10月11日早朝 飛鳥 ~ 予兆 2/3
『尋常ならざる力をもつ者は、この世界に対する自分の影響力を自覚し、自然に配慮し、力を制御できるようにならなければいけない』
美緒の並外れた能力に最初に気づいた校長が、物心ついた頃から、美緒に言い聞かせてきたことだ。
類は友を呼ぶのか、どの家族学校も、そこに所属する生徒たちは、不思議と似かよった者同士が集まっていることが多い。例にもれず、飛鳥の生徒たちも、美緒同様、特殊な力をもつ者が多かった。
見事に晴れ上がった空を見上げながら、美緒は、その裏にあるものを測っていた。
これは一人や二人でできることではない。
数人でもない。
集団の仕業だ。
飛鳥の生徒たち十人、いや二十人近いか、それ以上の数の生徒たちが、示し合わせたかのように、何かに対して、同じタイミングで、同じように反応して、今朝の晴天を生んだのだ。
そして、ここ最近の生徒たちが引き起こす現象は、天気を変えるだけではなかった。
電気機器を止めたり壊すのもお手のものだ。食堂の大型モニターがニュースを流している時、いきなり映像が止まったり、原因不明の停電になる。そういう時は決まって、生徒たちが嫌がりそうな内容が映されていた。
こんな場面は見たくない、この言葉は聞きたくない――、彼らの拒絶が引き起こした現象であることは、美緒には一目瞭然だった。
そこに、この、笑ってしまいそうなほど脳天気な、天空全体に広がったあっぱれな晴れっぷりである。
見た瞬間、ぎょっとした。
天空全体という広さも、空の高さも、突き抜けた青の色合いも、そして持続している時間も、すべてが規格外だった。
だが、美緒がぎょっとしたのは、生徒たちがしでかしたことに対してではなかった。
美緒自身、生徒たちが反応するより前から、正体不明なものの気配を感じ取っていた。でも、あえて探ることは避けてきた。対象への距離感や規模が掴めなかったからだ。
センサーを伸ばし続けたら飲み込まれそうな、底なし沼に引きずり込まれるような際限のなさが、本能的に美緒を立ち止まらせた。
だが、アンテナを立てなくても、気配ぐらいは嫌でも伝わってくる。
――このスケール感は、飛鳥やこのあたりだけの範囲じゃない。
黎明市、中国地方、日本……。
いや、違う。そんな範囲じゃ収まらない。
もっと、ずっと大きな、……おそらく全世界、つまり地球規模のことだ。
見当もつかない大きさの不透明なものを、生徒たちも感じ取っている。
今にも聞こえてきそうな生徒たちの心の叫び――。
――消さなくちゃ。
あれを無いものにするんだ。
あっても、ないのと同じに無力化しなきゃ――。
生徒たちは、感知したものに真逆のものをぶつけて、相殺しようとしている。
その藁をもつかむ必死さが、美緒の気持ちを泡立たせる。
彼らのセンサーがひっかけたものは、これほどまでに脳天気に明るい晴れ空でない見合わない、何かなのだ。
探りは入れたい。とっかかりも欲しい。
でも、こっちが安易に反応すれば、あっちにもその反応は伝わってしまう。
考えるほどに、そこには美緒を警戒させる得体のしれないものが潜んでいた。
更新:週一、月曜




