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「あんな女の子っぽいメモ。私、意外の女の人とも仲よくしてるのかな、って。私が、お子様だから、ちぃくん、してくれないのかなって。そしたら、悲しくなってきて。なのに、間接……とか、からかうから」
言いながら、さっきの気持ちがまた戻ってきて、目じりに涙が溜まる。それをきゅっと拭いていたら、ちぃくんが私を離して立ち上がった。
「ちぃ、くん?」
「琴莉って、時々馬鹿だよね」
立ち上がるとそのまま臆することもなくメモを取る。そしてそれを私の前に広げた。
広げて私に見せながらドカッと座ったのは、私の正面。両足を広げて、私を閉じ込める。
そんな状況にドキドキしながら、目の前に広げられたメモを見て目を見開いた。
『いえ、こちらこそごめんなさい。こないだも……』
「え、これ……」
「知ってるでしょ?」
「え、え?」
だって、これ。私が初めてちぃくんに、自習室で渡したメモだ。
「捨てて、なかった、の?」
顔を上げると、満足そうな顔で微笑むちぃくん。
「当たり前だろ? 捨てられないし」
「どして?」
「それ聞く?」
「だって、捨ててると思ってた、から」
「俺ってことちゃん中で、どうなってんだろうね」
そう言うと、私の首に手を回してぐっと引き寄せられた。
――ゴチッ
小さく額がぶつかった音が鳴る。鈍い痛みをそこに感じながら、同じように痛みを感じているだろうちぃくんを近すぎるその距離からじっと見上げた。
「あのさ」
「はい」
「俺、相当ことちゃんが好きだから」
「―――ッ!」
「琴莉は?」
「わたし、も。私もっ!」
直ぐに返事をすると、ん、と言ってぐりぐりと頭を撫でられる。その手が大きくて、温かくて、気持ちがいい。うっとりと目を閉じると、ちぃくんは何を思ってか酷く意地悪い声で、そっと耳元で囁く。
「ねぇ」
「はい」
「して欲しかったってほんと?」
「そ―――っ!」
閉じていた瞼をパッと見開いて、目の前の人を驚きの表情で見つめた。
――さっきは勢いで言っちゃったけど! ハイなんて、言えるわけないじゃない!!
そういうの、知ってるはずなのに。聞くなんてズルい。
「言ってくれないの?」
「うぅうっ。い、意地悪です、ちぃくん」
「そうだね。自覚してる」
「余計、タチ悪いですよ?」
「いいの。ことちゃん限定だから」
「うぅううー」
ぽかぽかと両手でちぃくんの肩口を叩く。でもそんな私の攻撃がちぃくんに堪えるはずもなくて、至近距離でにやにや笑ってるのを感じるだけだ。それが悔しくて、プッと頬を膨らませるとツンとそれを押しながら笑われた。
「ぷっ。フグみたい」
「もっ、知らない!」
額はくっついたままだけど、少し顔を横へ向けて視線を逸らす。そうしたら、ちぃくんの両手が私の頬を挟んで、正面を向かされた。
私の目を覗き込むちぃくん。見つめられて、またドキドキして。際限なく、瞳に引き込まれていく気がする。ぼぉーっとその、いつもあるはずのレンズがない瞳に引き込まれていると……
「言ってよ。ことちゃん」
ふわりと笑って、私に強請るちぃくん。
私は、私は――そんなちぃくんに勝てるはずもなくて、真っ赤になって震えながら。それでも彼の誘導に勝てなくて、するりと本音を吐かされた。
「して、欲しかった、です。ずっと」
――ずっとずっと。その唇が、私に触れるのを待ってた。
気づいて欲しくて、ずっと見てた。
もちろん、そんなこと言えるわけないけど。
でも、ずっと。そう思ってたよ?
「俺も。ずっとしたかった」
私を赤面させるのが得意なちぃくんは、そんな言葉で私の顔をいとも簡単に沸騰状態にまでしてしまう。頬に掛かる私の髪を右耳にかけて、ふっと笑うちぃくん。その笑顔を見てから、私はゆっくりと瞼を閉じた。
そうしたら、優しく風が揺れて――私の唇に、ちぃくんの唇がまた重なった。
(fin)
26.3.13 加筆転載終了
ちぃこと2 完




