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油断した。
まさかアレがあのような行動を取るとは思わなかった。
殴られた頭を押さえた手に違和感を感じ、右手を見る。人差指が無い。
どうやら、気絶させられた後もぎ取られたようだ。
何故私の指を…と一瞬思ったが、恐らくは殻門を開くためだろうか。
私は一応、此処…空に上がった人類が多数生きる場所である柩の最高幹部だ。
傷口から火花が飛ぶ。人差指ではなく、眼球を抉り取られなかっただけマシであろうか。
アレの行き先は…奴自身に取り付けられた監視装置は解除されてるようだ。仕方なしに監視カメラの映像にアクセスする。
やはり、外へ行くつもりか。
丁度二時間前に第拾殻門を抜けていったようだ。
余りこの事は公にはしたくない。
プロトタイプとはいえ、0000シリーズの暴走なぞ市民を不安にさせるだけであろう。
アレの暴走の原因を探らなくてはならない。
原因の如何によっては、0000シリーズを処分した上で計画を一時凍結しなければならないだろう。
タイムリミットが迫っている中、計画の見直しは手痛いことだが背に腹は代えられない。
より善い世界のためには、万が一が有ってはならないのだ。
そのためにも、万が一にでもアレを外に出してはならない。
と言っても、外に出られる場所は一つしかないのだが。
つまりは其処で張っていれば、奴は現れるだろう。
道中で留まるのならば、それで善し。警備用機械兵でも動かして捕まえればよい。
私は第壱殻門へ先回りする事にした。勿論アレへの追っ手用に機械兵を幾人か送り込む。
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アレから何時間経っただろうか。
奴は…アレはまだ来ていない。0000を捕縛したという報告も来ていない事を鑑みるに未だに柩の中をさ迷っているという事か。
数時間前に私のIDが第伍殻層で使われたとの報告を受けた。
送り込んだ機械兵の視覚と同調する。
機械兵等は…中級市民が住む第肆殻層に居るようだ。
どうやら奴は面倒事を嫌ったのか、破壊工作を行ったのは第陸殻門のみのようだ。
暴走しているとはいえ、一般市民を手に掛けるのは躊躇したのだろう。
そろそろ来る頃合だろうか。
ふと影が差す。
見上げると0000が涙を流していた。やはり、地球に郷愁の念が在るのだろうか。しかし、今外に出す訳にはいかない。
『やはり此処…か。悪いがここまでだ。お前を今外に出す訳にはいかないんでな。帰るぞ…0000』
0000が振り向き様に電磁パルスを撃ってくる。
無駄だ。
彼女の権限で持てる兵器の類では私に傷を付ける事は許されない。
私は手を差し伸べながら言う。
『0000…在るべき場所に帰ろう…あぁ、お前が私の指をもぎ取って行ったせいで大変だった。これは始末書ものだな』
0000は一瞬呆けた後、決意を目に宿した。
0000が床を思い切り蹴る。余程強い力を込めたのだろう。大きな破砕音と床が弾け飛び、それと共に0000の身体が宙に跳ぶ。
『お別れだ。00兄さん。…また会う日は無いだろうが』
確かに私は武器の類は所持する事が出来ない。
私の手の届かない場所まで飛び出せば、逃れられるとでも思ったのだろう。
余り使いたくはなかったのだが仕方ない。
0000の身体が硬直する。
彼女が驚愕の表情で此方を見てくる。
身体機能を私の持つ権限で強制的に停止させた。
此れで終いだ。
私は彼女を回収し柩へ戻った。
『…まだ…だ。まだお前が地球に戻るには早すぎる。まだ、我々の計画は成ってはいない。異界の神の手が届かない此処でまだやるべき事があるのだ…今はまだ、耐え忍ぶ時なのだ』




