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怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!  作者: タハノア
古霊の尖兵編

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068-あなたの国へ共に行きます

 私がピクツの開発者だとわかってからのジェスさんは災難でしたね。双子の妹のフルーチさんから容赦のないお説教。そこにアリッサが「寝っ転がりながらの自己紹介は斬新だったな~」と火に油を注ぐ。やっぱりあれにはイラッとしたのねフフフ。「すみません!」とジェスさんがフルーチさんに謝ると「私に謝ってどうするの!違うでしょ!」と言いジェスさんは私に向かって「すみません!」と謝る。私が「お気になさらず」と言ってもお説教は止まらず、過去の失敗まで持ち出して延々と続く。


 終わりの見えないお説教で、可哀想になってきたので助け舟を出した。


「ジェスさんの事はもういいので、無属性魔道具の話を聞かせてくれませんか?」


 フルーチさんはハッとして「すいません!ついいつもの癖で」とおっしゃっていました。これがいつものことなのですね……。


 本題に戻りフルーチさんから井戸の魔道具についての話を聞いた。初めは誰でも使えるように魔力を一切使わない水汲み装置を完成させた。だが代わりに動力が筋力になったことにより、か弱い女性や子供が使うことができず誰でも使える道具とは言えなかった。それから改良を重ねるがどうも上手くいかなく、悩んでいたころ進級先の魔道具科に無属性魔道具研究所があるのを発見した。無属性魔道具なら誰でも使えるという理念が叶えられるかも?と思いすぐにここを見学したそうです。


 そして見学中に見つけたのがピクツの本体と特許申請書の写しだったそうです。それから進学先を決めて、今までの水汲み装置に動力としてピクツを組み込んだところ実用可能な物ができたので試験をしていたそうです。


「そんな経緯があって引き継いでくれたのですね。素敵な後輩ができてとっても嬉しいですわ」

「そう言ってもらえると益々やる気がでますね」

「必ずピクツを使った魔道具を広めてみせますよ!」


 この2人がいれば学園の無属性魔道具研究所は安泰ですね。この2人が卒業したら自立した無属性魔道具研究所ができるかもしれませんね。


 そんなことを思っていたらなんだか廊下が騒がしくなってきた。授業が終わり生徒が教室から出てきたようだ。


「マルレ~授業終わったみたいだから早く聞き込み行こうよ~」

「そうですわね」


 アリッサは、また私の研究者熱があがって話し込まないようにと急かしてきた。横で話を聞いていたフルーチさんは私達の他の目的が気になったようです。


「聞き込み?なにか調べごとですか?」

「ええ、探している同級生がいまして居場所を知る人がいないか探しに来たのです」

「そうなんですか、お名前は?」

「ガオゴウレンさんです」

「ガオゴウレン先輩なら何度かここに来ましたよ?」

「いまどこで何をしているかおっしゃっていましたか?」

「えーと確か国へ戻るって言ってましたよ何時だったかな?ジェス覚えてる?」

「あー覚えてないけど今朝港で船に荷物積んでるの見かけたよ」


 今朝……船に荷積み?それって……!?


「アリッサ!不味いわ!まだ間に合うかもしれない急ぎましょう!」


 私はジェスさんとフルーチさんに「ありがとうございました」とお礼を言って研究所から飛び出した。「マルレ待って~」と懸命についてくるアリッサを引き離さないように調節しながら急いで港に向かう。港に近づいてくると人通りが多くなり思うように進めなくなり焦りがでた。埠頭につくと船を一隻ずつ見て回る。体が大きくて獅子のような雰囲気の彼を探す。クロービに行きたい!私も連れて行って欲しい!


 その中に他の船とは様式が違う船が一隻見えた。あれに違いない!


 その船に駆け寄りガオゴウレンさんを探す。


 潮風に揺られるウェーブの掛かった長い金髪の男性が目に入ると思わず声を上げた。


「ガオゴウレンさん!」


 彼は驚いた顔で私をじっと見つめる。


「まさか君から来てくれるとは……私は国へ帰ることになった……最後に会えてよかった」


 ダメ!私もクロービに行きたいのよ交渉もせずに帰らせてたまるものですか!短くスパッと私の意思を伝えなくては!


「待ってください!」


 短く!いちばん大事なところ以外は省いて……


「私は!あなたの国へ共に行きます!よろしいですか?」


 よし!これでいいわクロービに行きたい事と推薦が欲しいことを上手く一言にまとめられたわ!


 一瞬の静寂の後……甲板にいた人たちからワッと歓声が上がった。「坊っちゃんやりましたね!」「大逆転ですよ!」「やっぱり婚約に縛られてただけだったんですよ!」


 この人達が何を言ってるのか理解が追いつかない。ガオゴウレンさんは今まで見たことない優しい笑顔で私を見つめている。


「マルレリンド……勿論だ!共にクロービに行こう!」

「はい!ありがとうございます!」


 私は満面の笑みでガオゴウレンさんに答えた。やった許可が取れたアリッサも喜んでるかなと後ろを振り返ると苦笑いのアリッサが口を開いた。


「ちょっと!マルレ!なんでいきなり告白してるの?」

「え?何のことですか?」


 告白?私が言った言葉にガオゴウレンさんの言葉……甲板の人たちの歓声に祝うような言葉……。


 私は第三者視点に立ち、今起こった出来事と過去の記憶を照らし合わせて整理してみる。


 いつかどこかで見た恋物語……彼女は男の求婚を何度も断っていた。男はある日を境に急に彼女の前に現れなくなる。清々したと思っている彼女だったが何か引っ掛かるものを感じて日々をすごしていた。しかし彼が今日出国すると人づてに聞き引っかかりの正体が判明する。それは恋だ!そして港に駆けつける彼女……出国する男を見つけると彼女は[あなたが好きです私も連れて行って]と告白しハッピーエンドを迎える。


 うああああっっああああああ!


 違います!本当に違いますぅぅうぅぅううう!


 私は拳法のことが知りたいだけです!そういった気持は一切ありません!端折ったのがまずかった!はたから見たら告白しているようにしか見えない!どうしましょう!そうだ!


「アリッサ……時間を戻す魔法とかあります?」


 頼りにした親友は大きなため息を付き「そんなのあるわけないじゃん」と呆れた顔をした。


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