預かっていた冒険者証を受付の奥にある魔道具に持っていき、魔道具を操作する。魔道具が止まったところで、マルティナはそれぞれの冒険者証を持って受付に冒険者証を今回の依頼の達成報酬を置いた。


「これで皆さんはBランクですね! このペースなら、Aランクも夢じゃないかも知れません!」


 冒険者証には、しっかりとBランクと書かれており、なんとなく柄もCランクよりも豪華になっている気がする。何よりも、これでより高難度の依頼を受ける事ができるようになった。今までは受けられる依頼のランクが低すぎて、例え依頼を受けても特訓にもならなかった為滅多に依頼は受けなかったのだが、これからは依頼と一緒に特訓ができるくらい手応えのある依頼を受ける事ができる。


 実は、ルピナとグロウはドラゴンから姿を変えているだけだからかかなり食べる。一応、ドラゴンに比べれば微々たる量であり、かなり食事の量を抑える事は出来ているのだが、それでも人間の中では間違いなく大食いの部類に入るくらいに食べるのだ。


 その為、一食にかかる食費が結構高く、魔物の討伐やダンジョンの攻略などで稼いだ資金はまだあるとは言え、今後を考えれば収入源は欲しかった。


 テンション高く騒いでいるマルティナにお礼を言って、グロウ達はギルドの外に出ようと受付に背を向ける。その時、丁度他の冒険者パーティーがギルドの中に入ってきた。その冒険者達を見て、エリカの動きが止まる。


「いや〜、ここのダンジョンは歯応えがあるな」


「良く言うぜ。お前があの時部屋に入ってトラップを踏まなきゃ、撤退する事なく攻略できたってのに」


「本当、ケルがなんも考えずに突っ込むから、私の取り分が減っちゃうじゃない!」


 大声でギルドの中に入り、周りを気にする事なく受付に近寄っていく。細身だが良く鍛えられ、腰に剣を下げている青年と、体格が良く背中に身の丈程のハンマーを背負っている髭の生えた男、そして杖を持った華奢な女性で構成された、どこにでもいる普通の冒険者パーティーだ。


 一見して、エリカが気にする理由が分からないそのパーティーは、エリカの視線に気がつくと、全員が気持ち悪い、人を見下した笑みを浮かべてこちらに近寄ってきた。


「そこにいるのは、セルゲンレイクで荷物持ちしてたエリカじゃねえか。どうした、まさかこんなところまで来て荷物持ちでもしてんのか? てか、死んでなかったんだな。無脳な魔法剣士でも悪運は強いみたいだな!」


 その言葉を聞いただけで、グロウはそのパーティーがエリカにとって何かを理解した。このパーティーは、嘗てエリカが所属して、見捨てられたと言われたパーティーだった。

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