ミダ祭り
雪が降らなくなって、風が暖かくなってきた。
あちこちで雪が溶け、草花が顔を出している。
道に積もっていた雪はすっかりどかされ、商人もやって来るようになった。
このごろ外を歩いていると、細い枝をした木に赤い小さな花が咲いている。
「ミダ」と呼ばれるその花が咲くと、北の国では一年が始まるそうだ。
他の土地より遅いそれを祝って、この辺りでは「ミダ祭り」が行われるという。
その準備で最近は仕事がドンと増えた。
星誕祭の時と同じような飾りつけもあるが、何より街中に屋台という、骨組みと布だけの簡単な店を建てるのだ。
売るのは主に食べ物で、それぞれの家で違うものを毎年準備するそうだ。
冬の終わりに食材が減ってくる頃、街の真ん中で食料を交換し合っていたのが始まりらしい。
最近ではこの祭りに、よそからやって来る商人が参加したり、雪の中でしか作れない食材を求めて来る者も増えて、いっそう賑やかになったという。
組合ではその護衛の仕事が増えて来たので、俺もそろそろ移動する頃合いだ。
などと考えながら旅立つ準備をしていたら、組合で突然フランに呼ばれた。
また国へ戻るつもりで、寄り道せずに真っすぐ南東へ向かいたいらしい。
だが運が悪いのか、同行させてもらえる者がいないので、護衛の依頼をしに来たのだ。
二つ返事で受けた。
フランには散々世話になったし、恩を返すいい機会だ。
絶対とは言えないが、出来る限り守ると約束した。




