清明様の憂鬱 特別篇 青龍と天使㊸
霧のたった街を歩いている
空が近く灰色だがまだ夜じゃないみたいだ
霧は石だたみ間を煙のようにぬってゆっくりと漂っている
始めて来た街だ
ひどく寒いがラスベガスの乾いた寒さとは違う
道の端には雪が残っている 行き交う人はうつむいて歩くことに全神経を使っているように見える
でもここの厳しく澄んだ空気が気に入った
ああまた 夢を見ている青龍は思った
ベンチに老人が座っている
まだ老人と言う年齢ではないが 老人の中には時々恐ろしく美しい人間がいる
壊れそうに綺麗で 飴細工で作った妖精みたいに見える
そして明らかに自分を待っていたようだ
自分を見る目が暖かく近くに行くと軽く微笑んでいるのがわかる
相手が軽く、頭を下げたので自分も頭を下げた
勧められるまま横に座った
まじかで見ると狐が時々入れてくれる上等の紅茶(本当の名前は知らない)
みたいな色の眼を見て誰だかわかったが、反対側の帽子の影から透き通った翡翠のような目が見えた
どちらも深みがあって、暖かかかったが、急にそれが悲しみに覆われてしまって、俺はうろたえた
老人は少しの間、うつむいてそれ肩自分を見て言った
「あの子にはもっと教えたかったのに」優しい眼が曇ったように見えたので
慌てて「心配はいりません 本当です」と慌てて言うと元の様に微笑んだので
ほっとした
「あのそれより・・・・」青龍が言いよどむと
「深く考えなくていいんですよ あなたの抱えているのは欲望ではなく孤独と欠乏なんで
す それは埋めたほうがいい」
と言って両手を広げて自分を抱きしめた
コートは上等だったが長い間大事に手入れをされ愛着を持って着られてきたのがわかる
「ありがとう」青龍は言った
長いあいだわだかまっていた胸の中の霧が晴れたような気がした




