清明様の憂鬱 特別篇 青龍と天使 65
「レグしっかりして」俺は声をかけながら肩を貸して歩いた
「ああ」レグは答えたものの体に力がはいらないようだ
でも正気を保っていてくれるだけ助かった
炎の熱気、らんらんと目を光らせて炎を吐く狐達、血の匂い
またから寄生虫を垂らしたまま凍った女
俺はレグが死んでくれていてよかったと思った
生きた人間なら正気を保てないし、この中の熱気だけで死んでしまうだろう
肉でできた海も狐たちの頑張りで少し減ってきたように見えた
だが、狐たちも披露の極致みたいだ
一人、二人と人間に戻りだした
緑青がゼイゼイ言いながら「数が多すぎる」と言ってそれでも刀をとった
槍を構えたのは縫、みぞれは刀を構えたが、急に「ねえさん」と言って
緑青を振り返った
「凍らせたらどうでっしゃろう」
「そうだな、それがあった」みぞれはうなずいて印を切った
(冷ややかなる水光強ひて冷静を装いたれ 天地初夜降臨)
途端に温度がぐんと下がって俺は慌てて結界を張った
氷がビキビキとつるくさのように張っていく
肉塊が氷の中でもがくのが見えてみぞれがにっこりと笑った
(もしかしたら行けるかもしれない)と思った矢先
「いまじゃたたんでしまえ」と声がして狐たちが何かを取り出した
俺は口をあんぐりあけたまま棒立ちになった
狐達が取り出したのは10キロ以上は重さがありそうなヘッドハンマーだった
それでバキバキと氷を砕き始めた
だんだん楽しくなっていたらしくきゃあきゃあ声を上げ笑いだした
(やっぱりこいつらはまともじゃない)
そう思った時何か引っかかるものがあった
そうだ、一番厄介な問題児がいない
紫陽花が見えない、空気は熱気と氷で中和されつつあって娘たちは森で花でも積んでいるように
楽し気で、レグも顔色がよくなって、俺を見てまだひきつった顔で軽く笑ってくれた
だが、俺の不安は消えなかった




