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響かせ

「え”?」



一同が目を疑い、猿をも攻撃止めた。



そこに立っていたヒビキは...



まさかのタキシード姿だった。



「その格好では戦えそうにないわね...」



女はぐったりとして、マンゴーは「あ、オワタ...」という顔をしている。



全く失礼な奴らだが文句が言える状況でもないし、文句を言える姿でもない。あのフード女、さてはどこかで「タキシードwやっぱじわるw」と笑っているだろう。



諦めかけると同時に空中に武器が出現する。投げナイフとかならまだ分からんでもないが、ノーコンの俺ならうっかりもっふや女に当たってヘッドをパッカーンしまいそうだ。『勇者、バトルで誤って味方が死亡!』そんなの惨劇でしかない。



かといってそこいらの木の枝を武器に...いやだめだ。木の枝なんてRPGで幼少期の勇者の武器じゃないか!しかもへぼすぎて投げナイフよりも惨劇になりそうだ。



『号外!勇者、木の枝振り回すも死亡』なんて記事書かれたら末代までの恥だ。死ぬんだから末代もどクソもございやせんがね。



味方全員が絶望し、猿でさえ困惑を隠せない無様な姿でしばらくオタク脳全開にして武器になりそうなものを探していたが、少し遅れて現れた空中に現れた武器を見た瞬間、ヒビキは納得した。



「あっ、そーゆー事ね。」



空中には鍵盤だけのオルガンが浮いていた。



その瞬間。ヒビキの脳内である思い出がフラッシュバックした___



あれはヒビキの幼かったある日の出来事。



「キミは不思議な音を奏でるのね。名前とピッタリの特技じゃないの。」



興味深そうに見つめて来たのは後の幼馴染、妙花だ。



「疲れてそう、だけど元気。楽しそう、だけど悲しそう。とっても不思議ね。」



初めて俺たちが出会ったあの日、妙花は横で目を閉じて静かに俺のピアノの練習を聴いていたんだっけな?___



俺のオタク以外の1つだけの特技、それはピアノだった。昔は(今も)人前が苦手すぎてずっと1人か先生の前でしか弾かなかったから発表会に出たことは無い。



あの事件の直前。久しぶりに妙花に演奏を聴きたいと頼まれた。その時も彼女は小さな頃と同じように静かに目を閉じて聴いていた。そしてその年にしてはやたら大人びたことを呟いた___



「昔からヒビキの音は変わってない。でも、それはいい意味。貴方はそれでいい。その音を堂々と奏でていればいい。」



うっすらと感動したように涙を浮かべて言っていた。それはどこかしら俺を自分の息子のように慈しんでいるようにも見えた。



高校生になってピアノは売ってしまい、生活費に使ってしまった。アパートに持ち込むわけにもいかなかったし、生活もかなり苦しかった。バイトで必死に生活費と食費、教育費を支払い、たまにはピアノが弾きたくなったら音楽室で弾かせてもらっていた。でも、すぐにいじめが始まってそれどころではなくなった。


*****


彼女が記憶の中で言っている。「ピアノを弾け!そして、貴方だけの音を響かせろ!」と___



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