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そんな真理亜につられて、なぜか私まで顔が赤くなっていく。
なんだろう、この連鎖反応。
「コト?」
押し黙ったまま顔を赤くした私に、真理亜は恥ずかしさを必死で隠そうとしている顔で私を呼んだ。
一生懸命な真理亜のその態度に……一瞬、いろんな気持ちが一気に溢れて落ち着かなくなったけれど、やっぱり思うことは一つだって思った。
「おめでと、真理亜」
ようやくその言葉がスルリと口から出た。
何があったって、真理亜は私の一番のお友達で、親友。
モッカが相手なのは驚いたけど、あんな嬉しそうな恥ずかしそうなハニかんだ顔みたら、応援したいって思う。そりゃ、キスしちゃったなんて言われて怯んだけど。
「ありがと」
こんな可愛い表情を浮かべる真理亜が、私は好き。それに変わりはないんだから。
――――――
帰宅すると、思い切りドサッと音がするほど勢いよくダイブして体をベッドに沈めた。ゆっくりと瞼を落としていきながら、今日のことをいろいろと思い出していく。
担任の顔とか、教室の様子とか、今日触れた新しい出来事とか色々。
だけど結局鮮明に蘇ってくるのは――
「モッカとキスした」
というフレーズ。
勝手に二人がホワンホワンと頭に浮かんできて、イケない想像が繰り広げられそうになる。
「ぎゃっー」
自分の妄想なのに、二人がキスするところが見えそうになって、私は目にギュッと力を入れて閉じた。
――私ってば、最悪っ。
友達のそういうとこ思い浮かべちゃうなんてどうかしてる。
でも、思い浮かべちゃいけないって思うのに浮かんできて、寸前で消える。そしてその妄想は徐々にスライドして、自分とちぃくんに変わった。
触れる寸前まで思い描いては、想像に無理が出てきて顔をブンブン振る。
「はぁ……」
ため息が零れて、それでもまだ、もあもあ~っと想像してしまう。
目の前で『アナタ大丈夫?』とクリクリの目で見つめるわんこのぬいぐるみ。
それに堪らない愛しさが湧いて、衝動のあまり「ちぅ」とキスをしてしまった。
――って、何してんのよ私!!
犬=ちぃくん。を彷彿させるぬいぐるみに、キスとか……あーもぉっ!
そう思いながら一人また赤面して、ベッドの上で悶える。
「きゃーーー!!」
誰に何を言われたでもなく、抑えきれなくなってついつい騒ぐ。
するとすかさず、弟の怒鳴り声が返ってきた。
「姉ちゃんうっさい!」
それでも私の頭はふわふわしたままで、締まりがなくて……気が付いたときにはもう寝ようって気持ちで満ちていた。
ブブブブッ、ブブブブッ
そんな私の頭上で、マナーモードの携帯が震えて着信を知らせた。
画面を確認すると『神楽千歳』と出ている。
――ひゃあっ、ち、っちぃくんだっ
ドキドキしながらメールを開くと『起きてる?』って、それだけ。
でもそれだけが嬉しくて『もう寝るとこですけど、起きてます』と送った。つまらないラリーを返してしまったなって思ったけれど、それだけでもバクバクと心臓が高鳴って緊張する。
『そっか。明日から授業始まるよな?』
些細なやり取りだけど、それが嬉しくてにまっと笑ってしまう。
だって、今この瞬間、ちぃくんは私のことを考えてくれてるんだから。そう思えば、数か月前との違いに温かな気持ちが膨れ上がってくる。
『はい。ちぃくんは?』
『俺も初講義、かな。お互い、頑張ろうな』
にこっと微笑んでくれるちぃくんの顔が浮かぶ内容に、私は傍から見たら気持ち悪いくらいにニヤニヤした。
『はぁい☆ おやすみ、なさい』
ハートの絵文字を付ける度胸がまだない私は、文末に『zzz』と入れてしまう。
でも返ってきたちぃくんのメールが『おやすみ』の終わりに、笑顔の絵文字だったからホッとした。
――まだまだ私、可愛くなれないけど頑張るから。もうちょっとだけ、時間をちょうだい。ね? ちぃくん……
勝手に一人、脳内のちぃくんに語りかけながら、私は携帯を置いて眠りについた。
――――――
翌日、教室に着くと私が最も顔を合わせたくなかった人物である、モッカが居た。
「ぅ……お、は、よぉ」
精いっぱいの力を出して挨拶をすると、相手もきまり悪そうな顔をしているのが分かる。
この場合、どっちの方が気まずいものなのだろうか。なんて思っていたら、少しだけよそよそしい顔をしたモッカが「おぅ」って片手を上げて私の挨拶へ返事をしてくれた。
真理亜の席の横に立つ彼は相変わらず目立っていて、高校生になって余計に私なんかとは距離を感じる存在になった気がする。
少し茶色い髪は彼に似合っていて、キリリとした眉は男らしさを感じる。 そのまま目線が下がって彼の唇が目に入った瞬間、私は慌てて俯いた。
――って、私キモイよ~~っ。変態みたいじゃないっ。
しっかりと真理亜の昨日の言葉がまた蘇ってきて、一人顔を赤くした。
「アイツ、いつ来る?」
一人落ち着かない私には気づかないのか、それともそんな余裕はないのか、モッカは唐突に尋ねてきた。
そろりと顔を上げると、真面目な顔をして真剣な目つきの彼と視線が絡まる。
「ぁ……え、と。もうすぐ、かな」
アイツ……って、真理亜のことだよね?
なんかその親しい感じの呼びかたに私の方が恥ずかしくなって、顔に血が上る。
最近、私顔赤くなってばっかりじゃない?
とは思うものの赤面するのを止められず、モッカの靴先を見た。
「お前、聞いたんだろ?」
「え?」
お前、はどうやら私――ということに気が付きそろりと顔を上げると、またジッと私を見つめるモッカとしっかり目があった。
うぅう、なんかこういうのってホント気まずい。




