第15話 Bパート③ ー魔女たちの奮戦ー
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変身からの、バトル!
「ブラックスワン、ジュエルプリンセス、および技術の魔女、現着しました!」
「よし! 実働3名は、新型ソウルイーターに即時対処するのじゃ!」
オペレーターの魔女からの報告に、枢が力強く頷き指示を飛ばす。
『『『ディサイド!』』』
画面の向こう、現場で巨大なスライムの異形と対峙する哀たちの、これまた力強い返事を聞きながら。
(絵瑠、円姉ぇ、黒羽……)
照也は一人。
心の中で葛藤していた。
(みんなが言うように、ダイデンダーの力は未知数だ。そんな不確かなものなんて、組織で連携してる人たちにしてみればノイズでしかない)
出撃を止められた自分。
その理由はこれ以上ないほどに明確で、正しい。
照也の理性がそう断言する。
(でも、この力は間違いなく、誰かを守るために振るう力だ。今この時にこそ役に立つ力なんだ……!)
そして。
自らが得た力の使いどころが今だという確信もまた、正しい。
照也の本能がそう訴える。
(俺は……俺は本当に、ただここでみんなを、見守っているだけでいいのか?)
モニターの向こう。
見知った女の子たちが、巨大な異形へ果敢に立ち向かっていく。
(今の俺にできること……何か、何かないのか?!)
食い入るように画面を見つめる照也。
「………」
そんな彼の胸に渦巻く焦りに気がつきながらも、枢はそれを横目で静かに見守っていた。
※ ※ ※
オペレーションルーム。
「円さん! 解析出せまして!?」
『もうちょっと待って! 何とか近づいてビーコン撃ち込んでみる!』
樺奈羅からの要望に、画面の向こうの円がホウキに跨り飛び上がる。
『敵の攻撃はワタシが防ぐよっ!』
『道は私が切り開く!』
その動きに合わせて絵瑠と哀が動き出し、3人同時に異形に向かって跳び出した。
現場。
「ドーレーイーン!!」
鞠智川を渡る大橋に取りついて、巨大スライムが声帯不明の奇声を上げる。
月下に響かす金切り声と同時に体から幾本もの触手を伸ばせば、近づいてくる3人の魔法少女を迎え撃つ。
「やらせない!」
絵瑠が冠するティアラに填め込まれた秘石、ロイヤルジュエルが白い光を放つ。
「ロイヤルジュエル! ガードダイヤモンド!」
現れたダイヤの盾が、迫り来る触手たちから円を守った。
「邪魔よ!」
敵の攻撃を掻い潜った円の前に飛び出して、哀が大鎌、ブラックスワンを振り回す。
「切り裂け! ザークリッパー!」
大鎌本体による斬撃に加え、そこから放たれたいくつもの光輪が、触手のみならず異形本体すらも切り裂いて。
「よーし、今がチャ」
「ドレイィィィィン!!!」
「んわわわっ!」
これ幸いと一気に距離を詰めようとした円だったが、異形がそのゼリーのような巨体を震わし、切り裂かれた箇所を一瞬で修復、と同時に体の一部を弾丸のように撃ち出して、円の接近を妨害する。
ボシュウウッ!!
「なっ!?」
撃ち出された異形の弾丸は、着弾した箇所に生えていた草を瞬く間に溶かしてしまった。
「プリンセス!」
「え? あっ!!」
見れば、攻撃を受け止めた絵瑠のダイヤの盾すらも、触手に触れた部分からどろどろと溶け始めていて。
「強酸性の体? ううん、溶かす物は選べるみたいだし、消化液を武器にしてるんだ!」
敵の攻撃を見てゴーグル型の魔道具での解析に切り替えた円が、スライムの周囲を旋回し始める。
うっとうしい羽虫とでも思ったか、スライムの巨体が円に狙いをつけようとすれば。
「あなたの相手はこっちよ!」
「ドレッ?!」
敵の狙いを引きつけるべく、哀が踏みこみ、敵の懐に潜り込んだ。
「至近距離でも使えるのよ! ザークリッパー!!」
敵の眼前で再び放たれる幾本もの光輪がスライムの巨体を切り裂き。
「ドレェェェェ!!」
ボシュウウウッ!!
切り裂かれた部分から飛び散る消化液は。
「ロイヤルジュエル! フレイムルビー!!」
ティアラの秘石を赤く輝かせ、絵瑠が炎を呼び出し焼き尽くした。
※ ※ ※
再び、オペレーションルーム。
『樺奈羅ちゃん! 視えた限りの情報、送るよ!』
「……受け取りましたわ! 解析班! 相手の情報をできるだけ抜き取ってくださいまし!」
「ディサイド!」
まさに一進一退の攻防を経て、前へと進む戦い。
現場で戦う少女たちも、オペレーションルームで戦うスタッフたちもが一丸となって、巨大な敵を相手に全力を尽くして立ち向かっている。
(みんな、みんな頑張ってる。地球の、大好きな日常を守るために……!)
一瞬たりとも目を逸らせない。
彼女たちの一挙手一投足から感じ取れる、平和を願う強い想いが照也の心を震わせる。
右腕のブレスレットの秘石の中で、鈍い光が揺れ動く。
「解析でました! 敵はプラーナに加え大量の水分を内包しており、その水分を使い自身の体を巨大化しています!」
「プラーナと鉱物以外を体の材料に使っているっていうのかい!?」
「はい! 取り込んだ水分に核から回路を繋ぎ、操っているものと思われます!」
「そんなの聞いたことがありませんわっ!」
もたらされた新情報に、枢も含めたスタッフたちがざわめく。
ソウルイーターは他者の命の力を奪う、プラーナと鉱物素材で構成される生命体、という前提が崩された瞬間だった。
だが、そんな知識を持たない照也は、与えられた情報から素直に答えをはじき出た。
「核から回路を繋いで水を動かしてるってことは、核さえ壊せばそいつは倒せるってことだな!」
「!」
照也の言葉に枢が即座に問いかける。
「どうなんだい!?」
「は、はいっ! 現在までに集めた情報を精査した限り、対象の核を狙い撃つことで、撃破することは十分に可能かと!」
「でかした! 照坊っ!」
「うおあっ!?」
思わずといった動きで、歓喜した枢が照也の背中を思いきり叩く。
一瞬の逡巡が、思考の停滞が命取りとなる戦場。
スタッフの誰もが驚きに動きを止めようとしたその間を埋める閃きは、確かに彼女たちへの福音となった。
「聞いたかい! お前ら! そのスライムの化け物は核を狙い撃ってぶっ倒せばおしまいだ! 水の膜なんて思いっきりぶった切ってやりな!」
『『『ディサイド!』』』
枢から飛ぶ指示に、現場の魔法少女たちも気合の入った返事をして。
『さっすがわたしの弟くん! 帰ったらお姉ちゃんが思いっきりギューってしてあげるからね!』
『お義兄ちゃん! 円さんには付き合わなくていいからね! 今日はお家に帰ってゆっくりしようね!』
『二人とも、気を抜かないで! まったく……すぐに終わらせるわ』
ついには軽口まで飛び出せば、いよいよ勝利は目前という雰囲気に変わる。
事実、核を重点的に狙い始めた魔法少女たちの攻勢に、スライムの異形は防戦一方になっていく。
「……これで少しは、俺も役に立てたのか、な?」
照也もまた、ホッと息をつこうとした……その時だった。
月明かりの川岸。
それは己の不利を悟り、なりふり構わぬ行動に移る。
「ドレェェェェッインッ!!」
ぐらっ、ドボンッ!!
「えっ」
「なぁっ!?」
「あああーーーーっ!?」
巨大スライムが、川へとその身を投げうった。
その身を形作る器を破り、その身を半ば川の流れに溶かし込む。
それは一見して、自壊を招く自殺行為だった。
だが、生き抜こうとする本能が、それにとっての奇跡を呼んだ。
ゴボッ。ゴボボッ!!
核が限界を超えて駆動する。
急速に支配の糸を伸ばしていき、新しい形を作り上げていく。
「こ、これは……!」
「ええっ、そんな……!」
「お、おっきすぎるよぉ~~~~~!!」
魔法少女たちが見上げるのは、高さ30mにも至らんとするほどの巨体。
「ド……」
現場を見守るオペレーションルームのスタッフたちも、目を見開くほどの威容。
「ドォォォレェェェェイィィィィーーーーーーーン!!!!」
怪獣級の、超巨大ソウルイーターが夜のたまな市に出現した。
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