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主人(あるじ)が可愛すぎるので仕方ありません  作者: 桃色みつる


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育てた攻略対象が可愛すぎる12

御機嫌よう。セルバートは誠に久しぶりに暇でございます。

昨日からガイ様がクリスチャーノ様のお誕生日祝いに森へお出かけされまして、私はお留守番なのです。悲しきかな、私は武芸はさっぱりでして足手まといにしかならないのでついていけません。良いんです、家事特化型従者ですもん。お部屋もぴかぴか、お洋服もアイロンかけでパリッパリ。今日は私の講義もないですし、もうやる事が無いのですけれど・・・。

部屋でぼんやりお茶を飲んでいますとドアをノックされました。お客様の様です。 ドアを開けると赤銅色の髪の優男が立っていました。

「ご主人は旅行だってな。今日お前講義ないだろ、たまには街に行かないか」

彼はジェイク・ブラウン。懐かしいかな入学当初、初めて私の呪いにかかった方です。ガイ様の部屋に侵入しようとしたのは主人の命で彼の本意ではありませんでしたが、呪いにかかった彼のおかげで以降不届き者は出なくなりました。どうも初期の呪いは効力が強すぎまして、脱水症状でジェイクが死にかけたのは懐い思い出です。お陰様で私は呪いの従者と呼ばれ周囲に避けられております。ジェイクはサロン以外では私の唯一の友人でしょう。見かけは女性を取っ替え引っ替えしている遊び人に見えますが、彼は呪いをかけた私と友人になってくれるほど人の良い方なのです。

「あ、今日は金多めに用意しろよ」

「恐喝っ!?」

なんと思っていましたら私大金を出すよう言われてしまいました。悲しいです、彼は友達だと思っていましたのに。しかし着崩した私服に派手な風貌の彼はちょっと格好良いチンピラに見えます。恐喝似合いますねジェイク。

ジェイクが美しいフォームで私にチョップしました。

痛い。痛いですよ。

「バーカ!今日はせっかくいい所連れてってやろうってのに」

「うぅ痛いですよ・・・」

「どうせお前給金貰っても主人に貢いでんだけだろ。たまには自分に使えよ」

「言い方がよろしくない。私はただ美味しそうにお菓子を頬張るガイ様が見たいのです」

「餌付けか」

なんのかんのと話ながら外出の準備を済ませます。ジェイクは口は悪いですがこの前も美味しいお菓子屋を教えてくれたり、面倒見が良いのです。今日はどこへ行くのでしょうか、楽しみですね。


それから私とジェイクは街へ出かけランチに入った店で女性をナンパし、行きつけの雑貨屋で女性店員をナンパし、休もうと立寄った噴水広場でナンパし・・・

夕食を食べに入った食堂で先ほどまで談笑していたウェイトレスが去った後、私はとうとう聞いてみたくなりました。

「ジェイク。今日は特段女性に話しかけるんですね」

ジェイクは飲んでいたエールを置くとまぁなと肩をすくめます。

今までにもジェイクが出かけ先で女性に声をかけることはありましたが、こんなに頻繁なことはありませんでした。何ですか軟派王とか目指してるんですか。

眉を寄せた私の顔を頬杖をついたジェイクはにやけた顔で見上げます。

「で、どんな子が好みだった?」

「はぁ・・どのと言われても。だいたい今日はどういう了見なんです?」

そういえば今日声をかけた女性は皆さんタイプが違いましたね。私の好みを知る為に声をかけていたのでしょうか。

「お前18になったのに全然女っ気無いからさ、娼館に連れてこうと思ったんだがどこが良いかと思ってな」

「娼館・・・ですか」

ジェイクは選べるくらい何軒も娼館に通っているのでしょうか。

まぁそこは置いときまして、私も18歳と成人とみなされる歳になりました。周囲では結婚する方も多く、また異性を強く意識する年頃でもあります。妻や恋人が居ない男性は娼館に通う事も珍しくありません。

「お前のご主人様も子供じゃないんだ。お前だってもう楽しんで良いんじゃないか。・・・別に娼館じゃなくたって今日会った女の子でも、俺が良い娘を紹介したっていい」

「はぁ、なんでまた突然?」

へらへらとしていたジェイクですが、私の問いに口をモゴモゴさせます。時たま言いづらい事が有るとジェイクはえーとかうーとか言ってはぐらかすのです。まったく煮え切らない男ですね。こういう時はさっさと先を促すに限ります。

「なんですか。言って下さいよ」

「・・俺は。お前の人生が主人で終わっちまうのが嫌なんだ」

私はエールのジョッキを置き、両手でジェイクの頭を手荒くかきまぜる事にしました。

「っわと!おいやめろ」

「まったく可愛い奴ですよジェイク」

「痛いって!・・お前の可愛い主人にはもっと優しく撫でてんじゃんか」

「はぁ?チワワとタワシの差です仕方ないでしょ」

「酷っ!あれがチワワとかお前の目が心配だ」

「私は貴方が仕事中でもモジモジしてしくじらないか心配ですよ」

「するかバカ!」

詳しく聞いた事はありませんが、ジェイクは家宅侵入未遂が有りますので従者とはいえ裏方に近いお仕事なのだと思います。彼は確かに武芸に秀でていますが、こんなお人好しに勤まるんでしょうか。

「本当にへまして死なないでくださいよ」

「っさいな・・そんなんお前に関係ないだろ」

「冷たいですね。貴方が死んだら私哀しいですもん」

「・・・・・本当に?」

「本当に」

私の手を払ったジェイクはエールのジョッキを煽ります。隠れた彼の唇が少し微笑んでいる気がしました。彼は以外と照れ屋なのです。

エールを飲み終わった彼は立ち上がり、満足そうに息を一つ着きました。

「さて、帰るか」

「え、どこに?」

「は?寮だろ。なんかお前に無理やり女あてがうのもなって気がしてきた」

ここまで反日以上振り回して優柔不断な男です。お酒が回ったのか少しだけふらついた彼の肩を支え、身を寄せます。近くで見ると整った顔立ちをしていますね、なんだか面白くて彼の耳元で笑ってしまいました。ぴくりと跳ねる肩が可愛らしい。頬を寄せ合うと彼の熱を感じます。酔っ払いにはちゃんと聞こえるように耳元でお話ししてあげませんとね。

「ジェイクの嘘つき・・・良い所。連れてって下さるんでしょ?」

私から離れたジェイクは耳を抑えるとしゃがみ込みました。

「お前やっぱり嫌いだ!」

「酷い!貴方が連れ回したのに」

「もう俺、今日は糸目のおかっぱ娘と寝るから!」

「気持ち悪っ!嫌がらせですか!?」

「煩え。お前なんか娼館のお姉様に食われちまえ」

ぶつくさ言うジェイクを急き立て娼館へ向かいます。やがて夜も人通りの多い通りにやって来ました。並ぶ華やかな建物の中で、奥まった所にある立派な建物の前に立ちます。

「ずいぶんと立派な館ですね」

「お前の誕生祝いだからな。なぁ・・」

「なんです?」

「本当にいいのか?」

まだはっきりしないジェイクの肩を叩き、先へ促します。豪華な玄関をくぐりながら私は囁くように答えました。

「いいんです。頃合いですよ」

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