育てた攻略対象が可愛すぎる8
御機嫌よう。学園生活をより充実させるためのスパイス、それはサロン(ぶかつ)でございます。この学園のサロンでは各々その筋の方が集まり研鑽を積んだり、交友を深めたり致します。しかし、サロンを開くにはサロン室を確保しなければならないのです。サロン室は学園の方々に隠されておりまして、会員証を持っていなければ入らないのです。長い伝統のあるサロンであれば会員にその場所は引き継がれますが、新しく開くには自分で見つければなりません。
学園にも慣れてきたある日でした。
「行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
ガイ様は風紀院の会合と見廻りで外室されました。学園では主従離れて学ぶ事が多く、部屋に帰るまでお会いしない事もままあります。近頃は風紀院にも慣れてガイ様は放課後の見廻り活動を任されております。騎士団に入れば従者が居ない場合もありますので、普段の生活も一通りご自分でできる様になりました。ガイ様が独り立つ様子を誇らしく思う一方、なんとなく寂しく思うようになった今日この頃でございます。私はガイ様が見廻りに行かれている間、暇つぶしに学園の回廊を歩く様になりました。徘徊ではありませんよ?学園は石造りの建物で回廊には方々に立派な石像があり、眺めて歩くのも楽しいものです。ふと、一体の石像が気になり足が止まりました。
若い女性の像です。片手に重そうな本を開き、もう片手は頬に添えられ物憂げな表情を浮かべています。彼女も心が浮かばないのでしょうか。親近感から彼女の肩に手を起きました。近寄ってみますと、彼女の視線が本からややずれている様な気がします。その視線の先を追ってみますと突き当たりの角に置かれた石像が見えました。その石像は壮年の男性同士が頭をつきあわせ何か議論している様です。話すにしてはやけに近いような、構造上の問題でしょうか。もう一度、女性の物憂げな表情を見返します。もしかしてこの方は。
「枯れ専なのですか」
その時私は光に包まれ、気がつくと見知らぬ部屋の中に立っていました。黒い石で出来たとても天井の高い円形の部屋です。これまた長い窓から夜の光が部屋を照らしています。部屋の中央にはテーブルが1つ。石版が1つありました。どうやら部屋の取り扱い書の様ですね。
悩める乙女の部屋。この部屋は在学中に限り発見者が所有者となること。入室許可、勧誘に関して石版に要望を記載すれば自動的に部屋が対応すること。サロンの規約については所有者が自由に決められること。所有者の卒業とともに部屋は再封印されるが、卒業前に譲渡することで引継がれること。なお乙女を満足させると部屋がランクアップすること。
なるほど。これは良いところを見つけました。ガイ様も手がかからなくなって寂しく思っておりましたし。私も少しばかり学園を楽しんでも良いのではないでしょうか。私、実はずっとしたかった事があるのですよ!