第5章ー4
歩兵(海兵)連隊直卒で、105ミリ野砲4門を保有する砲兵中隊を保有し、歩兵(海兵)連隊隷下の歩兵(海兵)大隊には、大隊砲2門(平射、曲射両方が可能な70ミリ級の歩兵砲)を保有する歩兵砲小隊を保有するという基本線は、ほぼすぐにまとまった。
これは、大隊砲として92式歩兵砲が、既に陸軍で制式採用まで至っていたというのもあった。
状況に応じて、平射も曲射も可能な万能砲として、陸軍、海兵隊共に(この時点では)期待の新型火砲と92式歩兵砲はされていた。
問題は、更にそれ以下のレベルだった。
歩兵(海兵)中隊以下のレベルはどうしていくべきか、甲論乙駁の主張が行われた。
まず、小銃が取り上げられた。
「小銃の口径を増大して、軽機関銃と同口径にすべきだ」
「いや、そうなると反動が大きくなるし、将来の自動小銃化の際にも不都合ではないか」
小銃の口径は意外と揉めた。
当時、日本軍が採用している38式歩兵銃の口径は、6.5ミリであり、7~8ミリを採用している諸外国の小銃と比較すると、明らかに小口径だった。
ちなみに、38式歩兵銃に愛着のある上級士官程、小口径にこだわった。
実際、6.5ミリの口径でも対人用として考えるならば、全く問題は無い。
(実際、自動小銃の口径は、5~6ミリが多い)
問題は、対物用としては、6.5ミリでは威力不足なことだった。
更に軽機関銃と弾薬の互換性を持たせることが(できうればだが)求められたこともあった。
これも、基本方針が定まらず、詳細は追って定めることになった。
歩兵の直接火力支援としては、軽機関銃と擲弾筒を整備してしていくことが基本的に決められた。
これは、実は土方歳一少佐にとって意外なことだった。
欧州帰りの土方少佐としては、擲弾筒では無く、(軽)迫撃砲を整備、装備すべきではないか、と考えていたからである。
ちなみに欧州では、こういった歩兵支援は(軽)迫撃砲に頼っている。
土方少佐は、たまたま横にいた神重徳少佐に尋ねた。
「迫撃砲を整備すべきではないか。欧州では迫撃砲を整備しているが」
「弾薬補給の問題があるからな。手榴弾とある程度は弾薬を共用した方がいい、との判断だろう。基本的には専用の弾を擲弾筒と言えど使うが、手榴弾をいざという場合には使えるというのは有り難い」
「確かにそうか」
土方少佐は納得した。
その後に取り上げられたのは、戦車に関する諸問題だった。
陸軍も海兵隊も、89式戦車に、特に不満があるわけでは無かった。
第一の問題は、敵も同程度の戦車を繰り出してきた際に、爆弾を抱きかかえた歩兵の体当たりに下手をすると頼らねばならない、ということだった。
37ミリ対戦車砲を取りあえず、整備する方向になっているが、側面、又は後面でないと貫通できない。
かといって、余り大口径の対戦車砲を整備するというのも。
「戦車の機動力を考えると、対戦車砲にある程度の機動性が無いと戦車の進撃に対処できない」
「役立たずの37ミリ対戦車砲を取り止め、47ミリ対戦車砲を至急、開発すべきでは」
「47ミリでは、50ミリ装甲を貫通するのが精一杯ということになりかねないぞ。75ミリの対戦車砲を開発すべきだ」
「そんなもの機動性が無い代物になるぞ」
「自走砲化すればいい」
「対戦車砲を自走砲化するくらいなら、戦車に対戦車能力を付与した方がいいだろう」
「対戦車砲部隊を戦車部隊にするだと、金がどれくらい掛かると考えているんだ」
おいおい、75ミリ砲を搭載した化物戦車を作るだと、土方少佐は頭の中で概算した。
砲塔正面は80ミリ、車体正面は60ミリ、側面、後面は40ミリは欲しいところか。
どう見ても30トン近い戦車になるぞ、無茶苦茶だな。
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