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螺旋の輪廻  作者: 才
18/22

-06

油断した。


まさかアレがあのような行動を取るとは思わなかった。


殴られた頭を押さえた手に違和感を感じ、右手を見る。人差指が無い。

どうやら、気絶させられた後もぎ取られたようだ。

何故私の指を…と一瞬思ったが、恐らくは殻門を開くためだろうか。

私は一応、此処…空に上がった人類が多数生きる場所である柩(タワー)の最高幹部だ。

傷口から火花が飛ぶ。人差指ではなく、眼球を抉り取られなかっただけマシであろうか。


アレの行き先は…奴自身に取り付けられた監視装置は解除されてるようだ。仕方なしに監視カメラの映像にアクセスする。

やはり、外へ行くつもりか。

丁度二時間前に第拾殻門を抜けていったようだ。


余りこの事は公にはしたくない。

プロトタイプとはいえ、0000シリーズの暴走なぞ市民を不安にさせるだけであろう。

アレの暴走の原因を探らなくてはならない。

原因の如何によっては、0000シリーズを処分した上で計画を一時凍結しなければならないだろう。

タイムリミットが迫っている中、計画の見直しは手痛いことだが背に腹は代えられない。

より善い世界(未来)のためには、万が一が有ってはならないのだ。


そのためにも、万が一にでもアレを外に出してはならない。

と言っても、外に出られる場所は一つしかないのだが。

つまりは其処で張っていれば、奴は現れるだろう。

道中で留まるのならば、それで善し。警備用機械兵でも動かして捕まえればよい。


私は第壱殻門へ先回りする事にした。勿論アレへの追っ手用に機械兵を幾人か送り込む。



********



アレから何時間経っただろうか。

奴は…アレはまだ来ていない。0000(レイヨン)を捕縛したという報告も来ていない事を鑑みるに未だに柩(タワー)の中をさ迷っているという事か。

数時間前に私のIDが第伍殻層で使われたとの報告を受けた。

送り込んだ機械兵の視覚と同調する。

機械兵等は…中級市民が住む第肆殻層に居るようだ。

どうやら奴は面倒事を嫌ったのか、破壊工作を行ったのは第陸殻門のみのようだ。

暴走しているとはいえ、一般市民を手に掛けるのは躊躇したのだろう。



そろそろ来る頃合だろうか。


ふと影が差す。

見上げると0000が涙を流していた。やはり、地球に郷愁の念が在るのだろうか。しかし、今外に出す訳にはいかない。


『やはり此処…か。悪いがここまでだ。お前を今外に出す訳にはいかないんでな。帰るぞ…0000』


0000が振り向き様に電磁パルスを撃ってくる。

無駄だ。

彼女の権限で持てる兵器の類では私に傷を付ける事は許されない。

私は手を差し伸べながら言う。


『0000(レイヨン)…在るべき場所に帰ろう…あぁ、お前が私の指をもぎ取って行ったせいで大変だった。これは始末書ものだな』


0000は一瞬呆けた後、決意を目に宿した。


0000が床を思い切り蹴る。余程強い力を込めたのだろう。大きな破砕音と床が弾け飛び、それと共に0000の身体が宙に跳ぶ。


『お別れだ。00(レイジ)兄さん。…また会う日は無いだろうが』


確かに私は武器の類は所持する事が出来ない。

私の手の届かない場所まで飛び出せば、逃れられるとでも思ったのだろう。

余り使いたくはなかったのだが仕方ない。


0000の身体が硬直する。

彼女が驚愕の表情で此方を見てくる。

身体機能を私の持つ権限で強制的に停止させた。

此れで終いだ。

私は彼女を回収し柩(タワー)へ戻った。


『…まだ…だ。まだお前が地球に戻るには早すぎる。まだ、我々の計画は成ってはいない。異界の神の手が届かない此処でまだやるべき事があるのだ…今はまだ、耐え忍ぶ時なのだ』



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