39 暴露
作品タイトル少し変えました。
『世界最強の魔法剣士、ドラゴンに転生したので駆け出し冒険者を弟子にする』→『世界最強の魔法剣士、ドラゴンに転生したので駆け出し冒険者を最強にする』
「出来ないって、どう言う事だ?」
「そのままの意味じゃ。妾はエリカとやらと契約出来ん。気分の問題では無く、魔力の性質が合わんのじゃ」
「ああ、そう言えばお前、神獣だった癖に“陰”の魔力性質になっていたな」
グロウ達の会話を聞いて、エリカは首を傾げて居る。
「エリカには魔力の性質について教えていなかったな」
最近は、魔法の知識よりも魔力を増やす特訓を重点的に行ってきた。本来なら知識から入りたかった所だが、騎士からの依頼があった為、最低でも自衛できる程度には力を付ける必要があったからだ。
丁度良いので、グロウはエリカに魔力の性質について説明した。
「魔力の性質は大きく分けて二つある。一つは、自分達に対して有益な効果を与える“陽”の性質。多くの付与魔法や回復魔法、聖術も大体この性質だ。白魔法とも呼ばれるな。
そしてもう一つは、相手に対し害を与える“陰”の性質だ。攻撃魔法とか、相手を弱体化させる魔法がこの性質にあたる。こっちは黒魔法とも呼ばれるな」
そして陽の性質を持つ魔力と、陰の性質を持つ魔力は、決して混ざり合う事は無く、互いに打ち消し合う性質を持つ。
例えば魔物の毒の多くは、陰の性質を持った魔力で構成されて居る事が殆どである。この毒を解毒するのなら、毒に含まれる陰の魔力以上に陽の魔力を注ぎ込み、陰の魔力を打ち消す。これが解毒魔法の原理だ。
一応、魔術士や魔法剣士など、一部の職業は両方の性質を使い分けて魔法を使う事が出来るが、それぞれ得意な性質がある為、不得意な魔法は効果が弱くなる。
「エリカの持つ魔剣、あれは陽の魔力の塊と言っても良い。つまりエリカに流れる魔力は、陽の性質を持っているんだろう。陰の性質を持つタマモとは相性が悪いか」
「そうじゃ。妾が無理矢理契約してやっても良いが、そうした場合、其奴の魔力の大半を妾の魔力が打ち消してしまうぞ?」
「それはマズいな。俺は陰の性質を持って居るが、俺が居るときにタマモを召喚してもしょうがない。超高純度な陽の魔力そのものであるナケアがタマモと契約すれば、いくらタマモでも完全消滅するだろうし……」
グロウが頭を悩ませて居ると、グロウの袖がちょんちょんと引っ張られる。その方向に顔を向けると、自信満々な顔をしているルピナがいた。
「ルピナ、陰の魔力」
「ああ、ルピナは元魔王だもんな。この中じゃ一番適任だ。タマモはどうだ?」
「この童とか? まあ、潜在能力は申し分無いが……」
「なら問題ないな。とっとと契約しろ」
「ヒッ⁉︎ わ、分かった、分かったからそう殺意を向けるで無い‼︎」
渋々と言った様子で、タマモがルピナに近づいて行く。ルピナは嬉しそうに両手をあげて喜んでいた。
「新しい、してんのーなの!」
魔王は四天王を探して仲間にする。その理由は自己防衛と言われていた。ルピナは元魔王なので、四天王がいなくて不安だったのかもしれない。
だが四天王と同列に扱われたのが気に入らないのか、タマモは不機嫌そうだ。グロウが殺気を込めた視線をタマモに向けて黙らせた。
「それじゃあ契約するぞ。ルピナは契約魔法使えるのか?」
「ううん、ルピナ使えるの、契約魔法じゃ無い。契約魔法、使えないの」
魔王は契約魔法と言うよりも、強制的に従わせる魔法を使って魔物を配下とする。お互いが同意した上で契約する魔法は、知らなくても不思議では無い。
「なら俺が契約魔法を発動させよう。二人とも、向かい合ってくれ」
グロウがそう言うと、タマモとルピナはお互い向き合う。グロウは二人の間に立って、契約魔法を発動させた。タマモとルピナの下に、光り輝く魔法陣が出現する。
「タマモはやり方知っているだろ? 後は頼む」
「ここに来て妾頼みか! はぁ、まあ良い。ではルピナとやら、片手を出すのじゃ」
諦めた様子で、タマモは片膝をつきルピナと視線を合わせる。ルピナは言われた通りにタマモへ手を差し出した。タマモはルピナの掌をとり、軽く手の甲に口付けする。その様子は、主人に忠誠を誓う騎士の姿を彷彿とさせた。寧ろ、この魔法は強制力がある分、騎士の忠誠よりも重いかもしれない。
タマモが口付けをすると、二人を包んでいた魔法陣が浮かび上がり、球体となって二人を包み込んだ。そして、直ぐに魔法陣が消えると何事も無かったかの様に何も変わらない二人がその場に立っていた。
エリカは怪訝な顔で二人を見つめる。
「特にお二人共、何処か変わった様子はない様ですが、まさか魔法が失敗したんですか?」
「いや、魔法は確かに成功したぞ。二人の手を見てみろ」
グロウに言われた通り、エリカは二人の手を見てみる。二人の手をよく見ると、二人の手には丁度タマモが口付け場所に魔法陣が浮かび上がっていた。
「これでお主が妾の主人じゃ。精々妾の主らしく、精進して励むのじゃぞ?」
「うん、頑張るの!」
ルピナが満面の笑みを浮かべて、手の甲に浮かぶ魔法陣を眺める。これで問題は解決した。後はギルドに報告するだけだと、グロウが帰り支度を始めた時、暫く黙って様子を見ていたナケアと、近くにいたエリカが笑顔でグロウの腕を掴んだ。
「さてグロウさん、タマモさんの問題が解決したんですから、そろそろ話してくれますよね?」
「お兄ちゃん、タマちゃんの言ってた500年前ってどう言う事? それにお兄ちゃん、ボクが産まれてから一度もあの森から出てないのに、どうやってタマちゃんを封印したの? それに、今はドラゴンって、どう言う意味?」
グロウの額から冷や汗が流れ落ちた。二人から刺さる視線が痛い。今日は睨まれてばかりだなと、グロウは苦笑して、どうやって言い訳しようか考えた。
例え元人間だった事がバレようと、自分の不注意で餓死した事だけは隠し通したい。絶対に墓まで持ち帰る覚悟だ。それ以外なら、この場で言ってしまっても問題ないだろう。頭の中で言い訳を並べると、グロウは二人に向き直った。
「タマモと話しすぎた様だな。いつか明かそうと思っていたが、丁度良いな。信じるかはお前たち次第だが、俺は元人間だ。今から500年前、ダンジョンの攻略中に命を落とし、気が付いたらドラゴンになっていた。エリカに教えていた魔法は、俺が生きていた時代の魔法だ」
出来るだけ軽い調子でグロウが告白すると、二人は突飛な話だと言うのに疑う様子もなく、グロウの言葉に頷いた。
「なるほど、だからグロウさんは私達の知らない魔法を知っていたんですね!」
「なんだ、そんな事だったんだ。ボク、てっきりお兄ちゃんが偽物かと思っちゃった」
「そんな事って、結構重要な事だと思うんだが……?」
グロウは簡単に信じた二人を心配になるも、ホッと胸を撫で下ろした。正直、二人が信じてくれないのなら、今の話を証明する事は出来ない。
タマモは魂を見る事が出来るが、ただの人は特殊な道具を使わなければ魂を観測する事が出来なかった。この場で証明する事は不可能は不可能だっただろう。
その後も二人から質問責めにあったグロウは、出来るだけ質問に答えて、何とか死因を隠し通したまま二人の信頼を得る事に成功したのだった。




