黒影屋敷
しっかしまぁ、立派な洋館が現れて「わーこんなところに館がー」とはなったものの、どっからどう見てもマ⚫オのお化け屋敷なんだが、こんなものを隠して誰かさんは何がしたかったのだろうか?
「懐かしい、拾われてからしばらくは山の上からこの屋敷が見えていたの__」
静かに語る雅の視線の先の館に活気は無く、影に包まれてガラリとしている。だが窓や戸口は綺麗に掃除されており、それがより一層不気味さを際立たせている。
「”黒影屋敷”___村の伝記に登場する魔界から出てきた3家の悪魔達が住まうとされる家よ。今みたいに一日中影がかかっているから黒影と呼ばれるようになった。数年前に消えるまでは悪魔の住む森の象徴として恐れられ誰一人とて近付こうとしなかったから実際に悪魔が住んでいたんじゃないかしら」
じゃないかしらって雅サァン...それここBOSSバトル勃発ポイントフラグビンビンじゃないですかやだぁ...
「さ、入るわよ。こうしちゃいられないわ!マンゴーちゃん!敵が現れたら〜?」
『ぶっ殺す!』
「よく出来ました〜!」
完全に我が子にお約束守れるかな〜?っと確認する親そのものである。だがそんな戦い直前とは思えない的外れな発言には自己暗示を含ませているようで、よく見ると彼女の足は少し震えている。ヒビキは、俺がしっかりしなくてはと己を勇気づけたのであった___
~1分後~
「はっ!ふっ!これは俺の出身国に伝わる秘伝のウォーミングアップ【ラジオ体操】というものだ!」
「ふんっ!ふんっ!よく分からないけど身体に良さそうね!」
~5分後~
「ふっ!ふっ!これが秘伝のウォーミングアップその2の【ストレッチ】というものだ!」
「うっ!ぐっ!これで身体が柔軟に使えるようになって怪我を防ぐわけね!」
〜10分後〜
「入るで!?」
「んっ!んっ!(相槌)」
「入るで!?」
「うっ!うっ!(相槌)」
「ほな入るで!?」
「・・・」
「ん?雅さん相槌は?」
「はよ入らんかボケー!どこまで引っ張るのよ!こっちは早くお兄様探したいんじゃぁぁぁ!!!」
「あっ、そんな押さないで...」
【ガチャっ...】
「「oh...」」
重厚そうに見えた扉は軽〜く開いてしまった。ここまで来たら引き下がる訳にはいかない。
「おっ...おじゃましまぁ...ガタガタガタガタガタ...」
うーん我ながら酷い焦りっぷりだ。この雰囲気で何か飛び出してきたら██モノなのだが、幸いにも人気ならぬ悪魔っ気けは全く無かった。
「なーんで構えが産まれたての子鹿スタイルなのよ!」
「ははっ...実は私足だけ幻影で震えて見えるんですよ、はい。幻影...」
我ながら酷い言い訳である。こーれは酷い。
雅とマンゴーとレタからの目線が背後にぶっ刺さっている。「もうやめて!ヒビキのメンタル体力はゼロよ!」と心の中で叫んでから恐る恐る振り返ると...全員が消えていた___
~5分後~
「うーん変わった所は無いわねぇ...んっ?」
雅がさっき歩いて来た廊下を誰かが叫びながらこちらに向かって来る。
腰に掛けた短剣に手を添えて腰を低く屈めて身構え、一気に全身に緊張が走り、心拍数が一っ気に上がる___
「みやびじゃぁぁぁん!どごいっでだのぉぉぉ!」
走り寄ってきて飛び付いてきたのは勇者の風格が欠片もない泣きじゃくるヒビキだった。
「はぁ...どーしたのよ。何があったの?」
「何もながっだげどびどりにじないで〜!」
「ま、まぁ落ち着きなさい!放って行ったのは悪かったから!深呼吸して!」
こんなところでもし悪魔3家に見つかれば勝機はない。走ったり叫んだりする行為は避けるべきだ。
「ひっひっふ〜!ひっひっふ〜っ!」
「それ絶対深呼吸じゃない!」
その瞬間不意に廊下から何かがまた飛び込んで来た。
『ナニナニー?お取り込み中?』
「キャ〜ッ!でっ、出た〜!!!(汚い裏声)」
「はぁ...ヒビキよく見なさいよ。」
「ん...?はっ!マンゴーじゃないか!モフモフ...」
隙あらばもふもふに抱きつくヒビキはマンゴーの背中に顔を埋めている。今日は浮き沈みが激しいどん底ヒビキを下手に混乱させたくはなかったが、勝手にもふもふに夢中になって上機嫌になってもらえたので杞憂だったようだ。
『じゃあ最後に確認したいんだけど、戦いになったとしてボクはのその時具体的に敵に何すりゃいいの?』
確かに決めていなかった。よく気づけたなと思うがそもそも俺も全く考えていなかった。
「んー、じゃ、足元をしつこく攻めましょう、特に膝下とか」
『がってん承知!』
戦いの影がそこまで迫る中、俺は1人物騒なモフモフに抱きついて泣いていたのであった___




