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主人(あるじ)が可愛すぎるので仕方ありません  作者: 桃色みつる


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育てた攻略対象が可愛すぎる9

前話の続きになります。

乙女像ふじょしよりサロン室をいただきましたセルバートでございます。貴女にこの部屋を託された理由はその視線からお察し致します。必ずやご満足いただけるよう慢心しますとも。

学園生活も1年が経とうとする頃には私のサロンも会員が増えてまいりました。なんと楽なことに勧誘は石像が自動的に行ってくれます。私の指定した条件は主に『夜に回廊で主人をなりより心配して溜め息をついた従者』です。他、色々と厳しい条件を決めましたが居るものですね。さぁ悩める従者の楽しい夜会を行いましょう。今日も新しい仲間がいらっしゃいましたよ。


「っ!なんだここは」

そう叫んだのは回廊にいたところ強制召喚された従者の方です。

「ようこそ【黒すぐりの会】へ」

サロンを代表して私が声をかけます。サロン名ですが当初はもっとこうストレートな名前だったのですが会員達に恥ずかしいと反対されまして、この名前になりました。今は私が恥ずかしい思いをしております。

「なんだその会は・・」

「悩める従者の集いですよ」

「そんな格好でか」

彼は胡乱げな表情を浮かべ、こちらを見回しました。

私達の服装は真っ黒いローブを羽織り、各々が目元まであるレースのついた帽子を被っております。帽子は男性用、女性用と様々。共通して帽子の正面に名札が付けられ、花や果物など通り名が書かれています。そして帽子には名前にちなんだ飾りが付いています。可愛いでしょう?手芸が得意な方が作ってくださったんです。私の場合は黒すぐりです。一見して個人が分からない様子の男女が会談しているのですから怪しいでしょうね。匿名とした方が話しやすいですし、ほら何か後ろ暗い事をしている様で楽しくありませんか?しかし、このままでは話が進みませんので私だけシルクハットのレースを上げ顔を見せます。まぁ、会員同士は誰だか分かっているのです問題ありません。

彼は少し驚いた様子です。

「ヒュルベック伯爵子息の従者か?」

「いかにも。貴女はシェザン王子の従者様でハルト子爵息リード様ですね。このサロンでは皆さん身分は平等でございますのでご容赦下さい」

なんとなかなかの大物が釣れました。彼はリード・ハルト、子爵家の方で王子の美しいと評判の従者ですね。なんと生粋の貴族様です。もちろん彼も乙女ゲームの攻略対象です。さらさらの銀髪と鋭い紫の瞳が麗しい方です。わぉマジで大物ではないですか。

「呪いの従者と言われてるお前が代表とは怪しい会にしか思えないんだが」

「呪術は得意ですけど、本会の趣旨と関係ありませんのでご心配なさらず。むしろ呪術でこの部屋は防音覗き見禁止の内緒話にはもってこいの密室でございますよ」

私、他の魔法は不得意ですが呪いには一家言ございます。と言いましてもガイ様のお部屋に防音、窓には覗き見防止の術を色々かけましたり。護身の術など安全なものばかりです。ただガイ様のお部屋が難攻不落の秘密部屋となり、ガイ様の部屋に不埒な思いで近づいた方が下痢を引き起こしたため少し私が悪目立ちしただけなのです。全てはガイ様が健やかに学園生活を送るためでございます。ちゃんとガイ様には許可をとってありますしね。

懐かしいですね。施術後ガイ様との会話ですとか。『ガイ様、これで覗き見聞き耳のご心配は要りません。お部屋ではご存分にどうぞ』父達にはガイ様の下半身についても監視役を言い渡されましたが、守る気はさらさらありません。ガイ様がお心に決めた方なら既成事実も辞さない所存でございました。ぽかんとするガイ様の可愛いこと。分かりずらかったでしょうか。にっこりウィンクで茶化しましょう。イメージははちょっとエッチな年上お姉さんです。

『どんなに激しく愛しあってもいいんですからね』

ガイ様といえば真っ赤になりまして『お、お前はまたそう俺をからかってっ!』とおっしゃいました。ガイ様は顔を赤くして怒られました。まだそういう話題が恥ずかしいお年頃なのですねよね。その後、ガイ様に激しくされた第1号になりました。いやはや、若い勢いは恐いものです。ちなみにまだ2号は居ません。もう奥手なんですから。愛しい瞑想は置いといて、リード様にこの会に入ってもらわなくてはいけませんね。


「それではリード様がいらっしゃいましたので会規を言ってみましょう!」


一つ、主人を愛すること

二つ、同士の言葉に耳を傾けること

三つ、サロンで見聞きした物事は許可なき限り他言無用であること


「・・・私には用がない会だな」

リード様はぴんときていないご様子です。まずいです、こんな大きい魚にがせませんよ!

「そんな事ないです!日ごろ思っている事何でも話して良いのですよ。例えばガイ様が寝癖がうまくなおせなくていつもより眉間にしわがよっていたのですけど、少年の中に大人っぽい色気を感じて私の天使の素晴らしさを再認識したとか!その髪型も似合うと申し上げた時の怒ったような照れた顔の可愛らしいこと!もう思春期になって可愛さが致死量なんです」

今朝のガイ様を思い出しつい興奮してしまいました。早口になりましたがリード様は聞き取れたでしょうか。ガイ様は可愛いんですよ?大事な事なのでもう一度、ガイ様はとても可愛らしい!!

「・・・・・帰っていいか?セルバート、あの無骨な男が天使に見えるなら医者にかかった方がいいぞ」

「呪いますよ?」

「すまなかった」

なんと、なんとした事でしょう!ガイ様の可愛らしさが伝わらないなんて。ガイ様申し訳ございません、セルバートの言葉が拙いばかりに。

そこで優雅に手を挙げる背の高い女性が居ました。

「はい、鈴蘭さん」

「変態黒すぐり様に代わりまして副会長の私が進行致します。リード様、お茶をお注ぎしたので、よろしければしばらくご見学下さいませ」

さすが私の右腕、頼もしい。鈴蘭さんは清楚な花を咲の様にたおやかですが、ざっくり毒をはくしっかり者です。しかし進行役を取られてしまいました。寂しいです。

リード様も抵抗も諦めたのか席につかれましたので、鈴蘭さんが進行して下さいます。

「それでは何か議題のある方はいらっしゃいますか?」

小柄な男性が手をあげました。

「露草さん。今日の主人と議案をどうぞ」

この会では議案提示の前に今日の主人について一言添えるのが通例です。

「え、えっと。坊ちゃまは今日も難しい本を険しい顔で読んでいたんですが、僕がお茶を淹れると笑って美味しいと・・僕とても嬉しくて」

恥ずかしがり屋の露草さん。彼はいつもたどたどしい語り方ですが、声に嬉しさがにじんでおります。

「ツン主人の微笑とかなんて国宝︎!!うわ美少年達のささやかな安らぎとかなにそれたぎるっ!!」

真っ先に奇声を発したのは小柄な女性の蛇苺さんです。お気持ちは分かりますよ。露草さんは気弱そうな少年で、彼の主人は神経質で気難し屋で有名な眼鏡の少年です。2人とも幼い感じの可愛らしい少年です。うん、いいショタカップリングですよね。

普段であれば何を発言しても良いのですが、今日は見学の方がいらっしゃいます。すぐさま鈴蘭さんが彼女の口を物理的に塞ぎます。初心者には些か蛇苺さんのテンションは高すぎすからね。蛇苺さんは転生腐女子でしょう。鈴蘭さんそれ息できてます?

他のメンバーはそんななかでも気にせず口々に素敵な主従ですねと褒めます。特別な事などない日常のささやかな幸せこそ日頃の信頼関係の賜物でしょう。

素敵な惚気話に心を温め、次は本題に入ります。露草さんは心配そうに話してくれました。

「実は坊っちゃまはずっとお勉強ばかりされて、人と話すという事が苦手なのです。緊張と考え過ぎて言葉が出なくなってしまう様子でして。・・どうにか克服出来る知恵をお貸し頂けないでしょうか」

露草さんは消え入りそうな弱々しい声でしめました。本当に困っている様です。露草さんの主人が気難しいと思われるのはそこらへんに理由がありそうですね。皆んなで露草さんと主人をお助けしましょう!一先ず何かきっかけを作りたいですね。ちょっと露草さんに聞いてみましょう。手を挙げます。

「好きな物など共通の話題があれば話しやすいと思うのですが、主人様は何がお好きですか?」

「好きなものですか・・お勉強と紅茶と。あと、その・・・お花や草木とか」

露草さんは少し伺う様に小声で答えます。上流階級では花や草木、庭園の指示は女主人の嗜みです。男性は狩りや遠乗りなどが一般的なので主人の世間体を気にしたのでしょう。

そこで背の高い男性が手を挙げました。牡丹さんはダンディーな正に執事といったおじ様です。

「花や草木など美しいものを愛でられる事は自然な事かと思います。露草殿の主人はその趣味を隠されておいでかな?」

「は、はい。ご実家には小さな温室がありますが、ここでは部屋の中に鉢植えをいくつか」

牡丹さんがベールの中で髭を撫でます。こらはご機嫌が良いときの癖なのできっと何か良い事を思いついてくださったのでしょう。

「温室をお持ちとはなかなか好事家な方ですな。園芸サロンには入会されないのですか?」

「ま、まさか!坊っちゃまも園芸サロンの庭園に興味はある様ですが、あのサロンは名家のお嬢様方ばかりでとても入れないですよ」

「ふむ」

牡丹さんが楽しそうに頷きます。ちなみに牡丹さんの主人は園芸サロンの幹部をしてらっしゃいます。

「よろしければ今度の庭園での茶会にご招待しましょう」

「え?!よ、よろしいんですか僕も坊っちゃまも男ですよ??」

園芸サロンは女性しかいらっしゃらないので女性限定のサロンと思われています。男性がゲストで呼ばれるのも珍しい事なのです。

「お嬢様が最近新しい会員を探しておりまして。出来れば今までにない様な方がよろしいそうで」

「で、でも。急にそんな!庭園に入れるなら坊っちゃまはとても喜びますけど、いきなり名家のお嬢様方の相手などできませんよ」

人付き合いが苦手なのに年頃の女子集団いきなりラスボス戦ですね。流石に露草さんと主人が可哀相です。手を挙げます。

「どなたか、露草さんの主人が一緒にいて心強い方は他に居ないのですか?」

「学園にはそこまで仲の良いお友達は居ませんし・・」

「それでは憧れている方とか・・」

「憧れですか?・・・ああっ!!」

私の顔を見て露草さんは手を叩きました。

「坊っちゃまはガイ様に憧れているんです。無口で硬派な近寄りがたいけれど、皆に慕われてなんて凄い方だと言っています」

「ふふふ!!うちのガイ様ですからそれほどでもありますけどね!」

ついガイ様を褒められ嬉しくなってしまいました。しかしこれは藪へびというやつでは・・・

牡丹さんが頷いています。

「それでは黒すぐり様の主人も呼びましょうかな。お嬢様もすぐ頷かれましょう。お二人とも主従揃って見目麗しく品行方正で上級生にも人気がありますから」

おや、牡丹さんさり気なく私達も褒めましたけど何が企んでらっしゃるんでしょうか。しかし、庭園のお茶会私も行けるなら俄然やる気が出ます。お庭も素晴らしければ、あの茶会のお菓子は妖精の国の味がするとか学園七不思議の一つになっています。是非ご相伴にあずかりたいものです。

「楽しみですね」

もちろん行きますよね?という意味も込め、露草さんに笑いかけます。

「はい!」

元気よく返してくれる露草さん。はぁ、梅雨が晴れた様な爽やかな可愛らしさです。蛇苺さんが悔しそうにハンカチをかじっています。茶会で我々を見れないのが悔しいのでしょう。後で一部始終教えてあげますかね。

リード様は結局入会して下さりました。では新入の儀式と行きましょう。

「おい、何を飲ませる気だ︎」

「新入りはこれを飲むのが習わしなのです」

「だから何なのだその液体は︎」

「素直になれるジュースですよ。これを飲んで主人の好きなところを10言うのが決まりです。ふふふふふふ」

「っ!!!誰がそんなもの飲むか」

「ふふふ。恥ずかしいのは最初だけですから」

「や、やめろぶっぐぶ!!」

ちなみに主人の好きなところを言えた時間でサロンの序列が決まります。私が一番、次に鈴蘭さんと蛇苺さんです。鈴蘭さんもわりとアレな方なんですよ。ちなみにリード様はだいぶ下でした。まったく、意地っ張りさんですね。

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