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その表情にむしろ私の方が驚いて、 目をぱちくりと瞬いた。先輩は、どうしてこうも驚いているんだろうか?
「そぉですよー。めっちゃ素敵な彼氏がいるよねー、琴莉っ」
なかなか答えない私に代わって代弁した挙句、バシッと私の肩を叩いた真理亜。今日は夏休み前最後のせいか、やけにテンションが高いご様子だ。
って、めっちゃさらっと言わないでよーーー!! と心の中で思う。
いや、全然隠してないんだけど、その……なんというか、恥ずかしいというか。
自分で彼氏居ますって言うのすっごく恥ずかしい。しかもちぃくんのことを、私の彼氏ですって言っちゃって許されるのかと思っちゃったりする。
年上で、なんでも卒なく熟せて、優しくて温かい人。そんな人が私の彼氏だなんて言ってしまうことに、とても抵抗があった。なんてそんな私の心中を待ってくれるはずもなく――
「ぬわにぃいいいっ!? 琴莉ちゃん、それは緊急事態じゃないか!!」
ビシッと私を指さす会長。意味不明だ。
何がどう緊急事態なのか説明してほしい。
ぽかんと口を開いて見つめると、手にしていた鉛筆をピッと差し出して「相手の名前は」と、刑事の取り調べさながらな演技を含んだ言いぶりで、私に質問をした。
「え、えと。えっと」
「ちーくんですっ」
えと……しか言えない私に代わって、また真理亜が答える。
「よし、ちーくん、と。じゃあ職業は!?」
生徒手帳に書き込むしぐさを見せて、また鉛筆を私に向ける。その動きに戸惑ってキョロキョロ会長と真理亜の間を視線を動かすと、真理亜が嬉しげな顔をして挙手した。
「大学生ですっ」
「なんだとーーー!! 琴莉ちゃん、すっげーーー!!」
真理亜の返答で、なぜだか奇妙なテンションの上がり方をした会長。私にはこのテンションについていけない。
固まりつつある私を余所に、話はまだ続くようだ。
「じゃあ……どこまでいったの!?」
「ちょっと先輩!? それはダメでしょ!!」
バシッと肩を叩きながら、おどけて受けた真理亜。
――ど、どこまでって、え? え!?
さらに固まる私に鉛筆を向けて、目をランランさせる会長。
もう私限界、そう思った時……
「池波で遊ばないでくださいよ先輩」
そう言いながら、ぽかりと真理亜の頭を小突いて「お前も」と言いながら優しい笑みを浮かべたのは、真理亜の彼であるモッカだった。
「いったーい。暴力反対ー」
いつの間にやら来たらしいモッカに、ぷっと頬を膨らませて睨む真理亜。それについ、くすくす笑ってしまう。
いっつも強気な真理亜が、モッカの前でだけ可愛い表情なこと。本人は気づいてるんだろうか?
そんな思いを抱きながら頬が緩む。
「痛いじゃないだろ? 池波はそういうの苦手っぽいんだから、苛めてやるなよ。な?」
な? と言いながら私に顔を向けるモッカ。ばちりと目が合ってブンブン頷いておいた。
なんだかモッカに庇われて私は少し焦る。彼女の真理亜を差し置いてそんなのいいのかな――みたいな。ちろりと真理亜を見たけど特段気にした様子はなかったから、私はそのまま会長へと視線を移す。
ぱちりと目が合うとまた嬉しそうな顔をして、会長は突拍子もないことを言い始めた。
「琴莉ちゃん。行こうよプール!」
なぜかランランした瞳で私の両肩をガシッと掴んで強く叫んだ会長。
「え!?」
「んでもって、彼氏連れてきてよ! 俺超見たい!!」
「へっ!?」
訳の分かんない展開にテンパりながら真理亜とモッカを見る。
けれど真理亜は、その揺れまくる私の瞳には気付かぬふりをして、目を輝かせた。
「楽しそうですね! 行きましょうよ、生徒会で!! ついでにちーくんも!」
とテンションが高い。真理亜はだめだ! と思って期待しながらモッカを見ると
「俺、プール好き」
モッカが私から視線を外してそう言った。
……味方、0っぽい。
私は肩をガクッと落として、この現状にため息を吐くしかない。
「はぁ……」
もう、どうにでもして。そんな気持ちで机に突っ伏した。
一事が万事、生徒会の動きはこんなもんな気がする――




