くすぐりボディーチェック その1
成田国際空港の第2ターミナル。出国ゲートへと続く保安検査場には、スーツケースを引いた旅行者たちが列を作っている。
佐伯優斗は搭乗券を握りしめ、その列に並んでいた。これから初めての海外一人旅に出る少年だ。行き先はバンコク。初めての海外に緊張して上の空だ。
「次の方、お進みください」
落ち着いた女性の声がして、優斗は顔を上げた。検査ブースの向こうに立っていたのは、美人な女性スタッフだった。年の頃は25、6歳だろうか。制服の紺色のベストが細いウエストを強調し、タイトなスカートから伸びる長い脚。髪は後ろで一つにまとめられ、凛とした横顔を見せている。
彼女の美貌に一瞬見とれていた優斗は、はっとして列を進んだ。ポケットの中の小銭やスマートフォンをトレイに出し、ゲートをくぐる。
金属探知機が、けたたましく鳴り響いた。
「あっ」
優斗はベルトを取り忘れたことに気付いた。父親から借りた革のベルトには、大きな金属製のバックルがついていたのだ。
「ごめんなさい、ベルトが」
優斗は慌ててバックルに手をかけたが、なぜか留め具が固く締まっていて外れない。指先が滑り、かえってバックルをぎゅっと押し込むような形になってしまった。苦笑いを浮かべながら、彼はもう一度挑戦する。しかし焦れば焦るほど、指はうまく動かない。
「お手伝いしましょうか?」
女性スタッフが近づいてきた。彼女は背が高く、優斗の目線とほとんど変わらない。すっと伸びた指が彼のベルトのバックルにかけられた。
その瞬間だった。
彼女の指先が、偶然、優斗のウエストの右側をかすめた。
「ひっ!」
優斗の口から、自分でも驚くような高い声が漏れた。彼はくすぐりに極端に弱い。妹とのじゃれ合いでも、脇腹をちょっと突かれただけで飛び上がるほどだった。
彼女の指が一瞬止まった。彼女が顔を上げ、優斗の目をじっと見つめる。その瞳の奥に、何か光るものがあったように見えた。
「お客様、もしかして……くすぐったいですか?」
優斗は顔を赤らめた。
「い、いえ、大丈夫です。自分でやりますから。」
再びバックルに手を伸ばしたが、彼女は手を引かなかった。
「遠慮なさらないでください。これも仕事ですから」
と言いながら、彼女の細い指が再びベルトを探る。今度は明らかに、意図的に。
彼女の指が優斗の腰のあたりを、くすぐるようにこちょこちょと動いた。
「うわっ!や、やめて…ははっ!」
優斗は思わず笑い声をあげてしまった。体をくねらせ、腰を引こうとする。しかし彼女の手は正確に彼の弱点を捉えていた。ウエストのくびれた部分、筋肉と骨の間のくすぐったいツボを、細い指先が這うように動く。
「あはははは!ちょ、ちょっと!はははは!」
優斗はトレイを載せたカウンターに手をつき、身をよじった。周囲の旅行者たちが好奇心の混じった目でちらちらと見ている。保安検査のスタッフが利用客のベルトを外す手伝いをしているだけにしか見えないだろう。だが、優斗にしてみれば、これはもう完全に「くすぐり」だった。
彼女の口元にはかすかな笑みが浮かんでいた。
「お客様、動かないでいただけますか?検査ができません。」
「だ、だって…ふふっ…はははっ!」
彼女の左手が優斗の腰を固定しつつ揉み込み、右手がベルトのバックルを外すという名目で、優斗の腹部を軽く撫で回す。くすぐったさに耐えきれず、彼は腹筋をぴくぴくと痙攣させた。
ようやくバックルが外れた。しかし、彼女はベルトを引き抜いた後も手を離さない。




