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52 骸の龍

御免なさい、今回も短いです。

昨日は風邪を引いてしまい投稿できませんでした。この時期に風邪は洒落にならん……

皆さんもコタツで寝ないように気をつけてください!

 大地を震わせる咆哮が響き、邪骸龍ストムベールは骨で出来た翼を広げて空へ飛び上がった。

 そしてそのままグロウ達を一瞥すると、口から黒い魔力の塊を放つ。


「避けろ‼︎」


 グロウは声を上げると同時に魔力塊の前に移動しながら、足元から”絶壁の護身剣“を召喚した。


 召喚した魔剣で魔力塊を斬り付ける。グロウの斬撃で魔力塊は二つに割れ、地面に着弾する前に霧散した。その様子を見ていたエリカは、ルピナを持ち上げてグロウの元へ移動する。


「グロウさん、あのドラゴンは何ですか⁉︎」


「あれは嘗て“嵐龍ストムベール”と呼ばれた上位のドラゴンだ。俺たちが四方から追い立てたから、逃げ場所が無くなって出てきたんだろうな」


 グロウは上空に浮かぶドラゴンを見上げながら、嬉しそうに剣を構えた。だが、直ぐにその表情は疑問の表情へ変わる。グロウが魔力を調べてみると、ストムベールの魔力が自分達と比べてかなり低い事が分かったからだ。


 それでも、ランクで示すのならばS +はありそうな魔力を秘めているが、自分達がSSSランクである事を考えるとあまりに低い。グロウはその理由を調べようと精査魔法をストムベールに使うと、理由は直ぐに見つかった。


「なるほど、確か嵐龍ストムベールは自分の魔力の暴発で滅びていた。未だに魔力が体内で暴発している様だな」


 精査魔法によると、邪骸龍ストムベールの体内では二つの魔力が鬩ぎ合っている事が分かった。ストムベールの体内では、自らを滅ぼそうとする魔力と、それに抗う魔力が確認されたのだ。その鬩ぎ合いに使われている魔力が常に消費されており、ストムベールの魔力は大幅に低下しているらしい。


 嵐龍ストムベールが滅びてから500年以上、未だに尽きていないドラゴンの無尽蔵な魔力を見て、グロウは自分達のことを棚に上げて呆れた顔を浮かべる。


「グロウさん、これからどうしますか?」


 ルピナを抱きながら、油断なく上空のストムベールを警戒してエリカはグロウを見つめる。グロウは、本来ならここで邪骸龍ストムベールをエリカと二人で戦い、連携を経験させようとしていた。今でもそうだが、このドラゴンはエリカ一人では絶対に勝つ事ができない。だからこそ格上との戦闘を経験させ、連携の重要性を説こうと思ったのだが、此処まで弱体化されているとグロウが出た瞬間に勝負が終わってしまう。


 グロウが手加減をしようとも、エリカ一人で勝つ事はできなくてもある程度は戦えてしまうのだ。これでは期待していた連携の練習ができない。


 目的の魔物は出てきたが、期待外れだったドラゴンの成れの果てを見て、グロウは溜め息を吐いて方針を決めた。


「あのドラゴン、俺は手を出さないからエリカ達で倒してみろ」


「はい! て、えぇっ⁉︎ グロウさん抜きであの強そうなドラゴンを倒すんですか⁉︎」


「エリカ達なら出来るだろう。ルピナは危ないからナケア達に預けておけよ?」


「むぅ、ルピナだって戦えましゅ!」


 頬を膨らませて抗議しているルピナをエリカが撫でながら、上空のドラゴンを見て冷や汗をかく。その悍しい見た目だけでも迫力があるのだが、常に放出されている禍々しい魔力が余計にエリカの恐怖心を掻き立てた。


 それでも、エリカは不思議と自分が負けるとは思えない。一ヶ月前の自分ならば、目の前にいる存在を見ただけでも足が震え、何も出来ずに死んでいただろう。ただ今は、勝つ事は不可能だと分かっている。でも、戦う事はできると確信できた。


「分かりました。グロウさんが言うんですから、出来るんでしょう。ナケアちゃん達と話したいので、少し時間を頂けますか?」


「任せろ」


 エリカの言葉を聞いて、グロウはフッと笑みを浮かべて上空へ跳び上がる。そして自分の結界を足場にしながら、ストムベールの目の前まで移動した。ストムベールは目の前に来たグロウに向かって、黒い煙の様な魔力を吐き出す。その煙はグロウが剣を振り上げることにより霧散した。


 それを見て、エリカはルピナを抱えたままナケア達の元へ向かう。そこには既にタマモも到着しており、つまらなそうに上空で始まった戦闘を眺めていた。


 ナケア達の元へ到達したエリカは、抱えたままになっているルピナを下ろし、グロウの言っていた事を全員に伝える。


「ナケアのお兄さん、本当に無茶苦茶ね……」


「そうかな〜? でも、アレくらいなら簡単そうだよ?」


 上空でくり広がれた攻防を見ながら、ソフィアは呆れた様にナケアを見る。上空の攻防を見ても、自身も同じくドラゴンであり、グロウの戦いを見慣れているナケアにとっては児戯にも等しい。


 ナケアは見た目が少し怖いなと思う以外、ストムベールには特に何も感じる事はなかった。そしてそれはタマモも変わらない。子狐の姿でソフィアに抱きつかれていたタマモは、出番が無さそうだと安堵して早々に傍観の態勢に入っていた。


「取り敢えず、グロウさんが戦っている内に作戦を考えましょう。この中で前衛は私だけなので、私があのドラゴンに攻撃しますね」


「何でそんな簡単に決められるのよ! はぁ、良いわ。貴方達に常識を求める事がまず間違いよね。それじゃあ、私とナケアはサポートするわ!」


「お姉ちゃん頑張ってね!」


 簡単な作戦を決めて、エリカは魔剣を召喚してからドラゴンに向き直る。何もない場所からいきなり魔剣を出したことにソフィアが驚くも、何も言わずに手を合わせて祈る様にその場にしゃがみ込んだ。


【聖魔法:聖女の加護(セイントブレッシング)】


 覚えたての無詠唱魔法で、ソフィアはエリカに付与(エンチャント)を施す。ナケア程ではないが、エリカの体が一気に軽くなる。そして力も強化されていることにエリカは驚きながら、グロウと同じように自身の結界を足場にして上空へ走り出した。


「ルピナは、何をすれば良いんでしゅか?」


 首を傾げてエリカの後ろ姿を見つめているルピナは、取り敢えずドラゴンに特大の火炎を放ち、隣にいるソフィアを驚かしていた。

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