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西園寺のゲームスタートと同時に私の生活も開始。

私の開始地点は入学式前日、22時。

もう歯磨きまで終わって何もする必要のないフリータイムだ。

美容と健康のためにそろそろ寝る必要があるぐらいか。

(そんなことを知ったのもループ始めてからだっけ。)

新しく人生が始まったと気付いてから、色々前世よりよくしようとした。

勿論美容とかも。綺麗は作れるんです、素顔レベルから。

それでもループできるようになってから暇になって色々調べれば

まだまだ私の知らないことが沢山あった。

何のチートもない転生、と最初は思ったものの、

前世を覚えているというだけで一種のチートかもしれない、とは思う。

まあ、代償はあったが。

何分成熟した人間の精神が入っているせいで

小さな頃から何でもできた。何でも出来過ぎてしまった。

それを不気味に思った両親との溝に気付かないで小学校卒業式の日。

「ねぇ、一葉。」

家に帰る道、隣を歩いていた母がぼそりと言った。

「私ね、新しい赤ちゃんができたの。」


「もうすぐ生まれるのよ。」

「可愛い、男の子。名前は遼にしようって決めてる。」

「それでね、産休育休をとってるから私はこれから家にいることになるのだけれど・・・。」


「一葉、一人暮らしする気はない?」


母のお腹が大きくなっている事には気づいていた。

それが太っているわけでないのも気付いていた。

理由を、父には言っていることも、おそらくとはいえ、気づいていた。

でも、そう。

私たちが、いや

二人と私の溝がここまで大きくなっていることには

これっぽっちも気付いていなかった。

そつがなく暮らしてきたつもりだった。

自分でできることは、なんでもしてきた。

手間を欠かせないよう、あまり甘えようとしなかった。

でも、そんなことが私と彼らを疎遠にしてるなんて

私は全く気付いていなかった。

初めは、適当な親戚の家に移ってもらおうかと思っていた、と母は言う。

でもそれだとね、とどこか濁らせて母は言う。

お父さんはそっちにすんでいることになっているからよろしくね。

一人でも、できるよね?携帯電話持たせておくから何かあったらそこで。

淡々と言う母の横顔は、疲れていた。


携帯のメールボックスを確認する。

親、と書かれたフォルダは消してもいないのに

この6年、ほとんどメールが着ていない。

西園寺の事を馬鹿、と罵るが私も人の事を言えない。

自分の親すら意志疎通出来なかった私こそ、大馬鹿者だ。

だって彼らは、中学の入学式にも卒業式にも

そして明日の高校の入学式にも、来ないのだから。


「・・・毎回、鬱になっちゃうよなぁ、もう。」

ループ開始はここだから、もうどうにもならないのについ考えてしまう。

外から見たら、酷い親かもしれないが、

ちゃんと私の未来のため必要なもの・・・学費など諸々は

出してくれているし、それ以外に使えるよう仕送りもくれる。

酷いのは、私の方だ。

「んっん~。大丈夫、私は平気。」

一人で生きていける能力と履歴の為に。

西園寺がハッピーエンドを迎えた時のために。

私は今回も頑張る。


私が通う高校は、この地域一番の進学校だ。

だからなのかなんなのか、入学式の始まる一時間前なのにそれなりに人がいる。

すでに仲良しグループで話している子、勉強してる子。

色々いるが、私はとりあえず席に座る。

席は詰めて前からお願いします、と案内の生徒に言われたので

前の席に座る。そして勉強しようと鞄を開けて・・・

筆箱が飛び出て落ちてしまった。

「あ・・・。」

取ろうとする前に、誰かが拾ってくれた。

「あ、ありがと・・・!?」

にこやかに受取ろうと顔をあげて・・・固まってしまった。

チョットマテ、ナンデオマエガココニイル。

「え、ヒント・・・?」

お前、こんな時間に来ることなかっただろ、西園寺ぃ!?

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