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バイバイ・ララバイ  作者: 美作為朝
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10/19

Downtown.

 「もう一件あるぞ」

 本部捜査一課の中谷が言った。飾磨《しかま》は、しっぽ付きのマークXの運転席。

「えっ、」

「飾磨さんが、上げたんやろ、アダ女《アダジョ》でのこの関係《カンケー》は」この中谷が府警本部の捜査一課でなければ、ぶん殴っているところだ。被害者の緒方美月《おがたみづき》と関係を持っていたと言われる表拓人《おもてたくと》のところだ。

「表《おもて》の住所は?」

 飾磨が尋ねた。

「なんや、きちっと、詰めてへんのか、所轄は、楽やのう。本部やったら張りたおされてるぞ」  

 中谷の細い目。こいつ、四月の転属で本部からどっかの小さい署に下がってみろ、追いかけてでもしばきあげたる。

「免許証で、割れとる」

 もう一人の方の本部捜査一課が答えた。

「せやけど、この時間や職場に直《ちょく》でいくで飾磨さん」

「こっちがメインなのか」

「当たり前や、鑑識が調べたあとの、被害者《ガイシャ》の部屋なんか何も出ーへん」

「三人いきなり行くんか、身柄もうおさえるつもりか」

「いや、任意や、直《ちょく》で職場に行ったらビビりよるやろう」

 めちゃくちゃ強引な捜査手法だ。最悪、表《おもて》がその職場でクビになりかねない。

「心配せんでええ、職場は警察管轄下の水商売や、事情はわかってもらえるはずや、木屋町の53-18、中木屋町の交番に覆面は止めさせてもろうたらええし」

 高崎管理官のやつ、所轄だと言っていたが、完全にでてるじゃないか、二条署の管轄だ。「ランプ付けて、ぶっと飛ばしましょうか、本部の捜査員どの」 

 飾磨も、睨みつけて、喋る。

「やめといてくれるか、飾磨さん、警官が交通事故起こしたら、懲戒免職や」

 飾磨はいつもより粗目にアクセルを踏んだ。

 助手席の中谷はシートベルトをしていない。刑事を取り締まる警察官などいないからだ。

松ヶ崎から、下鴨本通り、そのまま河原町通りにはいり、三条で細い木屋町に全速力で入ってやった。そして中木屋町の交番の前で急ブレーキかけ急ターン。

 案の定。助手席の中谷は、フロントガラスでごつーんと頭をうち、後ろの本部捜査一課も前席のヘッドレストに顔面をぶつけていた。

「やるやないか、飾磨さん」

「シートbネルとせえへんからや、なんなら続きは、木屋町の真ん中の大正小学校でやるか繁華街の交番の警察官《さつかん》は、喧嘩仲裁するの慣れてはるやろう」

「今日は、先輩の顔立てて免除しときますわ」と中谷。


 表の職場は、木屋町の東側、鴨川方向の雑居ビルにあった、スナック"懐中"。

「どっちが喋るんや」と飾磨

「本部の捜査一課に決まってますがな」

「好きにするさ」

 表拓人《おもてたくと》は雑居ビルの階段で瓶ビールのケースを運んでいた。

 又、中谷の手品のような一瞬だけ見せる警察手帳。

「表拓人、京都府警やけど、ちょっと話があるんやけど、ええかな」

 表拓人のい怯えた様子はない。いい度胸をしていおる。普通刑事が来ただけで、てんやわんやになる人間が多い。

 質問されているのに、ビールケースを雑居ビルの仲間で運び、表拓人は手をは叩いて出てきた。

 警察のマニュアル通り、表拓人を前後で挟むようにして三人で囲む。正面で質問するのは、中谷。飾磨は、真横。表は逃げるタイプじゃない。適当でいい。

 痩せ型、20代、金髪。もうそろそろ髪の毛の根本を染め直した方はいい。伸長はけっこうある。細目。いわゆるイケメン風。典型的な遊び人風。働けるまで、バイト感覚でいくつもり。歳とったら、その時考えるという感じ。逃げたり暴れた時、制圧できるか、警察官はすぐ考えるように出来ているが、現職の刑事三人居たら、どうにかなるだろう。

 表拓人は雑居ビルの階段に座り込んだ。座った状態から立って逃げるまでには一段回かかる。だから、警官は逮捕のとき膝をつかす。

 逃げる意思なし。

「なんすか」と表。

「先日殺された、緒方美月《おがたみづき》さんのことやけど、どうゆう関係?」

 中谷を見上げる表の長い沈黙。

 嘘を考えている顔ではない。どこまで喋るか計算している感じか!?。

「緒方美月さんの方からも君の連絡先が出てるんやけど、」

 カマか、事実か、不明。本部の一課連中はそこまで掴んでるのか?。

「付き合ってましたけど、、、」

「ほう、。最後にあったの何時?できるだけ正確に」

「それって日にちってこと?」

「そうそう」

 また、普通の会話ではちょっと長い沈黙。

「あんま覚えてないわ、よく合ってったりう合わなかったりだから」

 誤魔化したか、、。中谷が怒鳴りつけるかと思ったが、意外と冷静に聞いてる。最初からあてにしてない感じだ。

「付き合ってどれくらい?」

「去年の春、合コンで、だから一年ちょい手前ぐらい」

 返答が早い。真実だろう。 

「刑事さんにも教えてよ、どうやったら。アダ女《アダジョ》の娘《こ》と知り合えるん?」

 表の背後を押さえているもう一人の本部捜査一課の刑事が尋ねた。見兼ねたか。

「今、もう大学とか、関係ない出会い系のサークルいっぱいあるから、余裕すよ」

 飾磨が、雑居ビルの内の上を見ると、二階の踊り場から表拓人の上役らしいヒゲの男が階段か覗いてる。40代。遊び人風。水商売系。同じく痩せ型。髪型は長髪。スナック"懐中"のマスターか?。

 飾磨は視線を表に戻す。表の耳にはピアス。

「じゃあ、最後に連絡とりあったのはいつ?」

「そういうのって、美月の携帯に会社に出るんじゃねえの」

「君の口から聞きたいんんだよ」

 緒方美月の携帯が見つかってないことは意図的に伏せた。

「SNSの会社に尋ねたら、警察ってそういうのやるんでしょ、おれ、過去は振り返らない男だから、すぐばんばか自分のは削除していくし」

 中谷がキレるかと、思ったが、我慢してる。中谷のさらに目が細くなった。そして質問が途絶えた。

「ちゃんと答えてくれないと。、任意で署まで来てもらうことになるぞ」

『任意でしょ』ってもし表が答えてたら、目立つ顔じゃなく、ボディにアッパーかフックで一発と思ったら、

 表は答えた。

「美月、死んだの、今週の月か火でしょ、会ったのわ、先週のウィークデイだわ、河原町とか新京極、寺町ぶらぶらして焼肉食って色々あって、寝て、終わり、よくあるデート」

 中谷は、信じたのだろうか?。

「では、君自身は、2月1日の夜から、2月2日の早朝にかけて何をしてた?」

「月の夜と火の朝でしょ。水商売だから寝てますよ」

 速攻と言ってもいいぐらいの返答。準備してたか?。

「表拓人、君は重要参考人だ、。いつ署まで来てもらうことになるか、わからんから、覚悟しとけ。署ではこんなふうにいかんぞ」

 表の返事はなし。返事する義務も義理もなし。

No duty and obligation. 

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