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第18話・一工夫の個性

スマホのメモ帳に書き殴っておきながら、更新してませんでした!

一応5月設定です。

時期的に、夏のイベントの仕込みが始まる頃ですねぇ……

 インスタント。日本語で言えば『即席』。意味を辞書で引くと「その場ですぐする事」。席も立たずに即やること。


 この日の若葉の仕事はまさに即席だった。

 締め切り時間を過ぎてから先輩に泣き付かれてしまったのだ。


「若葉ちゃーん!ヘルプ!企画が思いつかなくてさー。ほら、若葉ちゃんってグルメじゃん?展示場で料理を提供しなきゃいけない企画があって、そこでどんな料理を出せば良いかを参考資料として出さなきゃいけないんだよ。」


 若葉の返事を待たずに、概要説明までする先輩。

 この先輩は元々ルーズなところがあり、いわばいつもの事であったのだが、なかなかな投げっぷりである。


「参考資料の添付が必要と言うのであれば、何か条件があるんですよね?」

「さっすが若葉ちゃん♪そうなのよ。条件は、展示場の条件として、水はあるし冷蔵庫も設置出来るんだけど、消防法の都合でガスコンロなどの火の使用は禁止。電子レンジとIHヒーターはOK。衛生管理の都合で、生物もNG。予算的に料理人の駐在も厳しいの」


 思ってた以上に悪い条件だった。


「あと、締め切りはもう過ぎてるから超特急でシクヨロ!パパッと書いちゃって♪」

「なんで締め切りがもう過ぎてるんですか!」

「いやぁ、こんなの余裕でしょ♪って思ってたら、時間が過ぎるのが予定より早くてね」

「時間が過ぎる速度は人類皆平等ですよ!」


 若葉は文句を言いながらも、現在進行形の作業を中断して、早速取り掛かる。

 飛び込みの無茶振りをされて、機嫌が良いわけが無いところに、追い討ちされる。


「あ、イタリアンが良いな♪」

(ランチを決めるような軽さで追加注文をしないで欲しい……)


 本来であれば、フードコーディネーターに相談したり、十分にノウハウのあるイベント制作会社に外注したい案件である。

 少なくとも、広告代理店の営業が一人で案を出すような物では無いのだが、企画を動かさねければならないのが現実である。


 ゲンナリしつつ、手を付けなければ終わらないので、全力を尽くす事にした。


(条件を考えれば、その場での本調理は無理だ。

そもそも衛生管理の都合で生物がダメなのだから手の出しようも無い。

理想は調理済みの冷凍食材だろう。

煙が出ない程度の加熱も出来るだろうから、ほぼ調理済み食材をつかうのも手だろう。


イタリアンと言えばパスタだけど、麺を茹で済みで、ソースと絡めるだけなら行けるかな。

パウチ管理かスープストッカーによる管理か、試作する暇もないから冒険過ぎない範囲で記載して、企画が進んでからチェックして貰うしかないか。


チェーン店仕組みをダウンサイジングして……やり過ごそう!)


 実際のチェーン店でのオペレーションを参考と断りを入れつつ、とりあえずリクエスト通りにイタリアンでの提供料理の例を書き上げた。



 この業界の24時間は、24時まででは無い。

 そもそも24時間では無い。

 諸説あるが5時から始まり、34時まである。


 締め切りが五月一〇日だったとしよう。

 世間で言う時間では五月一一日の先方の会社の営業開始時間前まで、十時営業開始なら五月一一日の午前十時まで五月一〇日なのだ。

 つまり、五月一一日午前十時は、この世界の時間では五月一〇日の三十四時なのである。



 終電には終わらせて帰宅出来たが、料理をする気力も残っていなかった。


(午前様なのにカップ麺はギルティだと分かっているのだけど、空腹のまま寝ると良い睡眠が取れる気がしないな)


 電子ケトルに水を張ってスイッチを入れ、雑にシャワーを浴びる。

 今日の反省は帰りの電車で終わらせてあるので、頭の中はこのあと食べるインスタントラーメンについてだった。


 何がストックされているか、そして食材や調味料は何があるかを思い浮かべる。


(イタリアンか……せめて罪を軽くしたいな……)


 仕事中にイタリアン料理のアレコレを頭に思い浮かべていた影響で、すぐに思いついたのはイタリアンだった。

 中華料理であるラーメンとイタリアンの組み合わせで思いついたのは三つあったのだが……手間をかけずに出来るとなると、一つに絞られた。


(よしっ♪ レシピは出来た♪)


 空腹の時、一人暮らしの深夜となれば、男も女も関係ない。少しでも早く食べ物を口にするために、バスタオル姿のまま調理を開始する。


(塩でも味噌でも合うけど、今回は鶏ガラ醤油にしよう!)


 いくつかストックされてるカップ麺の中から、鶏ガラ醤油味を選び、横の調味料ストッカーから三つ取り出した。

 ガーリックパウダーと、乾燥バジル、そしてトマトペーストだ。


 補足すると、トマトペーストはトマトピューレよりも濃度が高い。

トマトピューレが二倍から三倍に濃縮された物に対して、トマトペーストは五倍以上濃縮されている。家庭で作るには難しいほどに水分が抜けているのである。


 カップ麺の蓋を開け、途中で止める事なく、そのまま最後まで蓋を取ってしまう。

 加薬袋と調味袋を取り出して、そこにシャワーを浴びているうちに沸いて少し冷めたお湯を規定量注ぎ、そこにトマトペーストを絞り、ガーリックパウダーを少し振りかけた。

 そのまま電子レンジにカップ麺を突っ込みレンジを弱設定に切り替え、待ち時間の五分をタイマーセットしてスイッチを入れる。


※なお、カップ麺で電子レンジを使用することはメーカー非推奨ですし、使用出来る条件などもありますので安易に真似しないようにして下さい。今回は熱湯の温度が低くなってしまったための応急処置になります。


 その5分の間に着替えをしてしまう。


 ピーピーピー!


 電子レンジの完了を知らせる音が深夜の台所に響く。私の着替えも完了している。


 溶けきっていないトマトピューレや固まったままの麺を箸で解していく。立ち上がってくるラーメンの醤油と魚介、そしてトマトの香りが空腹を促進する。

 そこに乾燥バジルを振りかけると……中華だった醤油ラーメンが、イタリアントマトラーメンへと変貌を遂げる。


「こうもイタリアンな感じにまとまると……もうちょっと……」


 と、若葉は粉チーズとエキストラバージンオリーブオイルとタバスコを取り出した。

 軽くチーズを振ってオリーブオイルを回し入れる。


「出来た!……んだけど、オリーブオイルとチーズを入れたら、コレは流石にギルティなのでは……ま、いいか♪」


 こんな深夜に反省するのは無駄である。反省するなら翌朝にするべき。と、湧いてきた罪悪感をあっさりと手放して、テーブルに着く。


「では、頂きます」


 カップから漂うのは強い醤油と魚介とバジルの香りだが、口元に麺をリフトするとほんのりとオリーブオイルの香りが一気に完成度を高める。

 ずずっと啜れば、口当たりはラーメンなのに身体がトマトソースに支配される。


「……っと、トマトは強く色が付くから、汁跳ねに気を付けなきゃ……」


 ちょっと下品にはなるが、カップに口をつけながら二口目を頂く。


(これなら、赤は無理でも白ワインならいけるかも?)


 おもむろに立ち上がり、白ワインを探しに行く。残念ながら料理用の赤ワインしか無かった。


「ま、発泡酒でいいかな」


 テーブルに戻りながらも待ちきれずぷしゅっと開栓して、座りざまに一口頂く。


「ぷはぁ♪」


 途中でタバスコを加えて味を変えながら、一人打ち上げはまだまだ続く。

一応8月のイベントの企画書と言うイメージで書きましたが、ぶっちゃけ遅すぎます(苦笑)

広告代理店であればすでにPRが始まってなきゃいけない時期ですし、なんならもう業者発注しなきゃいけない時期ですよ!


知らんけど。


ちなみに、僕の方もすでに来年の仕事の話とかになっています。

ありがたいですねぇ……


この執筆は、いい気分転換になりました♪

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