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1章 13

先日のパーティーのあとに話し合いをした際、ヤズマ皇国の使者との面会日に、アマーリエ様たちはヤズマ皇国から献上された布を用いたドレスを着用することになった。


既存のドレスに、金襴の帯をアクセントのように縫い付けたドレス。

いくつもの兵児帯を用いたふわふわしたドレス。

刺繍が施された反物や、染めの反物を用いたドレスなど、複数の案を出したがどれも形になったようだ。



アマーリエ様に呼ばれ、パウラ様と共に離宮に向かうと、トルソーに仮縫い状態のドレスが着させてあった。

古い伝統に囚われない、若手デザイナーとお針子達を雇ったそうだ。



「テレーゼさん、使者の方がいらっしゃるときは貴女もいらしてね。」


アマーリエ様の誘いに、首を横に振る。


「デビュタントもしておりませんのに、公的な場など無理ですわ。」


着ていらっしゃる姿を拝見したいし、アヤメさんたちも自身の身支度で忙しくなるため

アマーリエ様やパウラ様のお手伝いはしたいので、控え室には伺う予定だ。


「貴女にもドレスを着ていただきたいのよ。

 私が金襴のドレス、パウラさんが兵児帯ドレス。

 テレーゼさんなら体型もあうし、描かれた花に金縁の刺繍がされた布を用いたドレスはどうかしら?

 こちらの雪花絞りとかいう布のドレスも素敵よ。」


今回、すべてアマーリエ様のサイズで仕立てるが、一部は丈を詰め体型や身長が多少異なる令嬢にも着てもらうのだ。

アマーリエ様は美しくバランスの良い体型だが、決して痩せすぎている訳ではないので、ドレスを着用出来る令嬢は多そうだ。

背がとても高いなど詰めるだけでは対応できない場合は、先日のアマーリエ様がしていたような我が国のドレスに帯を締める着方をしてもらう。


ご令嬢本人がヤズマ皇国の布を用いたドレスを好意的に捉えていても、親や祖父母が反対する場合はバレにくい簪を貸し出すことになっている。

それさえも反対されそうだったり、本人が乗り気でない場合は、我が国の最礼装で臨むよう通達が出ている。


「公爵家や侯爵家のご令嬢、ご婦人は大勢いらっしゃいますし、先にそちらにお声掛けくださいまし。

 着てみたいご令嬢は大勢いると思いますわ。」


「マグダレーナ様には、話は通ってるわ。

 侯爵とダンスをしたときに、今後ヤズマ皇国との国交樹立に協力してほしいと話したのよ。

 まだ他の方々には話していない内容だったから、機嫌良かったでしょ?」


ふふっと声を出して笑うアマーリエ様。

それで侯爵はニコニコしていたのか、と納得した。

背の高いマグダレーナ様にはアマーリエ様のドレスでは少し丈が短いかもしれないので、引きずるデザインのものが良いだろう。



「私もお母様と相談したのですが、親世代はアマーリエ様のドレスをお借りするなどとんでもない、とのことで我が国の正装になるそうですわ。

 ヤズマ皇国ではアクセサリーがありませんでしょう? アクセサリーをつけて頂くことも出来ませんでしたわ。」


残念そうなパウラ様。

王女のドレスであること、そして年齢やデザインも考えると仕方がない。

私のお母様も、アクセサリーならまだしもドレスはお借りできないと断っていた。

私はアマーリエ様の側に控えていたアヤメさんに問う。


「アヤメさん、何か装身具はありませんか?」

「強いて言うならば、扇や根付けでしょうか。ですが数がございません。使者と共にいくつか持ち込まれるとは思いますが…。」


扇。

ヤズマ皇国の扇とは雛人形が持っているような、カラフルな糸がたくさんついた物かしら。

それとも、日本舞踊のような紙製の扇?観光地のお土産やさんにあるような布製?


「その扇は、我が国の扇とは違うのかしら?」

アマーリエ様が小首を傾げながら質問する。

我が国にも扇は存在する。貴族階級の女性しか使わないが。


「役割は似ていますが、デザインが異なります。

 ヤズマ皇国の扇は、すべてが木製のもの、木や竹で骨組みを作り紙や布を貼ったものとなります。

 その多くに、絵が描かれております。花鳥風月が多いです。」


アヤメさんの説明を聞く限りでは、前世の扇とほぼ同じようだ。

それならば、なんとかなるかもしれない。


「我が国の扇職人に頼んで、ヤズマ皇国風の扇を作れないでしょうか。

 絵はヤズマ皇国風のものと、我が国の花や自然などを用いた物を用意したら良いわ。

 ご婦人たちに持っていただけたら、両国の融合の証として役立つのでは?

 それに安価に作れたら売り出すのはどうかしら。国民もヤズマ皇国を身近に感じると思うわ。」


貴族たちや裕福な家庭ならばヤズマ皇国からの本物を買うだろうが、一般国民にはとてもではないが手が出ない。

素材を工夫して安価に出来れば、従来の扇でさえ買えない層も手が届くかもしれない。

アマーリエ様とパウラ様は顔を見合わせる。


「アマーリエ様、ご結婚記念としてお配りになられてはいかがでしょうか。」


ドレスをチェックしていたソウビさんが、頭を下げながら言う。

たしか前世で、皇族がご結婚されたときに招待客にボンボニエールを贈られたニュースを見た記憶がある。

それと同じような感じだろうか?

貴族だけでなく国民にも無償で配れたら良いかもしれない。予算があれば、だが。


「ソウビさん、それとっても素敵よ! 私、お父様に会議に諮るよう頼んでみるわ!」


パウラ様はぴょんぴょん飛びはね、胸の前で指を組む。

当事者であるアマーリエ様よりも、パウラ様が興奮しているようだ。

パウラ様なら、きっとうまく公爵を納得させられるだろう。


「テレーゼさんのアイディアには、いつも驚かされるわ。もしかして、これの使い道も思い付くかしら?」


アマーリエ様から差し出された木箱には、たくさんの端切れが入っていた。

色も素材も形も、様々だ。


「ヤズマ皇国の布でドレスを作ったときの端切れよ。

 我が国ではまだまだ珍しい布だから、とりあえず集めておいたの。

 なにか使い道はあるかしら?」


試すような表情をしている。

技量を図られているのか、純粋に奇抜なアイディアを楽しみにされているのかどちらだろう。


「少し、考えさせてくださいませ。」


私は木箱を数日預かることにした。

再利用出来ないか、考えてみよう。

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