1章 16
翌朝、王宮からの伝令が来た。
まだ朝の冷たい空気が張りつめる時間であり、私は朝食へ向っている時だった。
伝令はお父様への緊急の仕事かと思い、出発に備えて馬車を回すようにメイドに頼んでいると、お父様に呼ばれた。
彼が携えていたのは私への呼び出し状だった。
「朝早くに申し訳ありません。鶏が鳴いたら向かうように、との王女殿下の命令なのです。」
伝令から手渡された真っ白な封筒の封蝋には、国王陛下の紋。
まさか、と思いお父様と伝令を交互に見る。
伝令は羊皮紙を広げ、息を大きく吸い込んだ。
これから伝令が伝えることは国王陛下からのお言葉であるため、お父様は頭を下げた。
それを見て、私も深く礼をする。
「テレーゼ・リートゥス嬢、国王陛下が貴殿の功績を讃え、褒美を与えるとの仰せである。
今日の夕刻、王宮へ参るように。」
謁見の話は出ていたが、まさかこんなにも早く実現するとは。
アマーリエ様がなにかしたにちがいない。
それにしてもこんなにも早い時間帯に伝令を使うとは、よほど断られたく無かったのか。
考えごとをしていると使者からの視線を感じ、慌てて礼を述べる。
「承知いたしました。光栄に存じます。」
伝令は、あからさまにほっとした顔をする。
当日の呼び出しで断られると思っていたのかもしれない。
お父様と詳しい時間や場所の打ち合わせをしてから、王宮へ帰っていった。
「お父様、いくらなんでも話が出来すぎではありませんか?」
「そうだな、なにかあるかもしれん。
私もついていくが、発言には用心するように。」
謁見の話は、お父様やお母様とはしたがアマーリエ様とはしていない。
なぜ急に、褒美を与えるなどということになったのだろう。
やはり使者との面会の場に参列するための布石だろうか。
でも、昨日の今日ではタイミングがよすぎないか。
ようやく食堂に着くと、お母様は食後の紅茶を飲んでいた。
お父様が私と一緒に居たため、眉をあげる。
伝令はお父様に対するもので、お父様が王宮へ向かったと思ったようだ。
お母様に伝令内容を報告すると、とても驚いていた。
「急いでドレスを選ばなくては。髪型も直さなければならないわね。
昼食後に支度をするから、用意をしておくよう侍女とメイドに伝えなければならないわ。
テレーゼは朝食後、謁見の作法を復習しなさいね。」
慌ただしく部屋を出ていき、テキパキと指示を出しているのがドア越しに聞こえた。
作法を間違えると、我が家の場合は特に外聞が悪い。家には興味はないが、お父様とお母様に恥を掻かせたくないので、復習しておこう。
あぁ、アマーリエ様から預かった木箱の中身の活用方法も考えなくては。
溜め息をつきながら、朝食を摂った。




