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第十六章 麻井延彦 5



     5



緑児はただその着信音が耳障りだったということもあったが、帰省しか姉を慰める言葉が見つからないので、どこかで打開策になろうと思っていたフシがある、だから代わりに着信に出た。

「姉ちゃん、麻井藍さんからだよ」

美香、ひったくる。

「笑えば」と力なく美香が云う。

「笑っている時間も惜しい。川嶋美香、23全副区長を命じます。よろしくお願い致します」

「!」

「いや、本当なんだよ。23全区長ってよく知らないから、当初の予定通りやってよ。、勿論ムーチャスは込みでね」

美香は悩んだ、但し、2秒。

―今大学の三回生だし、卒業するまではやっていいかなぁ。

「判った、やる。なんか気を紛らわせたいので忙しい方がいいから」

「じゃあ、このまま来てるプレスに発表するから、そっちにも行くと思うので、よろしくね」

藍が通話を終える。

隣にいた弓が「本当にいいの?」と問う。

「あのコも今回のことで成長したでしょう。で、弓さ、ムーチャス推進室の室長をやってもらうよ」

「ええええええええええええーーーーーーーー!」

と人気のない裏通路で絶叫する弓。

「全部責任を押し付けるつもりはない。代表の私と運営の川嶋美香とメイン企画の弓のパワーバランスが三派鼎立の状態にしたい。敵だった川嶋美香を入れるのもバランスを保つためさ」

そして藍は弓を伴い、自然と記者会見のような席になった選挙事務所で賀藤弓と川嶋美香の人事を発表した。

その後、そそくさと裏口から出ようとする。

「藍、付き合うよ」

洋二だった。

藍の様子がおかしいことに気づき、つけてきた。

「ここの自動車、なんでも使っていいらしい。ハヤテと同じく教習所行ってないけど、運転はできる。どこへ行くの?」と洋二が尋ねる。

「うち」

「中野、か」

「違う、親と弟がいるうち」

洋二は23全区長に当選した知らせに行くのかと思った。

そして藍は少しそわそわしている。

結局、演説台を外した例のランドクルーザーに乗ってしまった。

洋二は今回のエンマコンマ戦には参加したが、演説行脚に何もできなかったことを後ろめたく思っていたのかもしれない。

そのクルマが明治通りに入ったあたりで、着信音。

「いいよ、取んなよ。誰?」と洋二。

「弟」と藍。

藍はうん、とか、はいと

しか云わなかった。

数秒話して電話を切った。

「どうした?弟さんなんだって?」

「お父さん死んだって」

「!」

「あれだけやり込められた未成年の娘が東京でいちばん偉い地位についたら多分自殺するだろうなって、判っていたの、親子だからね。まさかここまで早いとはね。お母さんがおねえちゃんと会うとどうなるか判らないから来るなと言われた」

「そうか。お悔やみ申し上げます」

「洋ちゃん、多分、私多分、数十秒後に泣き始める。散々泣いたら、次は眠りこける。なにしろこの三日間で4時間くらいしか寝てないから。その後にお姫様だっことか恥ずかしくてしてもらいたくないので、私が起きるまでこの自動車で走り続けてくれるかな」

洋二は藍に云われた通りにした。

そしてこの役目が自分で良かったと思った心を恥じた。

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