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第十七章 鮎川藍 3



    3



弓は藍が23全区長に立候補する決意を固めた時の「そうか、私がそうなるということはああなるということなんだ」というつぶやきを覚えていた。

それは23全区長になる父親が自殺するということを判って決断したという決心の話なんだろうが、同時に、あの劣勢と大幅な遅れにもかかわらず、負けるとはつゆほども思っていなかったということだ。

選挙中、信夫という人と世間話程度に「この選挙どうなりますかね」とランクルの中で問うたことがあった。

「仏教説話で、聖人が飢え・倒れて焚火で暖まる他なかった時に、熊と狐と兎が現れる話を知りませんか?畜生でもこの世界の中で上等なニンゲンと判ったから、熊は自慢の腕力を使って小動物を取ってきてあげる。狐は鼻や知恵を生かして木の実や魚を持ってくる。でも兎にはなんの能力もない。だからその燃え盛る火の中に自分を投じ、己を捧げるしかない。そういうことなんですね」

弓はこの信夫の話が薄気味悪く、以降自分から話しかけることはなかった。

それが信夫の機嫌を損ねたらどうしようと危惧していたが、杞憂だった。

信夫は藍が当選した後、姿を消した。

昨日の水曜は、両親と一緒に兄とディナーに出かけた。

やはり人の親だった、記憶喪失ということの兄が見つかると涙を流して喜んだ。

そして親は二人ともディナー中に娘と息子に謝罪をした。

でも「私の方が悪いんです!」「いや!俺の方が悪いんだ!」とケンカを始めた。

―やれやれ。

そして木曜、今、白山の平岩学園では夏休みを使って、ムーチャスのモニター役の生徒たちとミーティングを開始した。

対面に兄の音矢がいる。

隣には川嶋美香がいる。

―野原くん、来るって言ってたのに。

でも愛し合ったひとと敵であったひとと一緒にこうして夏休みの体育館にいる。

弓、16歳の夏、であった。

その野原ハヤテだが、斗美、亜夜子、みゃーこの首脳陣と洋二と計五人でペントハウスにいた。

「ああ、オレのパンターはプロビデンスの姿を記憶していた。それを要塞ホテルの生首連中に見せた。そうだよなぁ?」

シンクエ・クレザンザは洋二の脳内のみで『そうです』と返事した。

「みんなもやったことあるだろうけど、プロビデンスのことは話さないが、こいつらには画像はセーフであるという妙な職業倫理みたいなもんがある。皆のプロビデンスの画像を、17人分並べるだけで解決の糸口にはなると思う」

洋二の台詞に黙して語らない斗美だったが、エンマコンマ化した人類を配置するだけとは限らないのでこれから何かが起こると思っていた。

―ただ、それを云って何になる?

「鮎川洋二君、きみをプロビデンス対抗同盟の盟主としたい。そしてこれはあらゆる命令系統より上位に位置するものとしたい!如何?」

「賛成!」やら「異議なし!」と皆が賛同する。

「みなさん、お茶が入りましたよ」と云ったのはこより。

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