↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/3

上

「ねえ、お兄ちゃん。昨日商店街で隣にいた子・・・誰?」

「お、落ち着け、美香・・・!違うんだ!」

校舎裏。時には告白、時には呼び出し。

様々なイベントの舞台となるここは今。

修羅場になろうとしていた。

光を失った目で小学生のような少女が青年を壁際に追い詰めて話している。

手には肉切り包丁。誰かが見たら間違いなく止めに入るか即通報ものだ。

(まあ、私はしないけどね。)

目の前で繰り広げられている昼ドラを、見つからないように見守りつつ私は溜め息をついた。

(今回も駄目か。説教確定だね。)

「美香、聞いてくれ、彼女は・・・!」

「もう、いいよ。」

俯いた少女の表情は窺えない。でも、どこか穏やかな口調に青年はほっと息を吐く。

「ああ、わかってくれたか。」

へらりと笑う青年は次の瞬間自分の勘違いを思い知らされる。

「うん。お兄ちゃん、死んで。」

顔をあげた少女は可憐に微笑んで・・・手に持った包丁を目の前の青年に振り下ろした。

そして私の世界も白くなりつつある。

またやり直すのだ、始まりの時から。

(ホント・・・最悪。)

そして私は今回はどうあの馬鹿に言い聞かせればいいか考えながら目を閉じた。


「・・・何故に!?Why!?今回なんで俺死んだの!?」

次に目を開ければ、アニメのラスボス戦のような不思議空間と

目の前にいるどうしようもないお馬鹿があたふたしている姿が目に入る。

すごくテンションが下がる。

「・・・・・・。いや、どう考えてもあれはアウトでしょ。」

多分私の視線は原子も止まる程の温度だったろう。

このどうかんがえても馬鹿としかいいようのない男はどうしてさっきの出来事になったか

わからないと申すのである。

もうこんな感じの事を1358回も繰り返しておきながら。

「いや、だって・・・本当なんでた?朱莉とはなんもなかったのに。」

頭を捻る馬鹿は何もわかっていないようだ。

これがループ一回目で『ギャルゲーマスターの俺に資格はない(キリッ)』とか

ほざいていたやつの台詞だろうか。ギャルゲーマスター()すぎる。

「まぁ、今回はいい所まで行ってたけどね。」

ちらりと手元の本を確認して少しほっとする。

最期こそああなったが、好感度といい選択肢といい今回はいい線いっていた。

最初なんか目も当てられないバッドエンドだった。

攻略対象どころか親友にすら見捨てられるとか、ありえない。

「マジで!?さすが俺!」

ひゃっほーと喜ぶお馬鹿。すごく殴りたい。

でもこいつのサポートを止めるわけにはいかない。

こいつがハッピーエンドに行かないと私の幸福な未来は訪れないのだ。

だから私は今回も攻略ヒント係としてこの馬鹿にアドバイスをする。


私は千条(センジョウ) 一葉(カズハ)。どこにでもいる普通の転生系攻略ヒント係だ。

前世は至って普通のブラック企業の社畜。神様にも会わず普通に今の生を受け、

何故か高校生になってループを開始するはめとなる。

ループ開始時は驚いた。学校帰りにいきなり不思議空間にいたのだから。

あたふたする私の前に、今の相棒というべき本が現れた。

『西園寺(サイオンジ) 友則(トモノリ) ハッピーエンド 攻略のすゝめ』

・・・夢かと思った。

チュートリアルのごとく最初のページには説明が載っていた。

まとめると

・西園寺 友則がハッピーエンドに行かないとループから脱出できない。

・私は西園寺 友則がバッドエンド(およびノーマルエンド)を迎えた時

攻略ヒントを教える助っ人

・この本はチャート式に西園寺 友則が行った行動を表示、及びその交友関係の好感度など

攻略の役に立ちそうなものがのっている。

・なお、この本の内容は西園寺には見えない。

・ループ開始地点は高校入学時点である。

などなど。

要するに私は西園寺 友則という馬鹿が主人公のギャルゲーに巻き込まれた憐れな犠牲者だ。

まあ、ループ序盤は色々楽しんだが。

色々青い春を経験した・・・馬鹿がハッピーエンド行かないと全部無駄だが。


「というか姿形はそれなりなんだから適当な女の子引っ掛けてさっさとハッピーエンド行けばいいじゃない・・・。」

不幸中の幸いか、恐ろしく頭の悪い鈍感ギャルゲーマスター()様は

見た目だけはいい。平凡平凡言ってても結局ギャルゲーの主人公に不細工がいないようなものか。

周回プレイのお蔭か勉強もかなり出来るのだから妥協すればあっさりハッピーエンド行けそうなものなのに。

「そんな愛のないハッピーエンド嫌だああああ!」

これだ。それに付き合わされる私の気持ちになって欲しい。

いいじゃないか、愛なんてなくても。

昔の偉い人は言ったよ。「愛などいらぬ!」って。名言だね。

「せめて攻略する人間は絞れよ。」

さらにこれ。この男、ころころ攻略しようとする女の子を替える。

せめて一人に絞ればいずれ攻略出来そうなものなのに何故か替える。

というかこの色好みな性格もバッドエンド行きの原因ではなかろうか。

せめてそういう移り気なところは一人ぐらいちゃんと攻略してからにしろといいたい。

攻略出来たらループ終わるわけだが。

「ヒントもこっちくればわかるって!可愛い女の子いっぱいいるんだぜ!?選べないよ!」

余談だが私はこいつに同じように学校に通っていることも本名も明かしていない。

初めて会ったときの自己紹介で『攻略ヒントです。』と言ったのが

どうやら名前と勘違いさせたらしく、正直訂正するのもめんどくさいのでそのままにしている。

そして出会ったら面倒なので出くわさないよう徹底的に避けている。

ちなみに女の子が可愛いのは事実だ。

正ヒロイン級の可愛い子からモブモブしい可愛さ、属性も各種取り揃えている。

さすがギャルゲーのような世界と感嘆してしまうほどだ。

男もまあ、それなりにかっこいいのだが、基本的にギャルゲーで出てきそうな感じの男のみ、と言っておこう。男の娘もいる。

「それになんかこう・・・ときめくような子がいないんだよね・・・。」

・・・こいつもう一回刺されて来ればいいのに。

もう掘られればいいのに。そして目覚めろ。

大丈夫さ、きっとそれもハッピーエンドだって。

「いや、あのそうじゃなくって、えーっと・・・ぐっとくる子がいないんだよ!」

私の冷めた視線に何か感じ取ったのか、馬鹿は慌てて取り繕ってくる。

が、言ってることはさらに最低だ。

こいつにかかったら那由他まで繰り返してもハッピーエンドに行かない気がする。

いっそ打ち切りたい。

「もういい加減次行く?」

溜め息すらでないどんよりを通り越していっそ清々しい気分で私は馬鹿に聞く。

「おー。頼む頼む。」

へらへら笑う馬鹿はきっと今回も何も考えてない。

なんというか、こいつが誰かを本気に好きにならないとこのループは終わらないのでは?

とふと私は思った。

(まあ、そんな事、どうでもいいか。)

「じゃあね、西園寺 友則。ゲームスタート。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。