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ホイッスル

『じゃじゃーん!キミにはこれをあげちゃう!』



そう言って女が取り出したのは金属製のホイッスルだった。思ってもいなかった自分の武器の形に驚いた。



『これを吹けばあら不思議!自分専用の武器が現れる!更にサービスで武器に似合う衣装に早替わり!』



口調がセールスっぽいな...



最初はおしとやかだったのに、急速にハイテンションになったので、だんだんこの女の性格が分からなくなってきた。



吹いてみようとするヒビキを女は慌てて止める。



『だめよだめ!現実に帰ってからのお楽しみ!あと、これとこれとこれ...あぁ、これも必要ね!』



あれやこれやとスポットライトが当たる道具の山から必死に物を袋に詰め込んでいる。俺が手に持っているホイッスルは一見何の変哲もないように思える。



自分なりに外見から解析を試みていたが結局はただの笛みたいな武器ということになった。そうしているうちに女は袋に荷物を詰め込み終わったらしく、小さな袋を差し出してきた。



『ほい!これが魔法袋ね。何入れてもこの大きさでどっかに置いてきてもこの袋をイメージすれば手元にワープしてくるわ。......あぁ!そうそう!貴方の大切な首飾りだけど、能力はあなた自身に移っているわ。右腕に模様が出てるでしょ?』


右腕を見て驚いた。3センチ四方ぐらいの四つ葉の形をした、絵の具で塗ったような黄緑色の模様が浮き出ている。いつの間に...普段意識して腕をわざわざ見るようなことはしないが、この大きさだと流石に気がつく。少し擦ってみたが落ちそうにもない。



「コレからは逃げられないのか...」



俺は少しわざとらしかったが大きめのため息をついた。もう死ぬ必要は無いと思ったんだが。



『だけど異世界では話は別ね。その力は貴方を救う手段となりうるわ。』



女はどこかしら少し悲しそうな顔をしながら手を胸元で握った。



『そろそろ時間。貴方はこれから異世界生活を送るわけだけれど、それがどんな結末を迎えるかは私は分からない。ただ、私が望む結末を迎えることができたなら...その時貴方は希望を手にしているはずよ。困ったら私を夢に呼んでね。相談に乗るわ。』



だんだんと暗闇に光が差し込み始めた。夢世界はゆっくりと光に消えてゆく___



かなり薄くなってきた夢世界、消え去るその瞬間。女はいつの間にか顔に笑みを戻し、思い出したように叫んだ。



『そうそう!ホイッスル、失くさないでね!万が一のときは強くイメージすれば袋みたいに貴方の元へ飛んでくるわ!』



ヒビキは小さく頷いて夢から目覚めようとする時の流れへと身を任せた___



*****



光に包まれた世界で女は静かに呟いた。



『彼の旅を音楽で例えるならば...』



『【前奏曲】といったところかしらね___』



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