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1章 15

帰宅後、お父様とお母様に今日の出来事を報告する。

私が公的な場に参列することを国王陛下が望んでいると聞いて、

お母様は眉を八の字に下げ、お父様は苦々しい表情を浮かべて相談し始めた。


「デビュタントしていないのに、良いのかしら。

 それこそ、マナー違反になるのでは?」

「ヤズマ皇国の使者を公的にもてなすのは我が国では初めてのことであるし、これを先例とすることも出来なくはないが…。」

「前回のような非公式なもてなしなら良いのに。

 デビュタントしてなくても許されるとすれば、国王陛下の謁見が叶った場合ではないかしら。」


二人の会話を聞いていると、少し引っ掛かりを覚えた。

公的なもてなしは初めてだが、非公式なもてなしは前例があるるのだ。

ならば、お茶会は断れないだろう。


「お父様、非公式には使者の方をおもてなししているのですか?

 ヤズマ皇国から使者が来ていたなんて、知りませんでしたわ。」

「勿論。婚姻の話を書面だけではしないさ。

 いま、王女殿下の侍女として働いてるヤズマ皇国の者たちも、我が国では使者待遇だよ。」


アヤメさん、ソウビさんも使者なのか。

侍女であり教育係とは言っていたが、ヤズマ皇国では名家の子弟だ。

家や国の政治的な思惑を背負って来ているのだろう。


お父様の話では、男性の使者と侍従やメイドたちも来ていて、彼らは王宮近くの一軒家に住んでいるらしい。

大使館にあたる施設を持たない国から使者が団体でくると、王家が所持する家を貸し出す。

数名であったり、国賓ならば王宮に泊まって頂くこともあるらしい。



お母様のほうを向き、出来る限り上品に問う。

令嬢らしくしなさい、嫁の貰い手がいなくなりますなどと注意を受けるのが面倒だからだ。

私が知らないだけで婚約者殿が居たのなら、貰い手もなにも無いのだけど。


「お母様のおっしゃっていた、謁見とはなんですの?」

「実はね、先日サロンで王妃様から、国王陛下はヤズマ皇国の文化を取り入れたドレスをたいそう気に入っていたと聞いたわ。

 王女殿下もおっしゃっていたのでしょう?

 それに関連して謁見しお褒めの言葉を賜れば、ヤズマ皇国の使者をもてなす場に居ても不自然ではないわ。」


なるほど。確かに不自然ではない。

特定の分野で優秀な成果を上げた者に褒美を下賜するのは恒例であるし、関連分野とあれば非貴族階級の者でも公の場に有識者として参列している。


が、しかし。

ドレスにヤズマ皇国の帯を締めることを考案しただけだ。

前世での知識があったから帯のかわり結びを思い付いただけで、結び方等は一切分からない。

きっと、我が国のルールに不慣れだから口に出さなかっただけで、アヤメさんかソウビさんも思い付いていただろう。


新しく作らせたドレスもまだ仮縫い状態であるし、なによりヤズマ皇国の布を用いてドレスを作るなど他の人でも考え付くだろう。

実際に着用してお褒めの言葉を賜るほどの成果も出ていないのに、

国王陛下に謁見だなんて畏れ多い。


黙って考え込む姿を、緊張による硬直と勘違いしたのかお父様が朗らかに笑う。


「なに、そんなに心配せずとも国王陛下はお優しい方だ。

 王女殿下にもご臨席を賜れば、緊張も和らぐと思うよ。」


「アマーリエ様は喜んでお引き受け下さると思いますわ。

 ですが、私は思い付いたことを口にしただけで、本当に称賛されるべきはアヤメさんとソウビさん、そしてデザイナーやお針子です。」


前世の記憶の話はしない。

信じて貰えるか分からないからだ。

自分で思い付いたと言わねばならないのが心苦しい。

褒められるべきは、複雑な帯結びをしたアヤメさんとソウビさん。

そして私の漠然としたイメージを的確に捉えて、新しいドレスを作ったデザイナーとお針子たち。

彼女たちにこそ賞与を与えるべきだと思うけど、私の力ではどうすることも出来ない。

お父様が理解して、口添えしてくだされば良いのに。


「思い付くことが素晴らしい。

 侍女の方たちには別途、お褒めがあるだろう。

 デザイナーたちは、今すぐ誉めることは政治的に難しいな。王宮のデザイナーたちはヤズマ皇国の布を使うことを拒否したのだろう?

 当日、成功してからお声がかかるとは思うが。」

「何も無ければ、私たちが口添えするから安心しなさい。

 だから、彼女たちとは別に、テレーゼは必ず謁見しなさいね。

 貴女から、彼女たちを推挙するチャンスでもあるから活用しなさい。分かったわね?」


お母様から念を押すように言われ、無意識に頷いてしまった。




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