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魔法勇者ダイデンダー ーDDDー  作者: 夏目八尋
第3章 ダイデンダーVSブラックスワン!
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第18話 Aパート① ーチーム結成ー

読んで下さりありがとうございます!


 DDD、ミーティングルーム。


「チームを作る?」


 集められたメンバーの中、照也がキョトンとした顔で問いかける。


「そうじゃ。お前たちにはチームを組んでもらう」


 それに対し、ソファにずっしり腰を下ろし杖に手をのせた枢が、鷹揚に頷いて。


「黒羽殿に、円、絵瑠。そして照坊の4人で、対ソウルイーターに特化したチームとなってもらいたいのじゃ」


 枢からの提案に、集められた4人はみな、互いに顔を見合わせた。



      ※      ※      ※



 先の新型ソウルイーター連続発生事案からおおよそ2週間。

 あの日の騒ぎが嘘のように、たまな市でのソウルイーター案件は発生していない。


 だが、よそでは小規模ながら小型の異形の発見例も続いていることから、予断を許さない状況であることは確かだった。



「元より、魔法協会から魔法戦士である黒羽殿が派遣されると決まった時点で、特務部隊を作る予定ではあったのじゃ。その場合、ワシの選りすぐりのエキスパートたちでバランスを取るつもりでおったのじゃが、大きなイレギュラーが発生したじゃろう?」


 枢が照也を見やれば、他の魔法少女たちの視線も彼に集まる。


「俺の、ダイデンダーの力だっっ!!!」

「声が大きい」

「ぶえっ」


 キラキラ瞳を輝かせ。

 デンダーブレスを構えて吼えた照也の頬を、枢の杖の先がぶにゅっと押した。 



「……要するに。弟くんはとーーーーっても強いけど、まだまだ分からないことだらけだから、強さに折り紙付きな哀ちゃんと、弟くんのことを知ってる私と絵瑠ちゃんで固めようって話だよね?」

「お義兄ちゃんの力って、ワタシがあげた秘石(ジュエル)と、円さんがあげた腕時計(ガジェット)が合体してできたんだよね」

「発生時、彼から膨大な命の力(プラーナ)が溢れ出たのも見たから、無関係ではないはず」


 円がまとめ、絵瑠と哀が補足する。

 それを頼もしげに受け止めながら、再び首を縦に振った枢が話を続ける。


「照坊の力は、何もかもが未知の事例じゃ。じゃが同時に、ソウルイーターに対して非常に有効じゃということもわかっておる」


 その場の全員が頷く。

 先日の2度にわたる巨大な異形との戦いで、照也は確かな力を示した。


 魔法戦士以上の大火力。そして、2戦目で見せた個人の力による転移。

 あれは戦いを制する切り札となるものだった。



「今後もあのような敵が現れるとなれば、照坊の力は大いなる助けとなるじゃろう。そのためには丁寧な検証と観測が必要となる。それゆえの此度の差配じゃ」


 未知の、しかし有益な力。

 それを正しく解明するための、実力者と信頼関係を持った存在とで固めたチーム構成。


「どうじゃろう、構わんかの? 黒羽殿」


 その最終決定権は、対ソウルイーターにおいて特別な権限を持つ少女、黒羽哀に委ねられる。


「……受諾する。大殿照也の持つ力の有用性と危うさ両面を鑑みて、それが妥当な判断だと思います」


 クールで整った顔立ちを崩さぬまま、静かに彼女は頷いてみせた。


 その瞬間。

 DDDたまな市支部に、対ソウルイーター特務部隊――後に通称“魔特隊(まとくたい)”と呼ばれるチームが結成された。


 ……そこまでは、淀みのないやり取りだった。



「じゃあじゃあ! これから仲間になるんだし、哀ちゃんの歓迎会を開こうよ!」


 ふわふわウェービーロングの茶髪を揺らし、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら手を上げる円。

 彼女の期待に満ちた笑顔に、誰もが頬を緩ませる……その一方で。


「………」


 ほんの一瞬。

 哀の表情に悲しみが浮かんだことを、その場の誰も気づかなかった。



「場所はワタシたちのお家でいいとして、いつがいいかなぁ? 哀さんは希望とかあります?」

「………」

「哀さん?」


 気づけば能面のように表情を消した哀が、絵瑠からの問いかけに静かに首を横に振り。 


「チームは結成するけど、そういう催しはやらなくていいでしょう? だって――」

「黒羽?」


 不思議そうな顔をする照也たちに向かって、静かに、そして冷たく言い放つ。



「――私には、必要のないことだから」



      ※      ※      ※



 そして。

 何度目かの20分休み。


「うおおおおおお! 黒羽ぇぇぇぇ!!!! どこだぁぁぁぁーーーーー!!!!」

「………」


 照也の執念の追い込みを回避し、哀は屋上のフェンスの上に腰かけていた。



「……どれだけ歓迎会を開きたいのよ」


 ため息を吐いて、景色を眺める。

 遠く西に広がる在明(ありあけ)の海は、騒がしく響く照也の声と裏腹に、今日も穏やかに波打っていて。


「あれだけはっきりと拒絶したのに、物好きなことね」


 独り言をポロポロとこぼしながら、哀はポケットから黒鳥の装飾品を取り出す。


 彼女が変身するときに使う魔道具。

 だがそれは、彼女にとって道具以上の想いの籠もった大切な品だった。



「……私に身内なんて、必要ない」


 とびっきりに仲の良い、あの3人のやり取りを見るたびに思い出す。

 哀にとって何よりも大切な、慕っていたあの人のことを。



「……お姉さま」


 小さく、小さく囁くように紡がれた言葉。

 それは午前のたまな市を吹く風に、そっとかき消され――。


 バァンッ!!


「ここにいたか、黒羽っ!!」

「きゃあっ!?」


 ――る前に、ドアを開けてやって来た、照也の大声に吹き散らかされた。



「大殿照也っ!」

「あ、待ってくれ黒羽! 捕まえに来たわけじゃないんだ。話をさせて欲しくて!」


 屋上から飛び降りて逃げようとする哀を、照也が引き留める。

 子犬のように縋るような顔をした彼を見て、今にもフェンスから手放しそうだった手を掴みなおし、哀は屋上の内側へと降り立つ。


「話って?」

「聞いてくれるのか!? ありがとう黒羽っ!!!!」

「声が大きい」


 駆け寄ってきた照也にため息を返しつつ、話を促せば。


「黒羽。このままだと多分、鬼ごっこはずっと終わらない。だから、お互いに納得できる折衷案を探したいと思うんだ」


 いつになく真剣な顔をして、照也が切り出した。



「折衷案、ね」

「ああ。円姉ぇって昔っからすっごく頭が良くて、俺の見えないものも見えててな。それでたまに、すっごく強引になる時があって……そんな円姉ぇが、黒羽の歓迎会は必要なことって言ってるから、このままだと止められないんだ。黒羽の協力が要る」


 ここにいない自称姉のことを想い、苦笑も交えてその人を止める意図を伝える照也に、哀は意外そうな顔を向ける。

 彼女の黒い瞳が、照也を正確に見据える。


「あなた、樫木さんの弟分なのでしょう? てっきり常に味方をするんだと思っていたわ」

「まぁなるべく味方でいようとは思ってるけど、今回は別だな」

「どうして?」


 それは純粋な興味から、思わずこぼれた問いかけだった。



「そりゃ、これ以上は、黒羽の平和な日常が崩れてしまいそうだからな」

「………」



 返ってきた答えは、余りにも自然と彼の口から飛び出して。



「黒羽には黒羽の過ごしたい日常があるだろ。だから、この状況が続くのは、あんまり良くないなって思ったんだ」


 一切の迷いなく、ひたすらに真っ直ぐな赤い瞳の視線が、哀を見つめていたから。


 不意を打たれた哀の瞳が、大きく揺れた。



「だから、よければこれからどうしたらいいか、黒羽と相談できたらって思ったんだ」

「……そう」


 だったら、と。

 彼女の口から続く提案に。


「――こういうのはどうかしら?」

「え!?」


 今度は照也が、驚きの声を上げるのだった。

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