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ピアニッシモ・レジェーロ

「さぁ、森に入るわよ...」



かなり緊張した様子の雅の横でヒビキはネタが滑ったショックで『頭を抱える』を現在進行形で発動させながらフラフラと歩みを進めた。


~30分後~



「おかしい...」



森の外でも人間と共生する穏やかな性格の魔物をよく見かけるというのに、森の中の道では1匹たりとも出くわさない。



「ヒビキなんだかおかしいわ。森の中心なのに何も無いのよ!」



「ん...もう中心なのか、わりぃずっと下向いてた。」



明らかにまた精神的な方でやられて顔色が悪い。虚ろなツリ目を細めているので目付きが非常に際立って悪く見える。



「大丈夫なの?」



ショックの余り気だるけモードからは抜け出せないようで、細め具合が若干改善されたぐらいしか効果はなかった。が、少なくとも視線を前には向けるようになった。



「数年前まで森の真ん中にあった屋敷がいつの間にか忽然と消えたって話があって実際数年前まで大きな屋敷があったの!それだけ怪しげな森だから確実に何か手がかりがあるの思ったのに...」



「んー、見えてないだけかもだぞ。」



「え?今なんて?(いつもと雰囲気が...)」



魔法ありの世界なら屋敷1つくらい隠れていてもおかしくはない。ヒビキは胸元からホイッスルを出した。おもむろに吹かれたホイッスルから放たれた光からはタキシード姿になったヒビキとオルガンが現れた。



「ちょっと!急にどうしたの!?」



雅の言葉はヒビキには届かなかった。顔は気だるけに力が抜けているが、無表情で真剣な様子がうかがわれる。



「弱く...優しく...そっと投げかけるように...」



言葉とは裏腹にヒビキはぐっとペダルを踏み込んだ。



『そんなに踏み込んだらいくら”四分音符”でも大音量の弾丸が出

てしまうわよ!』



「マンゴーちゃん!ヒビキを止めて!」



マンゴーにとっても想定外だったようで立ち尽くしていたがハッとしてヒビキを止めようと駆け出す。



『急に破壊行動を起こそうとしてどうするんだい!ヒビキ落ち着いて!』



明らかにぼーっとしつつも集中するヒビキにマンゴーが飛び乗ろうとした瞬間、何かを呟く。



「...い」



『「え...?」』



「うるさい!奏者の演奏止めんじゃねぇ!」



『『「...!」』』



ヒビキの苛立ったような声にその場にいた雅やマンゴー、さらにはレタまでもが凍りついた。下手なネタで滑った時の凍りつきとは全く違う、集中するヒビキの圧力に胸が苦しくなるような空気が漂う___



「ピアニッシモ・レジェーロ...!」



ヒビキがゆっくりと鍵盤を弾くと同時にポロン、ポロンと小さな音で『練習曲【ドレミファソラシド】』とは違った四分音符の弾がゆっくり飛び出した。



ふわふわと淡く輝きながら飛ぶ複数の四分音符は四方八方へと別れ、地面や木々に反射している。



「すごい...妖精が飛んでるみたい...」



音符のうちの1つが何かに当たったようで空中で静止している。1つ、また1つ...と次第に全ての音符が空中で何かに当たって静止した瞬間、淡い光が当たった何かを包み込み始めた。



「何これ...ヒビキどうなってんの!?」



ヒビキは黙ったまま下を向いていたが、光の拡大が止まった瞬間、光が完全に包み込んだ何かの方へ顔を上げた。



光の粒が端からサラサラと剥がれ落ちて風に舞う___



「これは...!?」



現れたのはかなり年季の入った巨大な洋館だった。



「ヒビキそんな魔法どこで覚えたの?」



「え?なんとなく。ぼーっとしてたら使えそうかもなって。」



『ヒビキすげー!』



ほら、オタクって魔法少女モノ飛びつくじゃないですか。あと俺AB型だから妄想癖あるしぃ。(*ヒビキは確かに妄想癖がありますが血液型占いはあくまで迷信です)魔法使えるならねぇ、自分オリジナル魔法使ってみたいよねぇ!



どんどん鼻が伸びていくヒビキの横で雅は笑顔から一転、少し憂いを帯びた顔をしている。



「雅?顔色悪いぞ?」



「だってこれだけ大きな屋敷1つに影まで完全に視認識阻害魔法をかけ、更に触れてもすり抜ける魔法までかけられる術者よ?どれだけ強力か計り知れないわ。踏み込むのは危険よ。」



「大丈夫だ。俺に考えがある。」



ヒビキはニッと笑った___

今回登場したピアニッシモとレジェーロですが色々とツッコミたい方々が居られると思います。そこいらのツッコミに対しては章末まとめ回で解説する...はずです!

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