神さま、生み出す。
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いつも見落として済みません(。>ㅅ<。)
試験体一号 達の罪が、全て元となった俺の物だとは思わない。
子供の罪が、親の罪とはならないように。
親の関係ならば、生み出した責任は、ある程度の年齢までは付きまとうだろうが。
しかし試験体一号 達と俺が分離してからは、相当の年月が経過している。
また彼女達の年齢は、俺を遥かに超えている。
彼女達が仕出かした事柄に対して、俺を弾糾されても、正直困る。
ただ、俺が彼女達に押し付けた感情や経験の記憶のお陰で、今能天気にセカンドライフを充実させていられる事実は、確かにある。
出来る事をしてやりたいと思うのは、別段不思議な話ではないだろう。
咎められる言われもない。
せめてもの罪滅ぼしとして、俺達が破壊した王都の建造物は、国王が望むように全て創ろう。
壊した割合としては、俺が二割程度担っている。
じゃあ王都の損壊率の二割程だけ直しましょうか、と言った所で無意味だ。
そんな事をしても、当然住民に日常は戻って来ない。
言ってしまえば、住居や施設を一〇〇%普請したとしても、平常の生活を送る事は出来ない。
あくまで俺が出来るのは、城を築き家を建て、田を打ち道を通す事だけだ。
立派な建物があった所で、調度を揃えなければ生活が出来ない。
室礼するのは、それぞれの住居で暮らす人達になる。
また田畑を鋤いた所で、ソコに種を撒き世話をしなければ、作物は実らない。
農耕をするのは、この世界の制度上、小作人達になる。
街だって、建物自体は俺が創ったけれど、運営しているのはゴルカさんを含めた役員の人達だし、農作物を育てているのは、引っ越してきた住民達だ。
人が住まない住居は、不思議と傷むのが早い。
物によっては崩落したり、雑草が蔓延って魔女の館みたいになっていたかもしれない。
そもそも彼らがいなければ、この半年の間に魔物が住み着き、建物は破壊され、自然に還っていただろう。
無計画に増築が繰り返された家屋は、乱雑に積み上げられ安全性に乏しい物ばかり。
裏路地は日中でも薄暗く、スラムが形成されている場所もあった。
人は居るのに物が不足しているから、貧困層は常に不平不満が噴出しているような状態だった。
日中から酒を飲んでいる男性は多く、家事を押し付けられる女性の手は赤切れが酷い。
ろくに食べれて居ないから、王都では人口の三割程が、健康を害する恐れのあるレベルで痩せている。
城郭内に土地が無いから、魔物の脅威に晒されながら外の田畑を耕し、国に税金として収穫物の大半を納めなければならない。
そういう不便の一切を解決するような都市にした所で、ソレは確かに便利だろうが、王都民が住み慣れた家ではない。
思い出が詰まった我が家は、瓦礫と化した。
思い入れのある品は、全て跡形も無くなった。
喪失感は計り知れない。
時の精霊の力を借りれば、この辺り一帯の時間を巻き戻してソレらを取り戻す事は出来る。
だがそうなると、俺一人の霊力では賄いきれず、周辺の土地からかなりの霊力が消費される。
そうなれば、土地から精霊の加護が消え、作物は育たず病気が猛威を振るい、魔物が蔓延る事になる。
とてもじゃないが、平和な暮らしからは程遠い、殺伐で陰惨とした雰囲気漂う王都に変貌してしまうだろう。
長い時間を掛けても良いなら、俺一人でも解決出来るよ。
回復薬の過剰摂取をしないように、様子を見ながら服用して建て直したとして……何日掛かるかな。
ひと月は掛からないと思いたい。
時間が経過すればする程、戻さなければならない幅が大きくなって行く。
そうなれば、消費する霊力も当然、増える。
一時間長引く毎に、倍がけしていく感覚かな。
デカくて複雑な造りをしている王宮から始めたいが、まずは王都を囲んでいる城郭からどうにかしなければならない。
せっかく直しても、魔物に荒らされてしまったら意味がないからね。
手間が増えないようにするには、建物の安全を確保してからの行動になる。
城郭は破壊してしまった守護方陣の修復だけで、霊力の消耗がかなり激しい事になると予測される。
ただ術式を刻んだだけの方陣とは違い、霊玉を粒揃いの質の良いモノを選んだ。
あの霊玉の早戻しに数日は掛かる。
そしてその後、王宮にまた十数日。
王宮内部にも、方陣やソレを起動させる為の霊玉が沢山使われて居たからね。
松明を使わずに、術式を刻んだ照明器具をアチコチで使用していた。
噴水だってそうだ。
カノンの海辺の家で使っていた物の、大型版の冷蔵庫やコンロなんかも厨房にあったし。
俺が把握していない紋様具や方陣は山程あるだろう。
そうなれば、王宮の復活には十日程度では足りない。
この時点で、二十日は経過してしまう。
その後中心街に下町と順に元通りに出来たとしよう。
合計でひと月でイケるか、微妙なラインだな。
こうやって、時間さえ掛ければ、出来る。
だが、それではその間の住民の行方は?
衣食住はどうする??
街で面倒を見る事は、ある程度なら可能だ。
ある程度なら、ね。
街の住民だって、自分達の日常を過ごさなければならない。
家族も居れば、仕事もある。
難民を受け入れるまでは出来ても、いつまで掛かるかも分からないのだ。
その世話までするのは、難しい。
程度の差はあるが、諍いは起こるし、わだかまりも出来る。
その保証は誰がする?
全部俺がするのか??
流石に、ソレは違うだろ。
燼霊は俺から派生した存在だが、全く別の個人だ。
俺が止めた所で、燼霊は素直に撤退なんてしてくれなかった。
むしろ俺が苦しんでいたら、喜んでソレを肴にワイングラスでもクルクル回しながらほくそ笑んだ事だろう。
だってコイツ等、俺の事嫌いだし。
俺が共に旅をした仲間だから、カノンとアルベルトが目を付けられたのは、確かにそうだ。
しかし俺がこの世界に来る前から、精霊教と王家は敵対関係にあった。
俺が居ようが居まいが、王都の襲撃は、そう遠くない未来に訪れていた事だ。
むしろ全滅していたかもしれない所を、死者ゼロ名にしただけ、エラいじゃん。
見渡す限り、ぺんぺん草すら生えない荒野になる所だったのを、この程度の被害に留めたのだ。
ある程度なら、瓦礫を退かせば回収出来る物もあるだろう。
方々にムリを頼み込んで、俺の体力や気力をすり減らしてまで、不便な暮らしを元通りにさせなければならない、その理由が俺には分からない。
住み慣れた家を手放し、思い出への未練を断ちさえすれば、「スキル」を使える。
街の時と同じように、ほんの数分程度で五〇〇〇ヘクタール程度の広さの街なら創れる。
ソコまでの広さは不要だろうが。
……あぁ、イヤ。
コレから人口が増えていくであろう事を見越すのならば、それ位の広さは必要か。
城郭の外にあった田畑も、壁の内部に打つのであれば尚更だ。
全都民の避難が、完了しているのだ。
いっその事、街を拡張して、そのまま住んで貰えば良いのに。
世界中の瘴気を祓い、霊力の循環を高める為に設置されていた時の精霊の地下方陣だって、移動させるなり、新たに設置し直すなりして貰えばいいじゃん。
何なら、どんな術式が刻まれた方陣なのか教えてくれれば、俺が創るのだって吝かではない。
ソレもコレも、全部精霊教と燼霊が、もう王家にケンカを売りません、と確約してくれなければならないが。
「スキル」を使えばあっという間に出来るからって、何度も何度も同じ事をさせられたら、飽きるし苦痛だもの。
囚人の穴掘りじゃないんだから。
そんな拷問みたいな事をさせるなよ、というお話だ。
「エラい大人しいじゃん」
「もうひと暴れした方が、良かったかしら?」
いやいや、とんでもない。
このまま引き続き、しおらしくしててくれ。
背後から撃たれたせいで、燼霊の顔を今初めて見るカノンが「なるほど、よく似ている」と頷いた。
周回遅れの理解、ありがとうね。
「お前、俺の中から棄てられた感情が燼霊になったって言ってたけどさ、アレ、ウソだろ?」
「ウソでは、ないわ。
ソレが全てでも、ないだけ」
「うん。
……俺が「スキル」で創った試験体の成功作だろ。
創った後に、当時の俺の記憶がそこにコピー出来ないか実験して、失敗したって、報告書だけは読んだ」
恐怖や怒りのような、強烈に脳に刻まれた記憶の、言語化すらままならない感情そのものしか、写し取る事が出来なかったと報告書には書いてあった。
酷い癇癪を起こし、物を壊して暴れて手が付けられないから、廃棄したと記されていたんだけどな。
廃棄せずに、オリジナルであり神の「スキル」を持つ俺には出来ないような、薬物投与の実験を繰り返していたか、実際に廃棄こそしたが、劣化版の「スキル」を駆使して、汚染された施設の外の世界でも生き延びて居たか。
いずれにせよ、俺へ憎悪が向けられるのは致し方が無い事だと思う。
行ったのは別の人間だしても。
そもそも俺が命令されるがままに自分のコピーを生み出さなければ、誕生しなかった生命だものな。
クローニングで人工的に生み出された実験体と違って、目の色が変わるから、不思議だったんだよね。
遺伝的にこの眼はどの実験体にも遺伝されていたのに、燼霊の目の色は全員違ったんだもの。
当時の俺は、七つやソコらだった。
彼女達の言動に幼さが残るのは、その為だろう。
どれだけ歳を重ねても、自尊心を大きく傷付けられ抑圧された経験をしたら、その年齢から成長出来なくなるインナーチャイルドが誕生する。
モチロン人と関わりを持ち、損なわれた心を埋める事で、心の中の幼い部分も、少しずつ成長してくれる。
だがその為には、沢山の学びに触れ、人と接する必要がある。
施設の誰の目にも触れられる事の無い実験棟の最奥か、荒廃とした外界か、どちらで過ごしたかは不明だ。
だがいずれにせよ、関わる人間は極小数。
それもロクでもない連中ばかりなら、成長なんて出来るワケも無い。
俺への相当な恨みによる執着心が、俺が放棄した感情を呼んで合体してしまったのかね。
俺は当時から死ぬ迄の八年の間に、皆のお陰で成長出来た部分が、少なからずある。
混じり合わなくて、精神が分裂を起こして、当然だ。
七つやソコらなら、親や友人のような近しい存在に限定せずとも、愛情に常に飢えている年頃だ。
俺が棄てた暁に対する恋心を得たせいで、愛情を渇望していた彼女達の心の渇きは、相当なものだっただろう。
飢餓感から追い立てるように暁や、それ以外の身近な存在に、手当り次第愛を求めたに違いない。
かまってちゃんとは、比較するのもおこがましい程に、人との関わりを饑渇したのだろう。
教会の連中のように、何を与えずとも求めてくれる、何か与えればそれ以上に応えてくれる連中は、彼女達にとって、とても都合の良い存在だったに違いない。
そこで教祖的扱いを受けて、チヤホヤされて満足していれば良かっただろうに。
暁へと向く思慕の念が強過ぎたのだうか。
暁からの愛情を受け取らなければならないと、脅迫めいた感情が暴走し、アイツが望むものを、何をしてでも与えなければならないとでも、思ったのだろうか。
その結果、行動に移した。
いい迷惑だと言ってしまえばそれまでだが、俺とて罪悪感位はある。
ある程度の、願い位は叶えてやりたい。
「お前がこの提案を受け入れないのなら、残念だが消させて貰う事になる。
飢えを癒せぬまま、輪廻にも至れず、今日、この場で消滅する。
だが聞き入れるのならば、お前は万人から敬われ、愛される存在になれるだろう」
「散々壊して殺して、穢れた私が?
はっ。
そんなバカな」
嘲笑する時の顔とか、マジ俺と似てんね。
七歳の俺が創った時は、そのまんま俺の外見だったのに。
紆余曲折あって、成長過程が掛け離れたせいで、似ている程度まで外見が異なってしまうとは。
興味深いなぁ。
「罪なんて犯さないのが一番だけど、そんなの今更言ったって、詮無いじゃない。
やり直すチャンスを、せっかく提示して貰える幸運が訪れたのに、逃すんだ?」
「……アノ人を裏切りたく、ないわ」
暁に固執し過ぎじゃね?
俺ってこんなに酷かったの??
病的なまでの拘り具合。
手放して良かったと、心底思う。
「ソコは一足先に精霊側に行って元燼霊達がいつでも来られるように地盤固めて置くからね、って考えで良いんじゃないか?
燼霊はこの世界にとってイレギュラーな存在だから、俺は全ての燼霊を、この世から無くすつもりだ。
暁が滅びを選ぶか、生まれ変わりを選ぶかは、その時になってみないと、分からないケドね」
「……正気?」
「ソコは本気? って聞いてよ」
思わず抗議すると、初めて、ほんの一瞬だけど燼霊の口元が綻んだ。
その後はもう、目を閉じて何も言わなくなった。
「お好きにどうぞ」
そういう事だろう。
「――神の代行者として、我今ここに命ずる。
新たなる神の子の誕生の産声を、言祝ぎたまえ。
汝が名は“元素の精霊‘’」
燼霊を氷の精霊に変えた時と同じように、幾つかの制約を付け、核を埋め名前を付けた。
精霊になるのなら、司る分野が必要になる。
「万物創造」のスキルの本質は、物質の根源に働きかける能力だからね。
元素を担当分野にするのならば、ピッタリだろう。
原子や分子の精霊にする事も考えた。
だが日本語ではない、魔物の名前なんかに反映されている、この世界独自の言語形態って、ラテン語っぽい響きが多いんだよね。
だから受け入れられやすいように、ラテン語で原子の意味を持つ言葉を命名しようとするじゃない?
名前が、アトムになっちゃうじゃない??
さすがに、女の子だしさ。
一〇万馬力の原子力発電モーターが内蔵されたりとかしてないしさ。
なのでエレミエントで良いかなって。
氷の精霊の時とは違い、身体を覆い隠した繭は、すぐに開いた。
あの時よりも俺の霊力の総量が増えているのに、霊力枯渇の眠気が来そうなレベルでゴッソリと根こそぎ霊力が持っていかれたのは、このせいか。
俺と良く似ているが、違う存在。
『――ありがとう。
やり直す機会を、与えてくれて』
氷の精霊と同様、新たな精霊であると周知する事で、彼女達が望んだ通りに、きっと多くの人から敬われ、愛される事だろう。




