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第5章ー3

 海兵隊の岡村徳長少佐の水冷式ガソリンエンジン推進の主張は、岡村少佐の口癖もあり、会議に列席している(土方歳一少佐も含めた)面々に、海兵隊が、空冷式ディーゼルエンジンを推進する陸軍に喧嘩を売っているように聞こえた。

 これはまずい、会議に参加している者の多くが、そう考えた。


 この会議の場は、あくまでも大雑把な今後の方針を、陸海空海兵の四軍が一致させるために催されたものであり、詳細は少しずつ詰めていくべき話だった。

 それがいきなり喧嘩腰になっては、一致する話も一致しなくなる。

「その点については、後日、陸軍と海兵隊が詳細を詰めていくということで、どうでしょうか」

 会議の議長役を務める将官が発言し、それに多くの参加者も口々に同意し、この件については、一旦、棚上げされ、陸軍の少佐も、海兵隊の岡村少佐も、(内心では)不承不承にお互いに矛先を収めた。

 そして、他の点について、話が進められた。


 陸軍、海兵隊の火力強化方針については、陸軍、海兵隊共に大きな異論は無かった。

 満州事変の戦訓を鑑みる限り、(悪く言えばだが)旧弊な75ミリ野砲は、師団砲兵連隊から完全引退するのが当然と考えられた(そのために、折角、制式採用された90式75ミリ野砲は極少数の生産で終了することになった。)。

 実際、90式75ミリ野砲が制式採用に至ったのは、陸軍の保守派の、火砲は輓馬牽引が当然であり、更に師団砲兵連隊が装備する火砲には、(軽くて)機動力が必要不可欠、と言う面々の主張を止む無く受け入れたという側面があった。

 師団砲兵連隊は、自動車牽引を活用することで、105ミリ砲と155ミリ砲の混成という方向に(基本的には)進むことになった。

 だが、それで済まない部隊があった。


「事実上、山岳師団に改編された第7師団と、いざという場合は、山岳師団になることも検討されている第4海兵師団(舞鶴鎮守府海兵隊)は、そういう訳には行きません。山砲が必要不可欠です」

 陸軍の出席者の一人が声を上げ、海兵隊の一部も同意した。

 確かにな。

 土方少佐も同意せざるを得なかった。


 さて、少し補足説明する。

 第一次世界大戦でチロル、アルプス山脈の麓で戦わざるを得なくなった海兵隊は、第4海兵師団を山岳師団に改編して、この事態に対処した。

 第一次世界大戦後の軍縮に伴い、第4海兵師団は連隊規模の舞鶴鎮守府海兵隊に縮小されたが、いつでも山岳師団として復活できるように内々では準備されていた。

 また、海兵隊の戦訓を受け、陸軍も山岳師団の必要性を認め、第7師団を山岳師団に改編したのである。

 この山岳部隊には、山砲が必要不可欠だった。

 それに、他に軽装備の部隊に山砲が装備されることも考えられた。


 これまでは41式山砲が、こういった部隊に装備されていたが、既に旧式化している山砲だった。

 その為に、新型山砲の開発が望まれたのである。


「しかし、105ミリと155ミリという口径の砲を山砲で開発、保有するのは無理がある」

 火力重視派の一部が抵抗した。

「それは、山砲の特性から75ミリで忍ばざるを得ないのでは」

「105ミリの山砲は、チェコ等が開発、保有している筈だ。105ミリの山砲なら、日本でもできないことは無いだろう」

 会議の参加者の複数から、そう言った声が挙がった。

「取りあえず、75ミリと105ミリの混成により、山岳師団の砲兵連隊は、新型山砲を装備するという方向でどうでしょうか」

 司会役の将官が、とりあえず意見を集約し、会議の参加者も同意した。


「次は、連隊以下の火力強化ですが、どのような方向で進めるべきと考えますか」

 司会役の将官の発言に、土方少佐を初め、会議の参加者は自分の意見を述べだした。 

さすがに山岳師団を自動車化するのは無理ということで。


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