狭間の世界
40度を越える真夏日、汗をだらだらと流しながら1人の男は歩いていた。
「...暑い。いくらなんでも暑すぎるだろ...」
その男、月島 遠矢は近くの公園ベンチに寝転り考えていた。これからどうするかを。
「仕事がない。仕事がなけりゃ金もない。金がなけりゃ家もない」
ここまで考えた遠矢は一つの結果にたどり着いた。
「こりゃあれだな。詰みだな」
遠矢はそのまま目をつぶった。
「あーあ、どこでミスったかねー。はぁ、もうなにもかもがめんどくせーや」
遠矢は、眠り始めた。
数時間後、遠矢が目を開けるとそこには見たことのない空間が広がっていた。
「...えーと、これはなんだ?夢か。さてと、寝るか」
遠矢は再び寝ようと、その場に横になった。
「......『火炎』」
「あっつ!」
突然、遠矢の服が燃え始めた。
「......寝るのが悪い。......現実逃避よくない」
「はぁ、はぁ、はぁ」
遠矢が火を消し終えると、目の前に一人の少年が歩いてきた。
遠矢は、今の状況を把握するために頭をフル回転させた。
(火の元はなんだ?火の手になるような物を俺は携帯していない。このガキがなにか言ったような気がするがそれが関係あるのか?そもそもこのガキはどこから出てきた?いや待てよ、これは夢だからなにがあっても不思議じゃないのか。だがその場合なっとく、いかないことがあるな)
遠矢は燃えた服をみて、自分の腹部をみた。
(確かに熱かった。それはこの火傷の痕がものがたっている。夢なら、痛みなんてあるはずない。すなわち、ここから導きだせる答えはーーー)
遠矢は少年をみた。
「おいガキ。ここはどこだ?」
「......へぇ、この短時間で答えに行き着くんだ。......すごいじゃん」
「俺はここはどこかと聞いたんだ。答えろ、ガキ」
「......まぁいいや、教えてあげる。......それがぼくの役目だし。......ここは狭間の世界、君がいた世界と、もう一つの世界の狭間にある世界。......ここまでは大丈夫?」
「少し考えさせろ」
遠矢は目を閉じ、考えた。
(狭間の世界だと?意味不明もいいとこだ。まず、もう一つの世界ってなんだ?そこもわかんねぇな。こいつの言うことは何一つわからんな)
遠矢はゆっくりと目を開けた。
「......わかった?」
「お前の言うことが、何一つわからないということがわかったな。もう少し噛み砕いて話せ」
「......わかった。......君がここにきた理由から話すよ。......とりあえずついてきて」
遠矢は言われるがまま、少年についていった。
「......そう言えば自己紹介がまだだった。......ぼくは、イグナード。......君は?」
「月島 遠矢」
「......トーヤね。......よろしく」
「そんなことはどうでもいい。一体どこまでいくんだ?」
「......あれだよ」
イグナードの指差す先には一つの扉があった。そのままイグナードは、扉の中へと入っていった。
「とりあえずついていくしかないか」
トーヤも扉の中へと入った。
そこには、一つのテーブルに椅子が向かい合わせに二つ置いてあり、そのうちの一つにイグナードは座っていた。
「......座って」
「言われなくてもそのつもりだ」
遠矢も椅子に座り、足を組んだ。
「......なにが聞きたい?」
「そうだな、じゃあまずは俺がどうしてここにいるか、教えろ」
「......そのためにはここの説明をする。......ここは狭間の世界。......人間がここに来るには一つ条件がある」
「条件?それはなんだ?」
「......それは、人生を諦めること。......トーヤは諦めたでしょ?......だからここに来た」
「人生を諦める、ねぇ。確かに諦めたな」
イグナードの言葉に納得するトーヤ。
家から追い出され、何をするにしても家は必要だと思ったトーヤ。なのでトーヤは諦めていた。生きることを。
「......他には?」
「もう一つの世界ってのはなんだ?」
「......簡単に言うとファンタジー世界。......魔物もでるし、倒せばレベルも上がってステータスも上がる」
「ほう。おもしろそうだな」
「......だけど死んだらそこで終わり」
「死んだら天国とか地獄に行くのか?それとも、元の世界に行くのか?」
「......終わりは終わり。......永遠闇の中をさまよう」
「そりゃ怖いな。さすがに死にたくねぇ」
「......なんで?」
「は?」
イグナードは真顔でそう言った。
「......ここに来る人は皆そう言う。......なんで?......一度諦めた人生なのに、死にたいと思ったはずなのに。......なんで死にたくないの?」
「確かにそうだな。おかしいな。だったらもう一つの世界は本当はどういう場所なんだ?」
「......どういうこと?」
「お前はなにか隠してる。そもそもなぜ人生を諦めた奴も集める必要がある?別の世界に行ったところでまた諦めるのが関の山だ」
トーヤはイグナードをじっと見つめた。
イグナードは表情を一切変えようとしない。
「......その質問、君で二人目。......その質問の答えは君たち、人生を諦めた人に罰を与えるため」
「なるほどな。そうか、罰か」
「......他には?」
「もういい。ある程度わかった。後は自分でなんとかする。あ、ステータスとか言ったな?どうやって見るんだ?」
「......それにはまず職業を決めてもらう。戦士、魔道師、狙撃手、どれ?」
「それぞれの特徴を頼む」
「......戦士は攻撃、防御のバランスがとれていて人気。......魔道師は魔力が高く、魔物を一気に倒すことが出来る。......狙撃手は全部のステータスが満遍なく上がる。......どれ?」
「狙撃手の扱い雑じゃね?」
「......僕の把握してる範囲で狙撃手はいない」
「よし、狙撃手にする」
「......いいの?」
「いいさ。誰もいないんじゃ、おもしろそうじゃないか」
「......じゃあステータスを振り分けて」
「どういうことだ?」
「......神様があの質問をしたやつにはボーナスポイントをやれ、って言われた。......だからボーナスポイント1万7ポイント」
「すんげぇ微妙だな」
「......ここにきた人、一人につき1ポイントずつ上乗せ。......溜まりに溜まって1万7ポイント」
「へぇ、ちなみに俺は何人目?」
「......僕のところでは1万8人目」
「最初のやつ可哀想だな」
「......じゃあステータスの開きかた教える。......open the windowって言って」
「えらく発音いいな。オープン ザ ウィンドウ」
トーヤは言ったものの、現れる気配がない。
「おい、どういうことだ?」
「......君の発音が悪い」
「ちっ、めんどくせぇ仕様だな。open the window」
今度は完璧に発音した、しかし現れる気配がない。
「おい、どういうことだ?」
「......ふふ、ごめん、嘘。......普通にステータスと頭のなかで念じればいい」
「...ステータス」
すると、ゲームで見るような画面が目の前に現れた。
「ほう、これがステータスね」
名前 トーヤ
職業 狙撃手
レベル 1 次のレベルまで 10
ステータス
最大HP 20 最大MP 20
攻撃力 5 防御力 5(+2)
魔力 5 魔防力 5
素早さ 5(+1) 運 5
固有スキル
必中
使用可能スキル
なし
装備
右手 なし
左手 なし
上衣 布の服(防御+1)
下衣 布のズボン(防御+1)
頭部 なし
足 皮のくつ(素早さ+1)
「さて、やっぱやるならーー」
トーヤは迷わず運を選び、1万7ポイントすべて振り込んだ。
「......ありえない」
「やっぱやるなら極振りだな!」
名前 トーヤ
職業 狙撃手
レベル 1 次のレベルまで 10
ステータス
最大HP 20 最大MP 20
攻撃力 5 防御力 5(+2)
魔力 5 魔防力 5
素早さ 5(+1) 運 20019
「なるほどな、運に振ったら1で2あがるのか」
「......レベルが上がるとポイントが貰える。......その時も同じ要領やって。......これはぼくからのプレゼント狙撃手が装備できる武器」
そう言うとイグナードは拳銃みたいなものを渡してきた。
「......それはハンドガン。......弾は6発装填、連射可能。......店にいけば別の弾も売ってる。......店に売ってる弾なら三発まで。......その度にリロード必須」
「サンキュ」
トーヤは早速装備した。
「......じゃあこの先に進むと扉がある。......でると二度と戻って来られない。......もう聞くことはない?」
「あぁ。もうない」
遠矢はそのまま歩き始めた。
「じゃあな」
「......さよなら。......また、いつか」
イグナードの言葉が届く前に、トーヤは消えていた。