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3DK  作者: 深澤雅海
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 私は子供の時から可愛いものに弱い。

 子犬、子猫、小鳥やハムスター。

 赤ちゃん、子供。

 ウサギのぬいぐるみ。

 レースのリボンやロリータファッション。

 細かい細工の小さいアクセサリー。

 いかにも女の子らしくて大切に扱わないと壊れてしまうもの。

 「きゅんとする」というのを見る度に実感している。


 でも、はっきり言って私には似合わない。

 身長167センチ、かろうじてBカップ。鎖骨まで伸ばしたくせのないストレートの黒髪、日焼けしても赤くならない肌。

 動物を愛でると「意外」「ギャップ萌え」と言われ、ヘアアクセをつければ「どうしたの?」「罰ゲーム?」と言われる。そんな人生を送ってきた35歳だ。

 目の前にちっちゃくてふわふわしてて可愛い生き物が自分に好意を持ってくれているという状況を捨てるほど満たされた人生を送ってきていなかった。


「とりあえず、まあ、今日は泊っていく?」


 そんな煮え切らない答えを出してしまった。


 別に私は同性愛者ではない。可愛いものが好きなだけだ。

 ハナはアイドル並みに可愛かった。美少女だ。美少女……

「ハナさんはおいくつなんですか?」

「呼び捨てで良いですよ。リョーコさんの9つ下です」

「26歳!」

 5歳は若く見える。

 というか、私の歳もすでに知っているのか。


 私の住んでいるマンションは3DK。そのうちの一つを寝室、一つを客間、もう一つを物置として使っていた。ハナを客間に案内する。

「ここ使って」

「ありがとうございます」

 定期的に掃除をしているので問題なく使えるはずだ。クローゼットも客用に開けてあるので自由につかってもらうよう言う。


「ハナさんに」

「ハナでいいですよ! あと敬語じゃなくて大丈夫です」

「そう? ハナ…に、色々質問してもいい? あなたは私のこと色々知っているみたいだけど」

「色々、というほどは知っていませんけど、そうですね、私、自分の事何も話してませんでしたね」


 ハナはそう言うとトランクをそのまま開けもせずクローゼットにしまい、私と向き合った。


「アオキ、ハナ。26歳。隆司と結婚したのは3年前で、専業主婦でした。結婚する前まではリョーコさんたちと同じ会社の経理部にいました。身長は148センチ、体重は45キロ、バストは」

「胸のサイズはいいから」

 とは言ったものの見てしまう。大きい。ハナは首元までしっかりボタンをしめたブラウスにひざ丈のプリーツスカートを履いている。襟のないトップスを着たら谷間が見えそうだ。


「得意料理は和食、趣味はミュージカル観賞、きのこたけのこはたけのこ派。動物はトカゲ派、あとは……車の免許と簿記と秘書検定の資格は持ってます」

「ご両親はここに来ることを知っているの?」

「知ってます。許されるご迷惑だけかけなさいと言われてます」

「ゆるされるめいわく」

「母は結構面白い系自己中なんです」

 面白い系自己中って何だ。

「母はピアノ講師なのでアーティステックなんだと思います。父は証券会社勤務でとてもまじめです。従兄弟が6人いますが私は一人っ子です」

 一気に色々情報をもらったけど、どう答えていいのか分からない。


「何かご質問はございますか!?」

 目をきらきらさせて言われても困る。

「今のところは特に…」

 無難な返事をするしかない。

「そうですよね! これから少しずつ色々知って行けばいいんですもんね!」

 なんだか付き合い始めのカップルみたいな発言してるし。


 ……


「気を悪くしないで欲しいんだけど、確認ね。ハナは、同性愛者なの?」

「どうでしょう。今までは男の人としかお付き合いしたことないです」

 まあ、結婚してたくらいだもんね。

「リョーコさんとも、付き合いたい! という感じではなく、一緒にいたいなぁという気持ちでここに来ました。されて嫌な事とかあったら遠慮なく言ってください!」

「……うん…」

 キラキラした目で言われて、ここで「じゃあ帰って」と言えない自分を殴りたい。


「悪いけど、色々考えたいからちょっと部屋に戻るわ。夕食は19時くらいに用意するから」

「前向きに考えていただければ幸いです! 夕食は私が作りますよ!」

「ああ、うん、まあ、それも含めて考えさせて」

「分かりました!」


 客間にハナを残して、私室ではなくリビングに行き、ソファに座って冷めたお茶を飲んだ。


「3年前に結婚か……」



 私が隆司と付き合っていたのは5年前からだった。



自己紹介に大した意味はないので「リョーコより若くて可愛くて胸がでかい」とだけご理解いただければ何も問題ないです。

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