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魔法勇者ダイデンダー ーDDDー  作者: 夏目八尋
第2章 ようこそ、DDDへ!
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第16話 Bパート④ ー想いが呼びこむ奇跡ー

読んで下さりありがとうございます!

第2章クライマックス!


※第15話の予約投稿時間を間違っていました。大変申し訳ございません。


「ドォォォレェェェェイィィィィーーーーーーーン!!!!」


 夜のたまな市に響き渡る異形の叫び。


「ん? 何だ今の低い音」

「デカいトラックでも通ったか?」


 それは人払いの結界を揺るがし、日常を過ごす人々の耳にも異音として届くほどで――。



「――状況確認っ!」

「あ……はいっ!!」


 オペレーションルームに轟く樺奈羅の指示がなければ。

 高い練度を持つDDDたまな市支部のスタッフですら再び放心してしまうほど、度肝を抜く現象が巻き起こっていた。



      ※      ※      ※



「対象、新型ソウルイーターの体積が10m級から30m級に増大! 増加した体積のせいで、コアへの攻撃が困難になっています!」

「それが敵の狙いじゃったか! しかし、自壊すら恐れず川に飛び込むなど……それではまるで」

「対象、動きます!」

「ぬぁっ!!」


 矢継ぎ早に届く報告が、事態の緊迫した雰囲気を伝える。


『うぅぅわぁぁぁーーーー!?』

『はぁぁぁ! ザークリッパー!!』


 画面の向こう。

 現場では、怪獣サイズとなったスライムの異形が撃ち出す岩サイズの消化液の弾丸を、円が必死に旋回して躱し、哀が大鎌から光輪を撃ち出し迎撃していた。



『いけない! ロイヤルジュエル! フィクサーアンバー!』

「ジュエルプリンセス、結界の補修・強化を開始! 技術の魔女、詳細な追加情報を求む! ブラックスワン、コアへの攻撃は可能ですか!?」

『待って待って、シンプルな構造拡大だと思ってたけど、これ、造りからして変わってるかも! 進化? 最適化? とにかく、ただ大きくなっただけじゃないよぉ!』

『こちらブラックスワン! 対象の動きは相変わらず鈍重。けれど、攻撃を当ててもコアまで通すには、今の私じゃ貫通力が足りない!』


 重なるやり取りが危機感を煽る。

 先程までの勝利の気配が一転し、追い詰められた者たちの絶望が滲み始める。



「打つ手はありませんの!?」

『私が敵の内部に切り込んで、直接コアを狙う!』

『ダメダメダメダメ! そんなことしたら溶かされちゃうから! 無事じゃ済まないから!』

『く、ぅっ! さっきから手当たり次第に暴れ回って、結界の修復が間に合わな……!』


 遠ざかる勝利、迫り来る窮地。

 あがいて、もがいて、それでもジリ貧に追い詰められていく状況で……。



「……俺が行くっ!!」


「「「!?」」」



 ……勇者(でるや)が、動き出す。



「待つのじゃ、照坊!」


 カンカンッ!


 照也の提案に、当然のように枢からの“待った”が入る。


「お主の力には謎が多すぎる。どう転ぶかもわからんのじゃぞ!」

「………」

「お主に何かあれば、円も、絵瑠も、そしてワシらもみな悲しいのじゃ!」


 その声音には、照也を真に思いやる心が込められていた。


 しかし。


「……わかってる。それでも、行く!」


 照也は真っ直ぐに枢を見つめ、言い返した。



「俺が手に入れた力、ダイデンダーの力は、俺の魂と呼応する力なんだ」

「照坊、お主、何を……」


 照也は語る。

 自分の中の力について、自分自身が感じたことを。


「俺は、みんなを守りたい! みんなを守るために……戦いたい!! DDDの、ここのみんなと同じように!!」


 照也は伝える。

 自分の中から溢れ出す、強い強い魂からの願いを。


「そんな俺の想いに、この力が応えようとしてくれているっ!! だから!!!」


 もう止まらない。 

 自分の中から湧き上がる力を、解き放つ!



「照坊ぉ!!」

「俺は、行くっ! みんなの! 俺たちの……戦場へっ!!」


 カッ!


 沸き上がる巨大なオーラが、照也の全身を包み込む!

 右腕のブレスレット――デンダーブレスが眩い光を輝かせる!


「おおおおおお!!!」


 魂の赴くままに、叫ぶ!!



「ブレイブ・オン!!!」



 迸る閃光。

 オペレーションルームが白く染まって。



「「!?!?」」


 それが収まった時には、もう。



「……え?」


 照也の姿は。



『魔法勇者(マジカルブレイブ)! ダイ・デン・ダァーーーーーーーーーーッッ!!!!!』



 画(・)面(・)の(・)向(・)こ(・)う(・)側(・)にいた。



      ※      ※      ※



 月下の夜空を、緋色の戦士が舞う。


「え、お義兄ちゃん?!?!」

「弟くん?!」

「大殿、照也…!」


 戦場の魔法少女たちは、突然の闖入者に驚き戸惑う。


 だが、その場においては何よりも。


「ド、ド、ドレイィィィィン!!」


 圧倒的優位に立っていたはずの、ソウルイーターこそが驚愕していた。



 どうしてここに?

 どうやってここに?

 どうして来たの?


 魔法少女たちが疑問を口にするよりも先に、照也が動く。


「うおおおおおおお!!」


 その身に溢れるプラーナを、炎に変えての急降下襲撃!


「ぜりゃあああああ!!!!」

「ドレェギアアアアアアアア!!!!」


 鳥のかぎ爪を模した靴先を喰い込ませる、強烈な蹴りが炸裂する!

 進化し、強化されたはずのスライムの巨体を大きく削り、そのまま内側へ入り込んでいく!



「弟くんダメ! それじゃ溶かされちゃう!」

「!?」


 円が指摘するのと同時。

 スライムがその身を震わすと、照也を呑み込まんとして覆い被さっていく!


 だが!


「……デンダァァァッ、トルネードォォッッ!!」


 照也がその場で横回転を開始!

 包み込もうと迫り来るスライムの体を、マントをなびかせ強烈な風圧で押し返す!


「ド、ドレッドレァァァァァ!?!!??」


 押し負けた異形がしゃにむに消化液の弾を撃ちまくり、照也を無理矢理弾き返した。



「っちぃ!!」


 ズササッ!


 着地と共に地を滑る照也の元に、哀が駆け寄る。


「大殿照也!」

「く、黒羽?!」

「あなた……あの巨体を撃ち抜ける?!」

「!」


 てっきり咎める言葉が来るかと思えば、哀の口から飛び出したのは問いかけで。


「公園で見せたあの技! どうなの? できるの!?」


 重ねて問い詰める哀の黒い瞳は真っ直ぐに、この場を預かる戦士として照也に尋ねていた。



「……できる!」

「わかったわ。なら、あいつの核を狙い打って!」

「了解!」


 短く必要最低限の指示を出し、哀は大鎌を構え直して走り出す。


「プリンセス! 技術の魔女! 対象に彼の大技を当てる! 相手の動きを抑え込むわよ!」

「「ディサイド!」」


 迷いのない判断、そして誰よりも果敢に異形へと立ち向かい、黒銀の戦士が跳ぶ。


 それと同時。

 いよいよもって暴走を始めたスライムの異形が、幾本もの丸太サイズの触手を伸ばし、振るい始めた。



「プリンセス!」

「うんっ!」


 円が薬瓶(ガジェット)を放り投げ、絵瑠がダイヤの盾を展開する。


「はぁぁぁ!!」


 哀が振るう大鎌が、動きを止めた触手たちを次々と切り落とす。


 持てる力を振り絞る、魔法少女たちの奮闘。



「お義兄ちゃん!」

「弟くん!」

「大殿照也!!」


 それは。


「ありがとう!! みんなっ!!!」


 勇者が勝利を掴むのに、十分過ぎる時間だった。



「おおおおおおおお!!」


 引き絞った右腕にプラーナを溜め込み、力を一点集中!

 篭手となったダイデンブレスの秘石から、燃え上がるような光が爆ぜる!



「マージーカールー……ブラスタァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」



 突き出したこぶしから、必殺の紫極太光線が放たれた!



「ドレッ! ギァァァァァーーーーーーーーーーー!!!」



 光の本流は動きを止められた巨大スライムの中心を的確に穿ち、そして――。


 バキィンッ!!


 力の源である、核を見事に破壊した。



「ギァァァァァーーーーーーーーー…………」


 断末魔の叫びは、夜天に舞い上がる祓いの輝きが消えゆくのに合わせ、世界に溶け消えて。


 プシュウウ……!


 照也の突き出したこぶしから蒸気のように残留プラーナが廃棄され、すべては決着した。


 町の平穏を……日常を破壊する脅威は、ここに密かに取り除かれたのだった。



      ※      ※      ※



 現場。


「弟くぅーーーーん!!!」

「うおぁっ!? 円姉ぇ!?」

「弟くん弟くん弟くん弟くん弟くーーーーーん!!」


 決着も束の間、円がホウキを乗り捨て照也にダイブし飛びついて。


「お義兄ちゃん!」

「おわっ!! 絵瑠!」


 背後からは絵瑠が抱き着き、姉妹?のサンドイッチが完成した。



 オペレーションルーム。


「核の破壊を確認! 我々の勝利です!」

「「わぁぁぁぁ!!」」


 オペレーターの魔女の報告に、DDDたまな市支部のスタッフたちからも歓声が上がる。


「やりましたわね」

「ああ、やったのぅ……」


 落ち着きながらも勝利に震える樺奈羅の隣で、枢は静かに目を細め、どこか遠くを見つめていた。


(大魔法である転移を、たった一人であっさりとやってのけるとは……やはり、照坊は……)


 画面の向こうで喜びを分かち合う孫たちを瞳に映しながら、彼女は胸中に複雑な思いを抱いていた。

 しかし、それでも。


「照坊にも、隊員証を作ってやらんとのぅ」


 新たな仲間を歓迎し、今はその口元に笑みを浮かべた。



 再び、現場。


「弟くん弟くん!」

「お義兄ちゃん!」


 前と後ろを自称姉と義妹に挟まれながら、照也は改めて己の心の声を聞く。


(守れた。戦えた。……勝てた! やっぱり、俺のこの力は、ダイデンダーの力は、誰かを守るために振るう力なんだ!)


 日常の守護者。

 それは他でもない照也が最もなりたいと思っていた存在。


 その力が自分にあるのだと、あれほどの脅威にも負けない力があるのだという手応えが。


「……ははっ!」


 彼に、確かな自信と新たな勇気を与えていた。


「俺たちの、勝利だ!!」

「「勝利だー!」」


 大誕した勇者は、今。


「「「あははははっ!」」」


 愛と希望と絶望とが渦巻くこの世界に、確かな一歩を踏み出した。



「……大殿、照也」


 その陰で、一人の少女の感情(こころ)を揺さぶりながら。

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