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第36章 魔族達の守るもの

警察署の廊下を歩いていた石山さん。そんなとき、初めて見る女性と出会った。服装から警察官とは違い、一般人ぽさが漂う。間違えて入ってきたのかと声をかけた。

「ん?どちら様で。用があるのなら一階の受付へと」

「ここにいる根高繁、凪へと用があるんだ。会わしてはもらえないだろうか?」

「あーな。どういう関係なのかは知りたいとこだが、とりあえず案内はする」

「助かるよ。内密な話をしたいから、2人だけを呼んではもらえないだろうか」


「おーい、凪や繁ー。いるかー?呼ばれてるぞー」

「今行く今行く。じゃあ、俺と繁は抜けるわ」

凪と繁は部屋から出てき、4人が集まった。

「サレス!久しぶり」

「わざわざここまで来るなんて珍しいな」

「知り合いか。それじゃあ、なんか話あるみたいだぞ。俺は邪魔にならないようどっかいく」

そして石山さんが別れ、ここには3人だけが集まった。

「魔王様、少し気になる情報を仕入れてね、こればかりはと思って急いでここまで来たんだ。噂だけで信憑性には乏しいんだが、まあ良いかと考えたんだ」

「そんなのは気にしないよ。わざわざ伝えに来たってことは、よっぽど大事なことなんだよね。なら」

「まあ俺達はいいよ。サレスだし」

元魔王城勤務で職場が同じだったこともあり、ここの間の仲は割と深い。

「ありがとう助かるよ。それで聞いた噂なんだが、魔族の話なんだ」

「魔族退治?それともサレスみたいに敵対心を持ってない魔族?」

「それについて詳しい話をするよ。話の内容は山で道に迷っていた時、そこで見たこともない、動物ともいい難いものを見たと言うもので。まあそれが指してるのはきっと魔族なんだ」

「普通の人は、魔族のこと知らないから。そんな感じに言われてるのも、何回か聞いたことあるよ」

異少課としての任務は元が誰かの通報によるものもある。その通報の時そんな感じに話してるのを何度も聞いてきた。

「かといっても、それがただの魔族だったらわざわざここまでは来ない。それこそ、あの常連の彼を通して伝えていた」

「翔のことか。あの近くに住んでる」

「でも。それをせずわざわざ来たってことは、それだけ事が問題ってこと?」

「ああ、この件は早めに何とかしないといけない。なぜなら……目撃情報から考えるに、あの連続殺人犯。キリックだから」

「キリックって!」

「まじか」

「あくまで人から聞いた伝聞なんだ。信憑性に問題があることは理解をしている。だけれども、キリックの特徴に当てはまっているんだよ」

キリック。元の世界の魔族ならその名前を知らないものはいない殺人犯。近くの村人を残虐的に殺し、その村を壊滅させた。

王城の兵士が総力を挙げて確保し、王城内の牢屋の中に閉じ込められていたのだが。

「あの牢にできちまったのか。世界を繋ぐやつ。それでこっちに飛ばされて」

「ああ。そうだと思うよ。そしてこいつだったからわざわざ魔王様だけを呼んだんだよ」

「キリックは、人間憎しの感情で動いている。魔族相手ならまだ大丈夫だけど、人間を相手にした途端に豹変して殺しに来ようとするから」

「異少課の皆はたとえ敵がどんなやつだろうが協力して皆で戦おうとしてきそうだからな。あんな物騒なのにわざわざ巻き込みたくはねぇな」

「私としても同じ意見だったんだ。こんなのに魔王様方を巻き込むのは本当ならあまりしたくはないんだが、とやかく言ってる場合じゃなかったんでね。私も魔族の知り合いなんて2人以外は知らないんだよ」

魔族以外を除外すると今回の任務に着いてこれる人がかなり絞られる。

「私達、魔族の知り合いで話聞いてくれそうなの。1人知ってる」

「そんなの……ああいたな。本当に人になじみすぎてて、すっかりそのことを忘れてしまうあいつを」

「やっぱりいたのか。そしてもう知り合う仲になっていたとは。それで、どのような」

「説明はちょっと一旦後ででいいかな。その人がいる長野県いくから」

誰かというのは、長野県異少課のホク。元魔王城勤務の彼だ。

「同じく異少課のメンバーとは。それは期待ができそうだよ」

「うーん。良い人(人?)だから。サレスにとってはちょっと問題があるかもだけど……」

「私は基本的に問題は無いよ。四の五の、言っているような状況じゃないことは、理解しているんだ」

心配しているのは、この世界での彼との初対面がかなり派手に色々とやりすぎていたこと。サレスはこういうのは嫌いそうだ。王に真正面から歯向かう行為ではあるから。

「何とかなってほしいね。お兄ちゃん」

良い方に転ぶのを祈るだけだった。


「で、本当に何をしでかしてんだ。魔王城勤務のくせして魔王様に仇なして。反逆か!?」

「なんか知らない人に思い出したくない秘密をぶり返さたんだけど!」

というわけでサレスを連れて長野県異少課にやってきた。名村さんがちょうどいなかったのでホクのみと話してる。

とりあえずホクのことを説明するために前やった異少課襲撃の件も話したら予想通りこうなった。

「サレス落ち着いて。この件はもうとっくに解決した件だから」

「まあ。魔王様がそうおっしゃるなら、私は一旦この話は忘れよう。それにしても、こんな裏切り経験があるやつを近くにおきたくはないんだが」

「今のところはそんなこともしてないし、そこは気にしなくてもいいよきっと」

「なんかあってきたんだろうけど色々と説明をして。まず誰これは」

「本当に魔王城勤務なのか?私のことも知らないとは」

「この人は元守備隊長のサレス」

「サレ……知らんな」

「なんかイラッとくるな」

「ホクはそういう人間だから、そう」

はっきりと見てはいないけど、多分ホクは普通の人間よりやらかすタイプ。やったことがでかすぎる。


「はぁっー……。つまり、配属していた部門が違うから知らないと」

「元魔王城勤務って、俺みたいなのまだいたんか」

「魔族もまだまだいるもんね。見つかってもおかしくないよ」

とりあえずそれぞれの自己紹介はまあまあ長くかかったが、ようやく本命の話と入れる。

「それで、これだけ伝えに来たわけじゃないんでしょ?本命は?」

「私が魔族キリックの目撃情報を仕入れたんだ。キリックの特性上人をもっては行きたくないから、そこで魔族の戦力を集めようとしたといった流れだ」

「キリック!?今キリックって言ったのか!?」

「ああ。目撃情報がキリックに類似しすぎていて、キリックと断言してもよいと考えたんだ」

「これは俺のワガママだが、少し聞いてほしい」

「それがよっぽどのもの、皆を危険に陥れようとするようなものでないなら私は。それで、何をしようと?」

「俺のとこにはもう1人。亜美っていう異少課のがいるんだけど、そいつも一緒に連れて行ってはくれないか。そして、ここまで聞いてたんならどの道入っても変わらんぞ亜美」

「バレてた。どうも」

ドアが勝手に空いてその奥にいたのは、名村亜美。その手にはメモ帳があり、盗み聞きして大事なことを色々とメモをしていたみたい。

「色々と分かってはいるが、それでも何とかできないか?」

「頼んでくれてありがと、ホク」


「名村亜美か。それで、本当にどういう関係なんだ?ただの同僚というには、少し違うように感じる。第一、この話を聞いて取り乱さないということは、そこそこは知っていたのだろうか」

「アタシが知ってたのはホクのことだけ。まさかこの2人が魔族、しかも魔王だったなんて思ってもみなかったさ」

「私達のこと聞かれて……でも同じ異少課の皆みたいに、受け入れてくれて。ありがとうございます」

「魔族なんてホクをもう見てるからな。今さら魔族が異少課にいたとしても、多少驚く程度だよ」

さらっと言ってのけた亜美。それで結構安心した魔族達。

人間、しかも魔族と戦う異少課。魔族に対して憎しみを持っていてもおかしくはなかったから。

とはいいつつも、異少課の皆は優しいから誰にバレたところでそう大きくは変わらないような気もするが。


「それで、話を戻すけど、どうして連れて行こうと?戦力の件だったら、わざわざ連れて行くぐらいなら魔族だけのほうが安定する。あのキリックは人間を見ると他のことを忘れて暴走しながら人間を襲う」

「そんな事は重々承知してる。それでも、アタシは倒さないと行けないの。キリックを」

真剣な顔つきでそう言うと、誰も反論できずに留まってしまう。

「亜美の言う通り。俺達には大事な理由があるんだ」

「流石に理由を聞かせてほしい。それも無しに連れて行くのは、やはりな。その理由を聞いて、総合的に考えようじゃないか」

「アタシ、一度キリックと戦ったことあるの。その時はあとちょっとまで出来たけど、結局逃がした。だから、アタシはキリックに因縁があるの」

「亜美が言ってるのは本当。実際に逃したところと、悔しさで顔いっぱいにしてたところ、見てたから」

昔を思い出すように、目を瞑って静かにする。その話、ホクにとってはとてつもない大事な話らしい。

「詳しい話をしてもらえる?」

「じゃあ話すよ」

亜美のほうも同じように過去を思い出す。キリックとのことを。


「これは、アタシが異少課に入りたてのときだ。任務の魔族討伐のため、1人で森へと来ていた。そしてお目当ての魔族を見つけたんだが、その時もう1人魔族が更にいたんだ。ホクのことだ」


「アレがお目当ての魔族か。聞いた魔族情報にそっくりだ。それで、そこにいるそいつは誰なんだろうな」

「ずっとやりたかったんだてめぇ。人間を殺しただけで人生終わらせるだぁ!?むしゃくしゃしてたんだてめぇら城の奴らにはなぁ!」

「なんでこうなるかな。ここがどこかも全然分かってないのに、あろうことかこいつはいるのかよ。なんで一緒にいるのがこいつなんだ。敵じゃねぇか」

目の前で目的の魔族と、ちっちゃい別人が勝手に戦っていた。そのちっちゃいやつは、しかも魔族だ。見た目でわかる。

「倒すのは大型だけ。ちっちゃいほうはどうなろうがいい。ま、だとしてアタシがやることは変わらないか」

一歩一歩、戦ってるところへと近づいていった。ちっちゃいやつは、襲ってこないなら無視でいい。

「っ!人間め!よくもよくも!全て潰してやる」

「雰囲気が変わった!?本当に大丈夫なのかアタシ。って、やるしかないんだけど!」

「なんか急に来た。え?追加の敵?にしてもなんなんだこれ。まあいったん考えるのは後で、今やることすっか」


「そして任務通り、戦いが始まったんだ。あの時は明らかな戦力差で、アタシもこれは終わったなと思う戦いだったよ」


「だからさぁっ!アタシはこんなんに真っ向から戦うタイプじゃないんだけど!」

「人間だけは、必ず消してやる!何も残さず!」

魔族が圧倒的な力で亜美のもとへと攻めて来た。それに対し亜美はまともに攻撃を入れることすらできない。

相性が悪いことに亜美の武器は毒針。攻撃を入れることで相手を弱らせる。こんな火力だと攻撃を入れることすら無理だった。

「味方なのか、それとも敵なのか……」

亜美だけに目が眩んでいる魔族を見て、どうしようか決めかねていたホク。ホクはこの世界に来てそんなに経たない頃。この魔族を倒さないといけない義理はなく、逃げたっていい。

「なんか俺のことは忘れられてるし、今のうちに……」

「だからさぁ!」

「全て、全てを滅ぼしてやる!」

「なんてわけには、いかねぇか」

が、目の前のこれを放っておけるほど、冷徹でもない。

「倒すの、協力してくれるんか?」

「こっちだってこいつは倒さないといけねえんだ。利害の一致だ」

「何でもいいよアタシゃ。気を引いてんだから仕留めてくれ」

これが初の、ホクとの共同作業だった。


「それからは激闘だった。2人がかりでも、全然力がそげなかったんだ。アタシの身体もボロボロになった。まあでも、ホクが入れた攻撃が蓄積されていったんだ。何とかなっね、勝利は収めれたんだよ」


「このまま戦い続けんのは危険だ。あのクソな人間がいるってのに……クソッタレー!ちっ!今度こそ……」

撤退していく魔族。ボロボロの身体な亜美にとっては朗報でしかなかった。なんてったってもう少しで重症になるところだった。

ここに残ったのはアタシとホクの2人。ホクと隣に座って、色々と話してた。

「けっ。逃がしちまったか。アタシの今の身体じゃどうせ負けてたから、生き残ったといやぁそうなんだろうがよ」

「ここどこだよ。一旦危機は追い払えたけど。この先どうなんだろうか。考えたくない」

「さてと。そっちもそっちで魔族だろ。その狐の耳」

「まあな。ここは人間の暮らす世界なのか?」

「人間の暮らすって、そりゃそうだな。アレか。来たばかりで掴めてないとこか。ここは地球。多分違う世界だよ」

亜美はこれが来たばかりの魔族だと言うことに気がついた。魔族が異世界から来てるなんてことは聞いていたから。

「本当かよ。ただの場所移動だったら帰れたのに、これ帰ることすらできなくなったってのか。本当にどうすりゃいいんだよこれ」

「にしても、魔族にしては珍しいな。アタシが人間ってことはもう分かりきってんだろ。なのに襲ってこないなんて」

この時の亜美は攻撃をしてこない魔族を見たことがなかったので、ホクに対してかなり警戒をしていた。ただそんなのは、いつの間にかどっか行っていた。初対面だが、普通に隣座って会話していた。

「いや襲う理由がねえだろ。そっちがやってくるなら対応するけど」

「やらねぇよ。それで、なんかあいつと会ったけど、知り合いか?」

「いや。あの魔族はキリックって言うんだが、人間に対して虐殺を行ったから牢屋に収監されてたんだよ。こんな奴も一緒に来ちまうとはな」

「そんなヤバいやつかよ。じゃあなおさら仕留めておきたかったな」

「まあ、あいつの特性として受けた傷を長い時間動かないことで癒すってもんがあるんだ。その関係でしばらくは動けないから安心だぞ」

「ならまぁ。だとしてもアタシはトドメまでさして、今後でてくるなんてことにならないようしたかったけど。それで、どうするんだこれから」

ここに来たばかり頼れる人も誰もいないホク。

「どうしようか。この世界に魔族が暮らしている地区とか、まあねえだろうよ」

「そりゃあな。そもそも魔族だなんて、一般の人達には知られてねぇのが現状だ」


「その時のホクは本当にな、元気がないと言うか……不安そうな顔してたんだよ。だからかな、アタシがあんな行動に走ったのは」


「そっちの世界ってのがアタシは詳しく知らないけど、山や森で狩猟して暮らすーなんて、そんな簡単な話じゃないんだろ。文明とかもあるみたいだし」

「なかなかに詳しいな。でもそうだよ。出来ねえことは無いけど、ちゃんとした町や村で働いて暮らしていきたい」

「じゃあ、選択肢は1つ。魔族であることを隠して人間の世界で暮らす。普通の人間に魔族であることが気づかれたら大問題。ろくでもないことに巻き込まれるぞ」

「それしか無いか。何ででもこんな目に。家なし金なし常識なしとか、きついってレベルじゃねぇ」

違う世界。まともに生きていこうにも、最初からハードルが高い。

「なら、アタシのとこ来るか?警察署の寮なら空き部屋あるだろうし、アタシがいる異少課は魔族の存在を知ってる場所。そこだけは取り繕わなくてもいい場所だ。異少課に所属さえすれば金は稼げるから、何とか生きていくこともできるぞ」

「それ以外の選択肢は無いな。いいよ乗ってやるよ。俺はホクだ。これから知り合いになるんだろ?」

「名村亜美。それがアタシの名前。それじゃあ、案内するから」


「ホクのことを連れて、異少課に入れてもらおうとあれやこれややったんだ。まずうるさい三条さんを黙らせて異少課に入れさせて、そこらの手続きとかも終わらせた。あとはこの世界でホクが生きていけるよう色々と教えた。軟木北なんて偽名も考えたこともあった。そんな時のことだよ」


「北の件であやふやに流されてたけど、あの魔族キリックは倒せなかったんだよな」

亜美のことを呼び止めて、話を始めた長野県異少課上司の三条人志。

「アタシとホクが戦ったけど、残念ながらトドメを刺すに至らなかった。火力不足だ」

「しばらく動かないとか聞いたけど、いつかちゃんと倒したことを証明するんだぞ。あれを野放しにしてりゃ被害出ること、分かってんだろ」

「アタシだって分かってるよ。でもな、どこに行ったか分からんものをどうするってんだ」

どうにもならなくてため息しかでない。三条さんのことを抜きにしても、亜美にはあのキリックのことが心配だった。何か取り返しのつかないことを起こされるのではないかと。

「亜美か。何か言われてたが、大丈夫だったか」

「あのキリックいただろ。あれ結局倒せなかったから何とかしろってんだよ。しばらくは大丈夫、なんだよな」

「前も言ったが、キリックはしばらく動けない。それまでは誰も襲われる心配はない。どちらにせよ、対応できないんだから忘れりゃいい」

「そうだな。ま、もし目撃情報とかがでたなら、今度こそアタシらで何とかしなきゃだな」

「わーったよ亜美。その時は暴れてやる」


「まあこんな話だ。キリックは最初アタシの管轄だったけど、どうにもならずに逃げられた。アタシが無茶してまでキリック倒しに関わりたい理由は、そういうことだよ」 

「私としては反対したいという気持ちは無いわけではないのだが、今回ばかりは見逃そうと思う。その代わり、危険になったら被害を出さずに立ち去ること」

「良いじゃん。よし、じゃあここの皆で」

「キリックを倒しに行こうか」

「おー!」


「あのキリックがいるって目撃情報出たのはここら辺?」

それからしばらくして、電車等乗り換えを繰り返しついにキリックの目撃情報の場所までへとたどり着いた。

「ああ。わざわざ言うほどでもないとは思うが、ちゃんと気を引き締めるんだぞ」

「サレス、私達は大丈夫。深呼吸したら落ち着いたよ」


「平和だ。あの忌まわしき人間も、俺を害するあの城の奴らもいない。はっはっは。こういうのが俺が望んだやつだったんだ」

「思ったより早く見つかりましたね」

キリックを探して色々行ってたらすぐ見つかった。

「ここらに定住してるみたい。こんな場所にまでわざわざ逃げてきたんだな。それで、もう行く?」

「私達は大丈夫。いつでも銃ぶっ放せる」

「アタシ達も大丈夫。行こそろそろ。あの時逃がした恨みも込めて」

「それじゃあ行こうか。気づかれないうちに速攻で倒す……には無理がありますね 」

「普通に戦って普通に倒す。それが楽だしいいんじゃないかな」

「じゃあ行こう早く。気づいてなくても逃げられるかもしれないんだから」


「人間っ!てめぇ!」

「ありゃりゃ。もう気づかれちゃった。奇襲仕掛けて簡単に倒せないかなってアタシ考えてたのに」

そろりそろりと忍び寄り、不意をついて仕留める。ソッチのほうが楽だったが、運の悪いことに見つかってしまった。

「人間を襲って悪いと反省、だなんて全くしてないんでしょうね。牢屋にいる時からそんな感じでしたから」

「こっちの世界でまだ何もしてないのかもしれないが、それでも前の世界でやったことはあるからな」

「あの時のお返し、亜美としてやんよ。ただでさえ分かんねぇ状況をさらにややこしくさせやがって」

魔族達は言いたいことを口々に言うものの、それに対して返答は何もない。目は亜美だけを追っている。目の前の憎い相手のみしか見えていないんだろう。


「貴様は許すものか!骨の髄まで全て砕きちらしてやる!」

「あの時と違って仲間がいるから。みんなお願い。アタシも行けそうなら毒針でデバフいれるから」

「オッケー亜美。じゃあ、俺は、更に仲間増やして戦ってみせよう。これもあの時にはできなかった復活させるやらで、援護はする」

ホクの武器の力は復活。今まで倒してきたいくつもの魔族の力も借りて、戦いを有利に進める。

「っ……やっぱりこんだけ狙われるのはきっつ。でも、今の間に」

「私も少しは回ろうと思うよ。いくら何でも、ただの子供を巻き込むなんてのはね」

サレスは元警備隊長。守ることに関するプロフェッショナル。盾も扱いながら、亜美のもとへと飛び交うのを何とか止めている。

「あいつは何としても絶対に!」

「怒りに身を任せるから、何か頭で考えることもせずただまっすぐこっちへと来ている。単純な相手だよ。ただ火力に全振りしてるだけ。対処法ならいくらでもある」

「でもその火力がおかしいから。油断はしないでね。サレス」

「大丈夫だ。油断なんて議論してない。私は魔王城を抜けたとは言え、まだ魔王様を守る義務がある。その義務を果たさず油断など、そんな事は無い。魔王様を守るのが、私たちの仕事だ」


「亜美、にしても大丈夫かあんなに狙われて」

「今んとこは大丈夫。サレスさんの盾がいい感じに防いでくれてるから」

「私のことなんて眼中にもなく襲ってくるのでしょうね。その途中に立てば攻撃の邪魔をすることもできるんだよ」

狙われている亜美のほうは十分気になるものの、だとしてもというところ。

「皆、頑張って戦って。人数だけは十分にいるから、数の暴力で押し切ろう」

ホクはとりあえず自分にできること。武器の力で呼び出した魔族に戦わせて、ちゃんと削っていく。今回俺達に必要なのはできるだけ短期決戦にするための火力。それさえあれば何とかなる。

「キリックの周りにいるの避けてください。狙って撃ちますから。この氷の弾を!」

「なんか良さげな薬……よしこの火力を上げる薬を、何とかして作るか」

凍らせて邪魔させる繁。とりあえず使える薬を作る凪。皆の力を合わせよう。


「この、野郎!人間死にやがれぇ!」

「いくら何でもここまでやるか……あぁ、私の盾が吹き飛ばされてしまう。必死に耐えてるけど、これ以上が来たら怖い」

「でもまだ、最高ってわけじゃあ、無さそうかな。だからこそ怖い」

感覚だけの話だけど、まだ上がる余地を残してる気がする。異少課として色々と敵を見てきたから、ちょっと分かってきた。

「アタシの毒針、入れれたら弱体化できんのに」

「入れる隙もないってこと?」

「アタシも狙ってんだけど。素早いのと火力高いのがね。今行けるか!?」

亜美はキリックのことを集中して監視し、自分の武器の力の毒針を使えないかと模索していた。亜美は今のところほぼサレスに守ってもらい、たまに来た攻撃を受け止めたり捌いたりするだけ。まともにできてないから、武器の力で貢献したいみたい。

「今なら行けるかも。避けて回転してここを!」

「こ……の……クソ野郎。人間ごときがそんな事を。許すものか!絶対絶対絶対滅ぼしてやる!」

亜美は飛んできた敵の攻撃を華麗に避けて、その一瞬の隙を見て近くから毒針を仕込んだ。毒針でちまちまも弱らせるのもまだ何とかなるらしい。

「じゃあアタシだって、ホクのこと勝手に襲ってそして今までずっと逃げ続けて。許せはしない」

亜美は明確に敵対意識を見せる。逃がしたキリックのことは確実に仕留めたいらしい。また同じように逃げられてこんなことになってしまわないように。


「この、人間めが!」

「くっ。だから!あの怒りを鎮めてみたいが、怒りを吸収することは難しいか。それができたら良かったのだが」

サレスの武器の力は嫌な感情を盾に吸い込んでくれる力。これでキリックの怒りの感情を吸い込んで落ち着かせられたらもっと楽になるのだろうが、怒りが強すぎるのか吸い込んで落ち着かせることはできなさそうだ。

「無茶して前みたいなことになってしまうよりは、このまま戦い続けたほうがやはりいい」

サレスは前、翔の友達の悲しい感情を吸い込もうとして自我を失わせたことがある。あっちよりも発散がしづらいようで、無茶したらまた誰かが嫌な感情に乗っ取られてしまうかもしれない。

「とりあえず、私がする結界で時間稼ぎぐらいならできるから、このままだとやばいってなったら教えてもらいたい」

「アタシ今のところは大丈夫。だけどどんどん怒りに身を任せてるのか、わけの分からないように襲ってくる。あれ強いんだ」

サレスが持つ魔法は結界魔法。前はこの力で取り憑かれた翔の友達を店からでさせないことに成功していた。

結界を使って閉じ込めることはできそうだろうが、閉じ込めた状態で一方的に攻撃できることは出来ない。時間稼ぎ以外に今使うことは出来るでしょうが

「どけ!邪魔をするな!」

「人間相手にどうしてそこまで情熱を燃やすことが。分かりたくはない」

「じゃあ撃つよ〜」

「軽いなノリが」

「凍らせて立ち動けなくしたいんだけどね」

繁が撃ちまくってる氷の弾も、あんまり効いてはいないようだった。

「とりあえずこれ飲めば、少しは避けやすくなるはず。動きが機敏になる」

「よし。避けてやりますか」

凪が避けやすくなる動きがよくなる薬を作ったみたいなので、これを人数分に分けて飲んだ。こっち側も強くなってる。それでもまだあんまり削れてるように感じないのだけど。


「燃やすのも試してみよう。皆、キリックの周りからどいて!」

「なんか打開策になるような薬ないか?あんだけ狙われてるからそれ対策の薬。あるだろ探しゃ」

キリックに勝つための打開策をそれぞれ考えてる。繁はまだ試していない炎のほうの弾を使い、凪は自分の力で作れる薬を考えれば行けないかと試行錯誤。

「こんだけいたら、大丈夫。わざわざ来てくれた亜美のためにも、ちゃんとキリックを倒そう」

ホクは復活の力で呼び出した魔族達の指揮をしてる。数十体にも及ぶ魔族を一度に呼び出した。こんだけいたら、体力の削りもかなり進むし何よりキリックにとって邪魔になる。視界的にも、行動を阻害するという意味でも。

「あの人間は絶対滅ぼす。だから邪魔をすんじゃねぇ!帰りやがれ戻りやがれ!」

「少しは、行動の阻害出来てるか?スピードぐらいは落とせてるか?」

怒ったキリックの火力がバカだからなのか、道中にいる邪魔な魔族を薙ぎ払って吹き飛ばしている。復活の力は倒れたものも再度復活をさせられるが、そんなにばかすかうてるもんでもない。


「炎に特段弱いわけじゃあ無いのね。だったら、凍らせて燃やすか。なんか、削れない?」

「襲いにかかるのをずっと止めているけど、大丈夫でしょうか。いくつかは逃してしまったので」

「毒針はきついか?でもこれを当てれば当てるほど次当てること簡単になって、普段と同じ……こんなに火力高いか。しかも防御力も」

今回の敵相手に毒針をまともに使いこなせてない。動き回り過ぎてすぐに避けられる。毒針を一定以上撃てば楽にはなるんだろうが、願望感が強い。現実性を考えてると言えるだろうか

「まあいい。かかってこい」

「ほとんどはこれ以上先には行かせない」

亜美とサレス。何とかしてこちらも対応していた。


「っぅ……流石に私も疲れてきたよ。まだいけるだろうが、っぅ!あの火力が高すぎて体力の消耗が激しい」

「サレス、一旦結界張って閉じ込めて、その間に体力回復する?」

「ただでさえ疲れているのに結界張って維持。皆はともかく私が持つとは思えない。私が倒れてしまうと、この攻撃を本当に捌けなくなるから」

「今のでさえアタシきついよ。毒針狙ってるけどまともにできないし」

「この人間がっ!なんでまだ生きてやがる!さっさと死ねこの野郎!」

「タイミングとか、狙ってはいるんだよ。それでも速さがすごくて全然当てられない」

キリックも結構削れてる感はある。数人で遠慮なしにどんどんどんどん叩いてはいる。

「ホク、そういやその魔族使ってキリックの動きを止めたり出来ない?それしてる時にアタシ毒針入れる」

「なるほど。でも気をつけて。今狙ってるのは亜美だけなんだ。毒針を使えるほど近くまで潜り込んだら反撃されるかも」

「それは、できるだけ気をつける。どんどん入れて弱めてやる」

ホクは復活で呼んだ魔族に命令させ、亜美へと行く道中に配置して全力で襲わせる。もちろんそこそこの巨体が行く手を阻んだらキリックも動きが弱まった。

「今なら行けるかな。せぇの!」

毒針を入れた、そして地面を蹴って一瞬でキリックから離れた。反撃が届かない場所まで行って。

「行けそうかなこの作戦。逃げるときがすっごい疲れて心臓バクバクなるけど」

「そうだ氷入れときます。少しでも動きが遅くなることを願って」

「それにふさわしい薬……」

繁と凪はとりあえず自分ができそうなことをして、作戦の手伝いをしている。

「このまま何度も何度も入れていけば、いつか何とかなるだろ」

「私もそう思うよ。それのことを詳しく知ってはいないが、でも入れ続けたら効果はあるだろう」

「やってこっか」


「お兄ちゃん。あっちは結構頑張ってるんだから、私達も負けてられない」

「こっちにもできることをってことか」

「止める魔族少なくして他の魔族攻撃に回してみるのもやってみるか。ギリギリの止め具合……でもアレだけは多すぎだから、ちょっとぐらい抜いて火力へと回す」

ホクはまた魔族に命令。いい感じになるようずっと考えながら。

「よし、二発目の毒針を」

「亜美、負けんじゃねぇぞ絶対に」

「分かってる分かってる。こいつ相手に負けられないから」

因縁の相手。今度は逃さない。

「にしても、前とそんな変わってないなこれは」

「俺もそう思ってたよ。あれから結構経ったけど、強くなったわけではないんだな」

「それもいいことだよ。アタシ達にとっては」


「ったぁ、うぐっ、このっ!死にやがれ!」

「これ、まずいかも。皆避けて」

「盾が間にあわない。魔王様避けて!」

「そっち行ってくれ!急いで!」

「だぁっ……ぐっ……」

キリックは急に行動を変え、人間以外の魔族にも普通に攻撃してくるようになった。おそらく体力がもう少しだから、なりふり構わない生存本能が働いたから。怒りによるおかしい火力が襲いかかる。

初めに狙われたのは近くにいた繁だった。サレスは何とかその攻撃を盾で受け止めようと、ホクも魔族を移動させて止めようとしたもののどちらも間に合わず、繁に当たった。

攻撃をくらって吹っ飛んでいく。1発でこんなだから頭おかしい。

「繁、大丈夫か?」

「お兄……ちゃん。私は何とか、それよりあのキリックを倒さないと、このままじゃ……」

「毒針入れて。こらは早く終わらせないと、まずいことになる」

「全力で襲ってくれ。多分もう少しなんだ」

「ここで結界。いややっぱり役に立てることは難しいな」

あともう少し、あともう少しなんだ。各々何とかして攻撃を加えてる。

「結構入れたよ。毒針」

「消えろー!」

「亜美!そこの後ろに。今集める」

次に狙われたのは亜美。追撃を入れるとか全く考えてない。理性も多分無いに等しい。

それまた厳しいことにはつながる。

「よし、守り抜こうこの盾で」

今回はホクの魔族、そしてサレスの盾が間に合ったため全部捌き切れた。でもこれが続くのはやっぱりよくない。

「ホク、火力で頼りになるのはホクだけだから」

繁がいなくなると、守り特化のサレスとデバフ特化の亜美。どちらも火力に期待はできない。

全てはホクにかかってる。ホクの魔族をどれだけ扱えるか。ホクならきっと大丈夫。

「今度は!死ね!」

「まずい。2回は耐えられねえかもな」

「凪、何とかできないか?」

「繁に何とか攻撃は届かないようにするが、何とかなんて言われても……」

今度狙われたのはまたしても繁。決め方はランダムっぽい。

そしてまた、間に合いそうに無い。近くにいる凪が、攻撃されないようしてるが、火力無しのが止められるほど弱くはい。

「アタシはいけるけど、だとしてもね。でも、いずれそうなるのは」

「走って移動する。少しはくらいだろうが、我慢のお願いだ」

「皆、行け!そして倒すんだ」 

ホクは皆に発破をかける。倒しきれるようにと。亜美に危害が行かないようにと。


「いった……」

「お兄ちゃん!」

まず凪が自分の身体を犠牲にして無策で突っ込み、そしてキリックにより飛ばされた。

繁が2度くらうのはなんとしても避けたい。凪がくらうことで、それを何とか回避できないかという。凪は武器的に真正面からキリックと対峙することは難しい。それでも繁を守るために動くのが、お兄ちゃんの凪なのだ。

「少しは弱まってるけど」

でも、それでもキリックが繁への攻撃をやめることはなかった。凪が繁への攻撃を代わりに受けたわけではなく、ただぶつかって強引に動きを弱めただけだから。

言うなればただの時間稼ぎである。

「急いでるんだ。間に合っておくれ」

「あんなの見せられたら、アタシにもできることしないと。このっ、収まれ!」

サレスと亜美はこの時間を使ってキリックのもとへと行く。そして亜美は自分の毒針をできるだけキリックに使う。何度も何度も弱らせる。

「うっつぁ……」

「頑張ったな亜美。後は俺達に任せとけ。よし。ここまで来たなら止める壁を作れる」

速度は増して、振り払われた亜美。繁のもとへと走るキリックだが、その動きは亜美のお陰でさっきよりは弱まっていた。

そして、ホクの魔族も到着。ぶつかって攻撃して留めて。とにかくキリックを押し込める。

「ここまで来た。これでこれ以上動こうが、全て止めてみせよう。皆はこっち側にいたほうが良い。またあのようなことをされる可能性はあるんだ」

そしてあの攻撃を真っ当から防御できるサレスもここまで来た。ここまでそろえば、もう大丈夫。

サレスが攻撃を防いで、ホクの魔族が攻撃して。いい状況。

「にしても大丈夫なのか?今手が離せなくて近くに寄ることできないけど」

「私はともかく、お兄ちゃん大丈夫?」

「ああ、さっき繁が受けたのより、多分弱いだろうから」

こっちも大丈夫。これで安心した。

「アタシはお前を倒す。絶対に!」

「亜美はビシバシ動いてるな。亜美の邪魔にならないよう、攻撃を与えろ」

「これぐらいか。あっさり拍子抜けする。さっきまでのと比べてしまうと特に」

キリックの体力もかなり少なくなっていた。そしてついに

「こ、の……あぁぁぁぁぁ!人間め!」

「これが最後の言葉か」

「最後まで勝手に恨みを持ってたやつだった」

ホクと初めて会ったときからの因縁だったキリックは、ついに倒された。特に長野県組の2人が抱き合って喜んでいた。


「ようやく、キリックの件が終わったのか」

「アタシは逃げられて仕方ないと分かっていながらも、心残りではあったから。今日それがようやく消えた」

「そんなことしたから牢屋に入れられたのに。反省しているようならまだ、他の方法もありえたのに」

「牢屋は更生のためとは言うけど、本当に更生するかは、またな」

「そもそも、それで更生するようなら最初からやらないんだ。牢屋自体を否定しているわけではないが」

キリックの戦い終わり、一息ついている。長野県組はようやく長いしこりが取れたことに対する喜びを。富山県組は牢屋に入れられても反省しないでいたキリックへの憐れみをしていた。

「これで三条さんにちゃんと倒したぞって言ってやれるよ」

「理不尽にその件をグチグチ言われてたからな。言い返してやれ」

「あの三条さんがそれぐらいスルーしそうだけど、そうなったらホク頼む」

「俺に何頼みたいか知らないけど、多分俺にゃ無理だぞ」

この件は上司の三条さんからちゃんと倒しておけって念に念を押されて、嫌な風に言われていたのでようやく一泡吹かせられるかもしれない。何が何でも一泡吹かせる。


「それでは、戻るとしようか。その身体は割と大丈夫なんだろ?」

「ああ、これぐらいなら異少課やってるとそこそこあるからな。痛みはともかく動けなくなるとかそんなんじゃない。いざとなったら自力で薬を作成する」

キリックを倒した今、この場所に用事はない。倒したことを伝えて死体の後始末を異少課に頼んだので、帰り道を進んでいく。

「そういえば、ホクと同じ魔族だったな。魔族ならやっぱり、故郷に戻りたいとか考えている?」

亜美が皆に質問をした。

「ここはいいけどな、俺達は戻らなきゃいけない。魔王とその兄、どっちも国にとって大事な存在なんだ。今は大臣が何とか回しているようだが、このまま続くのは避けたい」

「この世界で大事な物をたくさん見つけたけど、やっぱり私はあっちの魔族だから、ちゃんと帰るかな」

「やっぱりそうか。わざわざこんなところに連れてこられりゃ、帰りたいと思うものか」

「私は逆に戻らずにこの世界で生きていく覚悟を決めてあるよ。魔王様にもちゃんと伝えておる。この場所で今までを捨ててでも行きていきたいと感じたんだ。」

割かしここで暮らした時間も長くなっている。それに比例してここでの思い出も多くなっている。

帰らないといけない繁達とは違い、サレスは帰らなくてもいい。なら、もうここからずっとここで過ごしていきたいと考えるのもおかしいことではなかった。


「ホクはどうなの?」

「そりゃ俺だって戻りたいとは思うかな。あっちに友達とか知り合いとか、残してきたものが多すぎるし。亜美とか学校の友達とか、こっちに来てからできた繋がりもあるんだけど、それはそれかな。できることなら、行き来できるようになりたい。まあでも、来てから割と長い時間経つけど戻る手がかりすら無くて、そもそも帰ることすらできないんだけど」

「諦めないでよホク。らしくないじゃん」

「まあそうだけどさ、できないものってのもあるんだよ。それに、こっちが地獄ってわけでもないんだから」

「ホク、そういうのよくない。アタシがどんな気持ちでやってるのか、分かってるでしょ?」

「あぁ……悪いななんか気持ち下げちゃって。亜美はあんだけやってたんだ。いつかあってもおかしくないな」

「ホクが諦めてるから、アタシが1人で色々調べてたんだから。色んな魔族に聞いたり調べたりして、どうにか繋げることができないか。この前の福井県のトルとか、来たばっかりだったからもしかしたら行けるかもなんて思ったんだから」

亜美はホクに何とかして帰ってほしいと考えていた。ホクと出会った、別の世界へといきなり飛ばされてしまって不安になっていたあの頃を見ていたから。ホクが幸せになるのは、魔族が生きづらい人間の世界じゃなくて、魔族が普通なあっちの世界だから。

「それに、一応きっかけはあったでしょ?」

「ああ前聞いたな。だからといってだったけど」

「一応進んでいるんだから。きっかけが無いなんて言ってあきらめないの」

「帰る方法、きっかけあるのか!?」

話を聞いていた凪が急に声を上げた。亜美達と同じく、いやそれ以上にこっちの帰り方は進んでいない。いつかのためにそれは知らないといけないんだ。

「ああ、私としても聞いておきたい。私は使わないだろうが、この2人には必要なことだから」

「もしかして、もう帰ることができ……」

「そんなに大層なものじゃないが、調べていたら見つけたんだ。異世界に通ずるエネルギーを大量に集めたら、2つの世界をつなぐ穴を出現させられるんだと。でもそのエネルギーの集め方はなんとも分かってない。しかも、大量にだからただ1つ集めて使って……なんてのもだめみたい。まだまだ調べなきゃいけないことだらけなんだ」

「異世界に通ずるエネルギー……そんなのどうやって」

「アンダス団なら。何とか知ってそうだけど」

「だからアタシ達はアンダス団を潰すことで異世界と繋げないかとも思っていたんだ。だからといってアンダス団を潰すなんてどっちにしろ現実的じゃなくてな」

亜美はすました顔で伝えた。ホクのために何とかしたい、そんな熱意が伝わっててきていた。

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