第08話 Bパート④ ーダイデンダー、大誕!ー
目覚めると、照也は宇宙を漂っていた。
「うおおっ! なんだこれ!?」
薄暗い中遠く星々が煌めき、遥か彼方には銀河がいくつも渦巻いている。
息はできる。体も動く。折れたはずの足は元に戻っていた。
「ここは一体……?」
「ここは創生宇宙。新たなる大誕を待つ星々の海」
「誰だっ!?」
声に出した疑問に予想外の返事。
照也が振り返ると、そこには地球のように巨大な緑の星と、その正面に立ち光を放つ、人の形をしたナニカが立っていた。
※ ※ ※
「私の名前はN。新たなる大誕へ君を導く者」
「N……?」
頭の中に直接響いてくるかのような声。
残響する音は低く、辛うじて男性の物のように思える。
「大殿照也、君を目覚めさせる3つの奇跡がここに揃った」
「何を言って……?」
「可能性は決して高くはなかったが、道はどうにか繋がったようだ」
人の形をしたナニカは、照也の言葉など耳に入っていない様子で語り続ける。
「3つの奇跡……希望、愛、そして知。すべてが君に備わった今、新たなる大誕はここに叶う」
ナニカがそう告げた瞬間。
照也の首元、右手首、そして全身が、それぞれに光を放ち始めて。
「これは……」
首元からふわりと飛び出したのは、絵瑠からもらった紫の宝石。
右手首で眩く輝きだしたのは、円からもらった鋼の腕時計。
そして全身から溢れる光を、照也は哀が教えてくれた命の力だと魂で理解した。
「新たなる大誕の時、来たれり!」
キンッ!
秘石がひとりでに飛び出しネックレスから外れ、腕時計型のガジェットに宿る。
二つの輝きが一つになって、それは新たなブレスレットへと変貌した。
背中が熱い。
気づけば照也の背後に、太陽のごとき恒星が出現している。
「大殿照也よ、己が魂に従え。君こそが……絶望を祓い浄化する、新たなる力だ!」
「おおおおおお……!!」
プラーナを燃やす。
全身を包み込むような力が、これこそが、自分の武器なのだと理解して。
「叫べ! 新たなる力、勇気を振るう戦士……勇者よ!!」
ナニカの呼びかけに、それ以上に自分の根っこにある魂の声に従って、照也が吼える。
「ブレイブ・オン!」
勇者が目覚める!
「おおおおお……!!」
照也の体中を炎の帯が駆け巡り、衣装を燃やして裸体のようなシルエットを浮かびあがらせる。
胸の前に右手のブレスレットを掲げれば、紫の宝石が輝きを放ち、次の瞬間には緋色に輝くガントレットへとその形を変えた。
ガントレットから炎の輪が腕のラインに沿って走れば、駆け抜けたところにタイツめいた紅蓮のスーツが現れ、照也の体を引き締めていく。
その変化は体の各部で同時多発的に発生し、あやまたず照也の首から下を炎のスーツで染め上げた。
「はぁぁぁ、ふんっ!」
心の赴くままに体を動かす。振り抜いた先で白銀のブーツが、グローブが生成され、ブーツには猛禽類の爪を思わせるフックが伸びる。
「ふぅぅぅ……」
動きを止め、息を整える。左肩に肩当てが生成されれば、そこから心臓を守るように溶岩のような赤熱色の胸当てが装着されて、左右非対称の鎧が完成し。
ボオッ!
突如として、彼の頭部を炎が包む。
それはすぐさま目と口元以外を覆う紅蓮のヘルムへと変化すれば、左右に鳥の羽を模した大飾りが翼を広げた。
バサッ!
左肩の肩当てから背面に、体半分だけを覆い隠す真紅のマントが伸びる。
その内側に、果てなき星々の海を包み。
シュインッ!
照也の視界をエメラルドグリーンのバイザーが覆えば、次の瞬間、世界が爆ぜる!
「ドッ!?」
「なっ……!?」
爆発の輝きを抜けた先。
バイザー越しの瞳に映るのは、今なお危機に瀕した大切な人たちの姿。
気づけば照也は、元の空間へと戻っていた。
「お義兄ちゃん……なの?」
「そうだよ。アレは……わたしたちのだーい好きな! 弟くんだよっ!!」
愛する人たちの声がする。
まだ間に合う。まだ助けられる。まだ、守り通せる!
「ドレッ!」
「………」
「ドッ?!」
倒すべき敵を、ひと睨み。
照也の全身に、溢れんばかりの力が漲ってくる!
「……すぅ」
魂が示すまま、照也は身構える。
どうすれば戦えるのか、この命その物が教えてくれる。
心の奥底から燃え上がるように湧き出る言葉を、彼はそのまま口にした。
「魔法勇者! ダイ・デン・ダーーーーーッッ!!」
その魂の叫びは、絶望に対する照也からの宣戦布告だった。
※ ※ ※
「魔法……」
「勇者……?」
「ダイデンダー……」
照也の魂の叫びを耳にして、囚われの少女たちは口々にその名を呼ぶ。
何が起こっているのかわからない困惑が3人を満たしていく、そのそばで。
「ドレッ!」
「「「きゃあああーーーー!!」」」
新たなる脅威を認識したソウルイーターは、警戒心を露わにイソギンチャクめいた体を揺らし、まずは触手で捕えていた邪魔なモノを思いっきり振りかぶって放り投げた。
「……!」
それを認識してからの照也の動きは俊敏だった。
「うおおおおお!!」
叫ぶ間に石畳を蹴って飛び出せば、触手から放り出された三人の落下地点まで数秒とかからずに到着。
バイザーで強化された視覚から助けるための最短ルートを割り出し、即座に実行。
「わわわっ」
「きゃっ!」
「うっ」
円、絵瑠、哀の順番に抱えこみ、落下の衝撃を殺してふわりと地面に着地する。
三人に命の危機がないことを確かめ優しくゆっくり降ろしたら。
「あとは任せてくれ」
一言そう言い残し、勇猛果敢に異形へ向かって飛び出した。
「ドーレーイーーーーーン!!」
最大限の警戒とともに、ソウルイーターが大量の触手を展開。
四方八方から照也めがけて一斉に狙い撃つ!
「ふんっ!」
先頭の触手を照也が右手のガントレットで受けると。
ボッ!!
接触とともに触れた部分の触手がはじけ、吹き飛んだ。
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
続けて手刀に構えた照也が腕を振るえば。
シュババババッ!!
大量の触手たちは次々と切り裂かれ、あっという間に異形の体が禿げ上がる。
そしていかなる神秘か、破壊されたそれらが再生することはなかった。
「ドレェッ?!」
「お前に引導をくれてやる!」
瞬間。
照也の右手のガントレットと一体化した、紫の秘石が光を放つ!
自然公園の木々がざわめき、大池の水面が激しく波打つ。
トドメを差す。
照也の強い決意が魂と共鳴し、必殺の名を叫ぶ!
「マージーカールーーー……」
右腕を引き絞り、強大なプラーナを溜めこんで、力を一点集中!
「……ブラスタァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
叫びとともに突き出されたこぶしから、紫色の極太光線が放たれる!
その輝きは敵の巨体をたやすく飲み込み――。
「ドレェェェェェ!?!?」
「絶望よ! 天へと還れーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「ドレッ、ギァァァァァーーーーーーーーーーー!!!!」
――その身を祓い、茜の空を切り裂いて、天高くまで消し飛ばす。
プシュウウ……!
突き出したこぶしから蒸気のように残留プラーナを廃棄して、すべては決着した。
「……す、すごい」
「何なの、あの力は……」
「お、お、お……」
日が暮れる。
空に少しずつ、星の輝きが瞬き始める。
「弟くんっ! すごすぎるよ~~~~~~~~~~~!!!!」
飛び跳ねて喜ぶ円の見ている先。
夜に変わっていく世界でなお紅い、緋色の鎧を身にまとった新たなる戦士は。
「これが俺の、力。みんなを、日常を守るための力!」
自らが得た絶望を打ち払う力に、心の底から歓喜に震え、胸を高鳴らせていた。
魔法勇者ダイデンダー。
愛と希望と絶望の世界に、今、守り手たる勇者が大誕した……!
キミたちに、新たなる物語へのカギを託そう。
ダイデンダーとなった照也は、円たちの手によって見知らぬ場所へと連行される。
たどり着いた先は、古より人々の営みをそばで見守ってきた魔女たちの集会場。
今では迫りくる絶望への最前線となった場所、DDDたまな市支部!
多くの真実、多くの出会い、その先で照也は己の行く道を決める!
魔法勇者ダイデンダー。第2話!
『ようこそ、DDDへ!』
次回もキミたちの勇気とともに、ブレイブ・オン!
※次章より、隔日1話投稿ペースとなります。投稿時刻は変わらず20時を予定しております。ご了承ください。また、ここまで読んで、面白がっていただけましたなら、ぜひぜひ感想、高評価など軽くポチッとよろしくお願いします!




