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軍勢オンライン転生  作者: あの日の僕ら
変局の王都
43/50

43話 底力3

お仕事ちゅらいの……

 鉱人族──ドワーフの冒険者が口を開く。



「……直すも何も……魔力の塊をどう直すんだ……?」


「うん?」



 防具である聖炎装備を見せたが、鉱人はただただ疑問符を頭に浮かべるだけだ。この男は聖炎を見て魔力の塊と言ったが、魔力を感じられる者曰く空気中の魔力以外は一切合切含まれてらしい。見た目がいかにも非物質的なので魔法で造られたと勘違いしてもしょうがないだろう。

 だがこの感想を抱くということは魔力を感知する能力が無いか薄いか、ということになる。鬼姫達三人は魔力の無い世界出身と言うことで感知能力は皆無だが、この世界には魔力感知など多いわけでも無いがかといって別段珍しい能力でも無いのだ。

 要するにこの鉱人はこの距離の物質に対しての魔力感知能力が低いということになる。詳しい説明が必要だ。



「鍛冶師。これは魔力で造られたモノでは無い」


「……?失礼する」



 鉱人が鬼姫に近寄り手を取ってまじまじと観察する。魔法のある世界であり、才ある冒険者が魔力を物質化して戦うのはたまに見る光景だ。

 だが、光の籠手に手を触れてようやく気が付いた。籠手からは魔力を一切感じないのだ。これは不気味なことでもあるが、同時に鍛冶師としての血を騒がせた。未知の物質に受けた衝撃が全身に回りピリピリと指先を痺れさせる。



「……何だ?これは」


「由来はよく分からないのだがな。それで、鍛冶師の目で見て…どうだ?直せると思うか?」


「……分からない。分からないが……当てはある」



 鉱人は鬼姫に両手を荒い布を広げたテーブルに置かせると、腰の薄汚れたポーチから幾つかの品を取り出し始めた。

 何かの薬品に刷毛。正四角形の白い布。そして、黒い包帯としか形容出来ない細い布を次々に出していく。鉱人は目を細めながら口を開いて語りだした。



「……この物質は、極めて安定している。魔力で造られた武器を見たことがあるが、供給が途絶えれば直ぐに消えてしまうし、術者の気分次第でぐにぐにと姿を変える」



「……だが、これは違う。虚空に現れるという魔力の性質を持ちながらも、存在自体は鉄と同程度の強度を持つ。……腕の方は柔らかいな。面白い」



「……ああ、感動だ。魔力武器は魔術師共の範疇だと思っていたが、これなら俺も扱えそうだ。……本当に不思議な物質だな。猛炎の見た目でありながら陶器のような肌触り。見た目と特性が一致していないとは……」



 そう当然に饒舌になった鉱人が、薬品をベットリ付けた刷毛を聖炎のヒビに塗ろうと近付けた所で鬼姫が声を掛けた。寡黙な男がいきなりペラペラと喋りだしたのだ。呆気に取られていたが、薬品を承諾も無しに付けられると思わなかった。払う金の話もしていない。



「……ああ、すまない。つい熱くなってしまった」


「驚いたが、別段構わない。それでその薬品は何なんだ?」


「……これは()だ。割れた陶器等を修復するのに使う。それ以外にも仮組にも使える」


「糊、ね。それでヒビを埋めるのか。それで金のことだが…」


「……これは高いものではない。安心してくれ」



 それならば、と了承した鬼姫の腕に鉱人はペタペタと薬剤を塗りたくる。薄い白色のそれは聖炎の割れ目に入り込み間を塞いでいく。だが若干色味の違うことによる影響で、より目立つようになってしまった。そして四角形の白い布をヒビ割れが特に酷い部分へ貼り付けていく。

 見た目はかなり悪くなってしまったが、何もしなければ消失(ロスト)してしまうのだ。ゲーム内ならともかく現在は見た目などさして重要ではない。


 両腕に糊を塗り終わった鉱人はそれらを仕舞い、次は懐から別の何かを取り出した。それは黒い包帯状の布を束ねたもののように見える。

 鬼姫は疑問を口にした。



「鍛冶師、それは?」


「……これはある剣の鞘にするため用意していたもの。……この状態なら、ただの強靭な布キレに過ぎない」



 鉱人いわく別の依頼で調達してきたもので、呪われた魔剣の鞘にする為の材料だそうだ。何種類かの強靭な皮膚を持つ魔物の革を重ねて叩いて(なめ)す、という中々手間の掛かる品物らしい。

 封印の呪文を刻まなければ何の効果も無いらしいが、はたして先客の、別の依頼者に必要な物を使ってしまって良いのか、と鬼姫は鉱人に聞くが。



「……アイツの依頼は少しぐらい遅れても問題に成らん。それよりも俺は今この腕に興味があるのだ。……手を加えられるなら是非に加えたい」



 という答えが返ってくる。本人が良いと言っているなら、黒い包帯状の布に巻かれていく腕を黙って見詰めていた。両腕から白い炎が見えなくなるほどに厚く巻かれたその籠手は、指を動かす際にギチギチと音をたて若干動かしにくいこと以外に不調はない。そして鬼姫が感じる重量も変わらないのだ。


 ただ、()と比べれば料金はかなり高額であった。両腕に巻いただけでマッドが狩人として揃えた武具類の総額よりも少し高いのだ。

 鬼姫はおずおずとしながら三人のサイフを管理するマッドに問いかけるが、あっさりと許可が出た。これは鬼姫は普段から買い物をあまり行わないからというのもあるが、仲間の戦力向上に対して金に糸目はつけない、という理由が大きい。


 全ての処置が終わったと思われる鉱人が口を開く。



「……今施したこれは、製法の分からない発掘品に対して行う、簡易的な措置に過ぎない。……しばらくして馴染んだらまた処置を行う」


「鍛冶師の、助かった」


「……礼を言うことはない。本部長から任された者達だ。……それに、戦場で武器が壊れては堪らないし、面白い物を見せて貰った」



 夜も深い。鉱人──鍛冶師ダダンと明日会う約束をして別れた。ギルドの本部長とキャメロットの間で、影の女王に対する指揮をキャメロットが行うのだ。

 どうやったかキャメロットはギルドで一定の地位を得ているらしい。非戦闘民を護るということも大切であるが、それよりも提示された報酬がとても大きかった。戦いのモチベーションは十分である。

ヴォエ!(ストレスによる吐き気)

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