第一話「謎の不審者」
時は、二〇××年。
この地球に、異常事態が発生した。
その原因は――。
ソウル・グラディアトル。
彼は、地球を支配するためにやって来た。
「さぁ、人間どもよ! 生きていることに絶望し、我にひれ伏すのだ!」
ソウルの高らかな声が響き渡る。
こうして街は炎に包まれた。
人々は逃げ惑い、絶望し、生きる希望を失っていった。
ある場所では――。
「うぅ……お父さん、お母さん……。どこ? 僕、怖いよ……」
火災によって両親とはぐれてしまった少年が、一人で泣いていた。
「ゲホッ、ゴホッ……。く、苦しいよ……」
煙に包まれた街で、少年の小さな声が消えていく。
また、ある場所では――。
「あなた! 起きて! あなた!」
倒れている夫に、必死に呼びかける主婦。
しかし、夫からの返事はない。
「あなた――――っ!」
主婦の悲痛な叫び声が、燃え盛る街に響き渡った。
大切な人を失い、悲しむ人。
家を失い、逃げ惑う人。
そして、生きる希望すら失ってしまった人。
世界は、たった一人の男によって混乱に陥っていた。
人々が絶望に打ちひしがれる中――二人の少女が現れた。
「ここが地球? 異変が発生したって聞いたけど」
一人の少女が周囲を見渡す。
「はい。間違いありません」
もう一人の少女が答えた。
「主犯はどこ?」
「あちらです」
少女が指を差した先には、炎に包まれた街を見下ろすソウルの姿があった。
「分かった。行こう」
少女剣士は剣を手に取り、ソウルのもとへ向かって走り出した。
「やはりお前か、ソウル・グラディアトル!」
少女剣士はソウルの前に立ちはだかった。
「お前を、ここで止める!」
「ふん。やれるものなら、やってみろ!」
そして――少女剣士とソウルの戦いが始まった。
激しい攻防が繰り広げられる。
しかし――。
「——死にたる技能魂」
「……え?」
少女杖士の顔が青ざめる。
少女剣士が、少女杖士を庇うようにソウルの攻撃を受けていた。
「嘘……でしょ……」
ソウルは口元を歪め、嘲笑する。
「哀れだな。まさか、俺の攻撃から仲間を庇って、自ら攻撃を受けるとは。馬鹿な奴だ」
「……っ」
「俺の攻撃を受けた者は、記憶や能力を破壊される。……つまり、すべてを失うのだ」
「そんな……」
少女剣士は、その場に倒れ込んだ。
彼女は、一人の男によって――すべてを失った。
だが、幸いにも彼女には仲間がいた。
少女杖士は、倒れた少女剣士を抱き起こす。
「大丈夫です。私が……あなたを守ります」
これは――。
少女杖士と、一人の男によってすべてを失った少女剣士が、失った力と思い出を取り戻していく物語。
彼女たちの名は――。
少女剣士。
源恵里――源恵里。
少女杖士。
八ッ橋里奈――《やつはしりな》。
二年後――。
「ねぇ……里奈」
「はい。何でしょう?」
「私……なんで記憶喪失になっちゃったの?」
「……えっと……ですね」
恵里の問いに、里奈はぎこちなく答えた。
あの出来事から、二年の月日が流れていた。
街はすっかり復興し、二人は平和な日々を過ごしていた。
しかし――。
恵里には、あの日以前の記憶がなかった。
「何故、そう思ったのですか?」
「いや……。今こうして平和に過ごしているけど、その前の記憶がないから。私と里奈って、昔はどういう関係だったのかなって」
窓辺に佇みながら、恵里はそう言った。
「……」
里奈は、何も答えなかった。
「ん?」
「どうしましたか?」
「家の前に……全身黒ずくめの人たちがいる」
「黒ずくめ……ですか?」
里奈は窓の外を見た。
家の前には、全身を黒い服で包み、黒い仮面を身につけた集団が立っている。
その姿を見た瞬間――里奈は息を呑んだ。
「……」
里奈の表情から、血の気が引いていく。
(この黒い服……そして、あの黒い仮面……。もしかして――)
「……残党」
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